(1966年1月、スペイン・パロマレースに落下した水爆 落下の衝撃で先端がひしゃげているようです。この事故では実際に核物質が飛散しました。ただ、このように公開されていれば、反省・改善も期待できます。問題が大きいのは隠蔽しているような国々でしょう。 “flickr”より By Chris http://www.flickr.com/photos/33013673@N07/6886277800/in/photolist-buvYtA-daANVx-dgRgAM-8LSV3L-aiqmEw-7XKDKL-bMJc46-dssNNP-9DsGeH-eW1Ew4-dRZH43-dRZFkj-dRZz6Q-dRZNwE-dRZQ6A-9kY5wg-9NKVq9-9LPBnH-dLHNZo-dFcMeP-ac1dLS-a44392-a82jnN-biLrj6-bg8TQR-bgEKR6-bgELxe-gzCMJF-b6BJdD-a4niHm-954Uu4-dRZv8C-d6osaw-hCMqb5-9teRTR-hqVxz8-hqTxB6-hqXL8S-hqXdt8-hqXdxX-hqXLff-hqXLfL-hqXdxB-hqVxog-hqTxLp-hqXdcr-hqXL31-hqXdsr-hqXdjk-hqVxor-hqVxoB)
【「孤独な任務」に忍び寄る危険】
アメリカやロシアなどが保有する大量の核兵器は、当然ながら厳格に管理されている・・・・はずです。
核ミサイルは2名の将校が同時にキーを回さないといけないとか、もう1名が乱心した場合に備えて常に拳銃を所持している・・・といった類の話を聞いたこともあります。
ただ、核ミサイル発射担当将校が薬物を違法所持していたといった、目を疑うような不祥事もあるのも事実です。
****米核ミサイル担当将校2人、違法薬物所持の疑いで取り調べ****
核ミサイル発射を担当する米空軍の将校2人が違法薬物所持の疑いで取り調べを受けていることが9日、複数の米国防当局者の話で明らかになった。
米国防総省のアン・ステファネク報道官がAFPに語ったところによると、米モンタナ州のマルムストローム空軍基地に配属されている将校2人が、違法薬物所持の疑いで空軍特別捜査室の取り調べを受けているという。
米軍はこの件について詳細を明らかにしていないが、このニュースに先立ち、チャック・ヘーゲル米国防長官はモンタナ州に隣接するワイオミング州にある大陸間弾道ミサイル(ICBM)基地に異例の訪問を行い、「諸君の任務は間違いが許されないものだ」などと述べて激励していた。
ヘーゲル長官は8日にもニューメキシコ州のカートランド空軍基地を訪れ、「孤独な任務」に就いているミサイル担当者らは「自分たちが正しく評価されていないと何度も感じている」と述べ、ミサイル担当者の士気に懸念を示していた。【1月10日 AFP】
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この事件には、後日談があるようです。
*****米空軍:核ミサイル基地将校34人が習熟試験で不正行為****
米空軍は15日、核ミサイルの運用を担当する西部モンタナ州のマルムストロム空軍基地所属の将校34人を習熟試験で不正行為を行ったとして職務停止にしたことを明らかにした。
昨年夏の試験で携帯電話のテキストメッセージで答えを教えあったり、不正を知って報告しなかったりしたという。
空軍では、将校らが違法薬物所持の疑いで空軍特別捜査室の取り調べを受けている。うち複数の将校が核ミサイルの運用部隊に所属しており、捜査の過程で今回の不正行為が明らかになった。
同基地には190人の運用担当将校がおり、約2割が処分を受けたことになる。
ジェームズ空軍長官は15日の記者会見で「絶対に受け入れられない行為だ」と批判したうえで、これは何人かの空軍将校の怠慢であり、核ミサイル運用の怠慢ではない」と語り、核兵器の安全は確保されていると強調した。
しかし、核ミサイル部門では昨年10月、少将が飲酒によるトラブルで免職処分になるなど不祥事が相次いでいる。【1月16日 毎日】
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昨年10月にも杜撰な核ミサイル管理が報じられています。
****核ミサイル発射施設の防爆扉開け放しに 不祥事続く米軍核管理部門、4人処分****
米空軍の核ミサイル発射を任務とする複数の担当者が、本来は閉じておくべき発射施設の防爆扉を開け放しにして4人が処分されていたことが分かった。AP通信が22日、空軍当局者の話として伝えた。
米軍の核管理部門では今月に入り不祥事が相次いでいる。
今回のような不手際が明らかになるのはまれ。防爆扉は今年2回、閉じておくべきなのに開け放しになっていたという。APは「核兵器の取り扱いで重大なトラブルにつながりかねない」との見方を示した。
核ミサイル部隊は管理に落ち度があった場合の影響が大きいことから扉の開け閉めを含め、決められた手順に従って行動するよう訓練を受けているが、今回の失態を防げなかった。
米軍の核管理部門では今月、戦略軍の副司令官(海軍中将)や第20空軍の少将がギャンブルや任務遂行能力を理由に相次いで解任された。【2013年10月23日 msn産経】
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この手の話は残念ながらゴロゴロあって、アメリカなどは、まだましな方でしょう。
旧ソ連では、泥酔したミサイル担任将校が発射ボタンを押して危うくICBMが発射されてしまうところだったという事件もあったようです。このときはたまたま定期点検の為、ミサイル燃料を抜かれていたので発射されなかったとのことです。
ましてや、北朝鮮やパキスタンなどの核管理体制がどうなっているのかなどは、失礼ながら非常に危うい感じもします。(実態は全く知りませんが)
どんなに厳重なシステムを構築しても、“ヒューマンエラー”は必ず発生するということにつきますが、ある意味、非情に納得できる話でもあります。
非常に危険なものを扱う場での不祥事が起きると、「どうしてそんなことが・・・」と叩かれますが、1年365日、5年、10年と扱っていると、どうしても感覚が“慣れ”てきます。
ちょっとした“省略”や“この程度は・・・”といった取扱いが起きてくるのは、自分の仕事を考えても理解できます。
【「氷山の一角」】
一方で、核爆弾が誤って投下されてしまうという“事故”もときどき起きているようです。
****核爆弾落下事故は「氷山の一角」 米軍兵器事故の実態****
米南部ノースカロライナ州ゴールズボロの上空で1961年1月、飛行中に故障した米軍の爆撃機から2つの核爆弾が落下し、あと一歩で大惨事を招く事態に陥っていたことが明らかになり、米国民を震え上がらせている。
核爆弾の威力は広島に投下された原爆の実に約260倍。
落下した核爆弾は、4つの安全装置のうちの3つが外れて陸地に着弾したが、最後に残された初歩的な安全装置が正常に動作し、奇跡的に大惨事を免れたという。(中略)
事故が起きたのは、ケネディ大統領が就任した直後の61年1月下旬。米軍の爆撃機B52がゴールズボロ上空で燃料漏れを起こし、緊急着陸の準備をしていた際に重量の不均衡が発生して機体がきりもみ状態に陥った。
B52は「マーク39」と呼ばれる水素爆弾2つを搭載しており、そのうち1つはきりもみの直後から、爆弾が発射されたのと同様の起動を開始。安全装置3つが解除され、降下速度を調整するパラシュートも開いていたという。
核爆弾は広島型の原爆の約260倍という途方もない威力。ゴールズボロのある米東海岸沿いには主要都市が点在している。爆発していれば、被害は約400キロ離れた首都ワシントンを始め、ボルティモアやフィラデルフィア、ニューヨークにおよび、数百万人の犠牲が危険にされされた可能性があったという。(中略)
公文書を入手したシュローサー氏は米CBSニュース(同)に対し、国防総省が認定する重大な兵器事故が32件あることを明らかにした上で「それも氷山の一角だ」と述べ、他の公文書の分析から、50~68年の間だけで、少なくとも700件の重大な事故が起きていると警鐘を鳴らしている。
CNNテレビ(同)によると、米国では2007年、ノースダコタ州から飛び立ったB52に搭載された訓練用のはずの核弾頭搭載ミサイル6発が、実弾だったことが着陸後に判明し、米空軍の危機管理体制が厳しい批判にされされた。
また、現代では核兵器施設へのハッキング攻撃も懸念の一つ。とりわけ、北朝鮮やパキスタンでは、核爆弾の安全性や維持施設の信頼性が疑問視されることもあり、既存の核兵器の安全管理のあり方が改めてクローズアップされている。【2013年9月28日 産経】
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この手の“事故”では、1966年に起きた「パロマレース米軍機墜落事故」もあります。
上記のノースカロライナ州ゴールズボロの事故では初歩的な安全装置によって危うく爆発は回避されましたが、スペイン・パロマレースで起きた事故では、実際に起爆用火薬が爆発し、核物質が飛散しています。
*****パロマレース米軍機墜落事故****
1966年1月17日にスペイン南部の上空で米軍機同士が衝突し、パロマーレス集落に水素爆弾4個が落下した事故である。
冷戦中のクロームドーム作戦で、4発の水爆を積んでいたアメリカ空軍戦略航空軍団(SAC)に所属する爆撃機B-52Gと、空中給油機KC-135Aが地中海の3万1千フィート上空で空中給油中に衝突、墜落した。
KC-135Aの乗員4名は全員死亡。B-52Gの乗員は4名が脱出した。
4個の水爆(B28RI[3])のうち3個がパロマーレス近くの地上に落下し、1個が海中に落下した。
地上に落下した水爆のうち2個で起爆用の通常火薬が爆発し、ウランとプルトニウムが飛散して2平方キロの土地が汚染された。
米軍は1750トンの土を除去し、サウスカロライナ州のサヴァンナ川核施設に運んだ。しかし2011年現在でも、30ヘクタールの5万立方メートルに500gのプルトニウムが残る。(中略)
海に落ちた水爆は米海軍による長い探索ののち、80日後の3月17日に深海探査艇アルビン号に発見され、潜水艦救難艦ペトレルの上に引き上げられた。【ウィキペディア】
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爆撃機が墜落し、核爆弾が行方不明になっているという事故も起きています。
****米軍、冷戦期に行方不明の核兵器をグリーンランドに遺棄 英BBC ****
英国放送協会(BBC)は10日、1968年に核兵器を搭載した米軍のB52爆撃機がグリーンランド北部チューレの米空軍基地近くに墜落した際、米国は懸命の捜索にもかかわらず行方不明となった核兵器を発見できず、そのまま遺棄していたと報じた。関係者の証言や情報公開法によって入手した機密文書によって明らかになったという。(後略)【2008年11月12日 AFP】
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ノースカロライナ州ゴールズボロ、スペイン・パロマレース、そいてグリンランド・・・いずれも1960年代の冷戦時代の事故であり、それらの教訓から現在は適正に管理されている・・・と信じたいものです。
ただ、いずれも比較的公開性のある米軍関連の事故であり、その他の核保有国の事故は・・・・どうでしょうか?
個人的には、どんな分野であれ、人間の営みにはすべてリスクはつきまとうものであると考えていますので、この種のヒューマンエラーや事故の存在をことさらに言い立てるつもりもありません。
ただ、現実にこうしたリスクが存在するということも承知しておかねばならないとは考えています。
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