孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チベット  抗議行動が続発、高まる緊張

2012-01-31 22:14:47 | チベット

(1月30日 ドイツ・ベルリン 春節に行われた中国への抗議行動 “flickr”より By Joscha Be http://www.flickr.com/photos/51812575@N03/6794905885/

【「中国の人権状況は史上最高の時期にある」】
ここ数日、中国四川省のチベット族居住地域で住民の抗議行動が相次ぎ、治安部隊の発砲で少なくとも3人(【1月29日 毎日】では6人)が死亡したと報じられています。

中国共産党政権は、抗議に加わった住民を「暴徒」と非難し、統制強化を徹底する構えです。現地では治安部隊が多数投入され、道路が封鎖されるなど緊張が高まっていますが、インターネット遮断など情報も統制されているとみられ、一部地域への電話は通じない状況です。

****チベット族の抗議拡大3人死亡 中国「人権状況は最高*****
来月副主席訪米 平行線は必至

旧正月を祝う春節に入ってから、中国四川省のチベット族自治州で住民による抗議行動が続発している。治安部隊の発砲で少なくとも3人が死亡。国際社会からの批判が集まる中、中国当局が現地の統制を強化する一方、中国共産党機関紙は連日、人権状況の改善をうたって反論している。

英国を拠点とする人権団体などによると、同省カンゼ・チベット族自治州炉霍県で23日、チベット族住民数人の拘束に抗議する群衆に治安部隊が発砲し、1人が死亡した。24日には同州色達県に飛び火し、治安部隊の発砲で1人が死亡。26日にもアバ・チベット族チャン族自治州壌塘県で1人が犠牲になった。

国営新華社通信も、衝突で死者が出たことを報じ、治安部隊が発砲したことも認めるなど異例の対応を取った。しかし、僧侶の焼身自殺などに関する情報に扇動された住民が、刃物を手に警察署を襲撃したことに対する「正当防衛」と強調。襲撃は「計画的かつ組織的」と主張して、亡命チベット人勢力や外国勢力の関与を示唆した。

抗議行動が拡大の様相を見せる中、オテロ米国務次官(チベット問題担当特別調整官)が中国政府のチベット政策を批判し、治安部隊の自制を要求。人権団体は除夕夜(旧暦の大みそか)の22日を選んだかのように年度報告を発表し、中国側の感情を逆なでした。
欧米サイドとしては、2月に訪米予定の習近平国家副主席とオバマ米大統領との会談で、中国の人権問題を議題に上げる心づもりとみられるが、人権侵害の認識がない中国を相手に話がかみ合うはずもない。

一方、党機関紙、人民日報は連日「中国の人権状況は史上最高の時期にある」などとしてチベット族に対する優遇政策の成果を強調、人権問題の政治化を牽制(けんせい)する論文を掲載している。
住民の通信網を監視・遮断し、武装警察に加え人民解放軍を投入して統制を強めているとの情報もある。これらの措置も、中国当局から見れば「国情に合った管理」であり、国際社会の批判はすべて「偏見」によるものだという姿勢に、議論の余地はなさそうだ。【1月31日 産経】
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チベット問題に限らず、「中国の人権状況は史上最高の時期にある」という主張の空虚さは、今更言うまでもないところです。食うや食わずの時代を脱した・・・という意味では、一定の評価はできるでしょうが(そうした飢餓を招いたのも中国共産党の政策の誤りでもあった訳ですが)、一言で言えば「人はパンのみにて生くる者に非ず」ということでしょう。

今回の騒動の背景として、“チベット自治区では、中国の春節(旧正月)直前の22日、国旗を掲揚する式典があり、これに合わせ各地の寺に国旗や胡錦濤国家主席ら国家指導者の写真が大量に送られ、掲げられた。これに一部のチベット族が強く反発したことが抗議の背景にあるとみられる” 【1月29日 毎日】との指摘もあります。

****指導者肖像画・国旗100万枚を配布、狙いは寺院の共産党化か?―チベット自治区****
2012年1月22日、チベット自治区共産党委員会や同自治区政府が入居するビル「党政大楼」の正面入り口上部の外壁に巨大な肖像が登場。中国国旗の五星紅旗をバックに毛沢東、トウ小平、江沢民、胡錦濤の歴代指導者が描かれた巨大肖像画の除幕式が盛大に開催された。24日付で中国新聞社が伝えた。

チベット自治区では、現在「中国国旗と指導者肖像を村の各世帯、寺院に送ろう」キャンペーンを展開中。すでに100万枚の国旗と肖像画が送られているという。さらに昨年12月8日、同自治区共産党委員会統一戦線部は自治区内の寺院に対し「九有(国家指導者の肖像、国旗、道路、水道、電気、テレビとラジオ、映画、書庫、人民日報と西蔵日報の新聞の9つを有すること)」政策を推し進めると発表。その予算は自治区政府が負担するという。

このニュースが報じられると、中国のマイクロブログ・新浪微博にはユーザーからの辛らつなコメントが相次いだ。「寺の中で無神論者の毛沢東を拝むのか?ありえない!」「チベット自治区で文化大革命を起こすのか?」「自治区の民から信仰の自由を徹底的に奪うつもりだ!」など、党の民族政策に疑問を抱く内容のものがほとんどだった。【1月26日 Record China】
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国旗や指導者肖像・写真の強要は、個々人の権利や多様な考えよりは国家の意向・一体性を重視するような、威圧感を感じさせます。ましてや、チベットのような国家帰属に問題を抱える地域にあってはなおさらでしょう。

【「文化的ジェノサイド」に直面している
チベット僧の焼身自殺も昨年から続いています。
今月6日には、四川省アバ県でも元僧侶2人が焼身自殺を図って1人が死亡、8日には、青海省果洛ベット族自治州の吉邁でチベット人僧侶1人が焼身自殺しています。
過去1年にチベット人居住区域で起きた焼身自殺・自殺未遂事件は15件となっています。

****チベット人僧侶また焼身自殺、1年で15件に****
・・・・ダライ・ラマ14世は、一般的に仏教信仰に反するとみなされている焼身自殺に批判的だ。だが、最近になって、相次ぐ焼身自殺の原因はチベット人が中国の強硬な統治下で「文化的ジェノサイド(大虐殺)」に直面していることだと発言した。

中国では多数派の漢民族がチベット人の歴史的居住地域に移住を進めており、国内の多くのチベット人が政府による宗教弾圧や文化抹消の行為だと批判している。だが中国側は、チベット人は信教の自由を享受しており、また巨額の投資によって近代化がもたらされ、生活水準が向上したと主張している。【1月9日 AFP】
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宗教的最高指導者は国外亡命を余儀なくされており、“巨額の投資”による利益は移住してきた漢族とそれにつながる一部の者によって占められている現状にあっては、中国当局側の言い分はうつろに響きます。

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