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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシアとトランプ政権がもたらす軍縮からの逆行の流れ  対人地雷、クラスター爆弾、そして核兵器

2025-04-17 23:26:54 | 国際情勢

(【4月17日 テレ朝news】)

【欧州で相次ぐ対人地雷禁止条約から離脱 背景にロシアの脅威】
カンボジアの地雷除去ではODAや技術支援、更に「コマツによる地雷除去プロジェクト」など日本も支援していますが、ネズミを使って地雷除去・・・という話、以前聞いたことがありましたが、なかなかの活躍ぶりのようです。

****カンボジアの地雷探知ネズミ 109個の地雷など発見しギネス世界記録認定****
カンボジアで地雷の探査を行うネズミの「ロニン」が、これまでに109個の地雷などを発見し、ギネス世界記録に認定された。

■仕事熱心で人懐っこいヒーローラット
APOPO 研究監督 サイーディム・シャナさん
「ロニンのことをとても誇らしく思います。私だけじゃありません。同僚全員が誇りに思っています」
探知ネズミのロニン

カンボジアで地雷を見つける探知ネズミのロニンが、世界記録を更新した。ロニンはヒーローラットと呼ばれ、特別部隊の一員だ。

今年で6才になる雄で、体長は長い尻尾を含めて68センチ、体重は1.2キロほど。仕事熱心で人懐っこいという。
109個の地雷と15発の不発弾を発見

ヒーローラットの任務に就いたのは2021年から。今年2月までに109個の地雷と15発の不発弾を発見し、ギネス記録に認定された。(中略)

ラットは、アフリカオニネズミという種類で、賢く人懐っこいという。優れた嗅覚を生かし、テニスコートほどのエリアを手動の地雷除去機だと最大4日かかる所を30分ほどで探索できるという。

カンボジアでは内戦中におよそ400万から600万個の地雷が埋設されたと言われていて、1979年から今年2月までにおよそ2万人が死亡、4万5000人以上がけがをし、そのうち1万人近くが手足を失っている。

体重が軽いヒーローラットたちは、地雷を起爆させることなく動き回ることができ、これまで1匹も命を落としていない。まさに地雷撤去の希望の光だ。

サイーディム・シャナさん
「ヒーローラットの地雷撤去を地雷被害を受けている他の国にも展開したい。私たちのチームはいろいろな地域で命を救うためにヒーローラットの訓練を続けます」

■さまざまな分野でラット活躍
アフリカオニネズミの特徴
ラットの訓練を行う団体は、およそ30年前に地雷探知の研究を始めたそうだ。

サイーディム・シャナさんによると、地雷探知を行うアフリカオニネズミの最も大きな特徴は、嗅覚が非常に優れている点だという。

また、一般的なネズミの寿命は1年から3年と言われているが、アフリカオニネズミの寿命は8年から10年と長生きのため、地雷探知の活動を長く続けられるのも利点だという。

ヒーローラットの活躍は、地雷の探知だけにとどまりません。優れた嗅覚を生かし、このような分野での活動も期待されている。

結核菌を見つけ出すヒーローラット(中略)
野生動物の密輸を防ぐヒーローラット(中略)
生存者を探し出すヒーローラット(後略)(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年4月15日放送分より)【4月17日 テレ朝news】
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除去用専用重機だけでなく、いろんな技術があるものですね・・・
“体重が軽いヒーローラットたちは、地雷を起爆させることなく動き回ることができる”というのがミソですね。

ただ、ウクライナに見られるようなロシアの脅威が現実化するなかで、欧州においては「対人地雷禁止条約(オタワ条約)」からの離脱が相次いでいます。

****ポーランドとバルト3国、対人地雷禁止条約から離脱へ****
北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニアは1997年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)から離脱する計画を発表した。

隣国であるロシアの軍事的脅威が理由。同条約には160カ国以上が加盟しているが、ロシアは加盟していない。

条約離脱で地雷の備蓄再開が可能になる。

4カ国の国防相は共同声明で「ロシア、ベラルーシと国境を接するNATO加盟国に対する軍事的脅威は著しく増大している」と表明。

「今回の決定を通じて明確なメッセージを伝える。われわれは国家安全保障上のニーズを満たすため、必要な全ての手段を用いる用意があり、用いることが可能だ」と表明した。

フィンランドも昨年12月、ロシアがウクライナで対人地雷を使用したことを理由にオタワ条約からの離脱を検討していることを明らかにした。【3月18日 ロイター】
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記事最後にあるフィンランドも。

*****フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威に対応*****
北大西洋条約機構(NATO)加盟国のフィンランド政府は1日、ロシアの軍事的脅威の高まりを受け、1997年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)を離脱し、2029年までに防衛費の対国内総生産(GDP)比を少なくとも3%に増やす方針を明らかにした。(中略)

NATOでロシアとの国境が最も長いフィンランドは、条約離脱により必要が生じた場合に備えて再び地雷備蓄を開始できるようになる。

オルポ首相は記者会見で、現時点で差し迫った軍事的脅威はないが、ロシアは欧州全体に長期的な危険をもたらしていると指摘。「オタワ条約離脱により、安全保障環境の変化に多面的に対応できるようになる」と述べた。

その上で、防衛費に30億ユーロ(32億4000万ドル)を追加で割り当て、軍事費の対GDP比を24年の2.41%から29年までに3%に引き上げるとした。【4月2日 ロイター】
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【クラスター爆弾でも】
更にバルト三国のリトアニアでは、昨年7月アメリカがウクライナにクラスター弾の供与を発表したことを契機にクラスター爆弾に関する議論が高まり、議会では政府が提案する「クラスター爆弾禁止条約」からの離脱が議論されています。

****人道的軍縮 小国の条約離脱がもたらした大きなほころび****
(中略)クラスター弾は、小型の爆弾が飛び散って広範囲に被害を及ぼし、民間人を巻き込むおそれが高いことから「悪魔の兵器」とも呼ばれる。条約は、同兵器の使用、製造、移譲を禁止する。2008年の採択以来、111カ国が批准している。

リトアニア政府は、ロシアがウクライナ戦争でクラスター弾を使用しているにもかかわらず、この兵器を自ら禁じるのは国防上の「誤り」であるとして、離脱を正当化した。手続きを中断しない限り、6カ月後に離脱となる。

クラスター爆弾禁止条約は、非人道的な兵器を包括的に禁止する「人道的軍縮」5条約の1つ。残りの4条約は、対人地雷、生物兵器、化学兵器、核兵器を禁止する。これまでこれらの条約を離脱した国はなかった。

それだけに、リトアニアの決定はジュネーブに拠点を置くNGOに衝撃を与えた。クラスター弾の廃絶をめざすNGOの統括団体「クラスター爆弾連合(CMC)外部リンク」の代表、タマル・ガベルニック氏は「国際人道法全体に反する」と指摘。「条約の目的は、武力紛争における民間人の保護だ。戦争の勃発を危惧する国は、市民を守るための条約から離脱している場合ではない」と話す。

ウクライナ戦争は、ヨーロッパの安全保障情勢を大きく変えた。そのため、人道的軍縮の条約化を牽引してきたNGOや国際社会の一部で、リトアニアに追随する国が出るのではないかとの懸念が広がっている。

武力紛争でやってはいけないことを定める国際人道法の「守護者」、赤十字国際委員会(ICRC)は通常、国家を名指しで非難することはほとんどない。ところが、今回は直ちにプレスリリース外部リンクを出し、深い懸念を表明した。リトアニアの離脱は、平時に採択された国際人道法の諸条約を戦時には放棄できるとの誤ったシグナルを送ることになる、と非難した。

ロシアの侵略を危惧
リトアニアは、クラスター弾を自軍が使う日が来るとすれば、自国の防衛に役立つと主張する。同国のラウリナス・カシュウナス国防相は議会で、「条約はすべての国が加盟することが重要だ」と述べ、ウクライナでクラスター弾を使用しているロシアは条約に加盟していないと指摘。国防を強化したい国が、使うことのない防衛手段を明かすようなことは誤りだと主張した。

だが、NGOは納得していない。リトアニアは歴史的に人道的軍縮の「模範生」であり、クラスター弾を保有したことも、保有に向け訓練したこともないという。ガベルニック氏によれば、クラスター弾の軍事的有用性は限られている一方、民間人や戦後の復興に与える悪影響は非常に大きい。

クラスター爆弾連合はクラスター弾による犠牲者数を調査している。9月に発表した報告書外部リンクによれば、2023年の犠牲者の93%は民間人だった。クラスター弾は被害の及ぶ範囲が広く、不発弾も多いため、武力紛争の終結後も、何年、何十年と人々を殺傷し続ける。不発弾の犠牲者の47%は、爆弾をおもちゃと間違えた子どもたちだ。

ドミノ現象?
国際NGOハンディキャップ・インターナショナル外部リンクのスイス支部代表、ダニエル・スダ・ラング氏は、「隣国に脅威を抱く他の国々のドミノ現象を招くおそれがある」と話す。

今のところ、リトアニアに追随する国はいない。だが、旧ソ連諸国の1つで、ロシアと国境を接するラトビアでは今年初め、1999年に発効した対人地雷禁止条約(オタワ条約)からの離脱を求める署名運動が始まった。ロシアに侵略された場合に自国を守るためとされる。これに対し、ラトビア国防相は、このような離脱は正当化されないと述べた。

ジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)のキース・クラウス教授(国際関係論)はこう説明する。「バルト3国が対人地雷で国境防衛を強化できると考えるのは驚くことではない。フィンランドの対人地雷条約への加盟が非常に遅かった理由の1つは、ロシアとの国境を守りたかったからだ」

「現在の欧州で起きている大規模侵略は誰も予想していなかった。人道的軍縮はもはや前提を失ってしまったようだ」【2024年11月14日 swissinfo.ch】
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【トランプ大統領への不信感が加速させる核保有に向けた動き】
対人地雷、クラスター爆弾・・・そして核兵器。
今、トランプ大統領がもたらした不確実性・不信感によって、欧州、韓国、中東・・・世界では核保有に向けた動きが高まっています。

****<韓国が核武装する日>トランプの政策で世界の流れは「核廃絶」から「核拡散」へ いよいよ迫られる日本の選択****
ニューヨーク・タイムズ紙のヘニガン論説担当記者が、3月12日付論説‘America’s Allies Are Shaken, and Now They’re Taking Action’で、トランプ大統領の言動によって米国の核の傘への信頼が低下、揺さぶりをかけられた欧州やアジアの同盟国が行動を起こし始めた、と論じている。要旨は次の通り。

トランプ大統領のロシア尊重、ゼレンスキー大統領への叱責、そして欧州の同盟国に国防費増額を強引に迫るやり方が、同盟国の間で核武装への自由競争が起きかねないという思わぬ事態を引き起こしている。

欧州やアジアの同盟国はこれまで何十年も米国の拡大抑止政策に依存してきたが、トランプの言動で、この政策への信頼は崩れ始めた。

欧州ではすぐに波紋が起きた。ポーランドのトゥスク首相は、ポーランドは核兵器のことも考えねばならないと述べた。
次期ドイツ首相と目されるメルツ氏は、ドイツは核兵器の共有について仏英と協議すべきだと述べた。
フランスのマクロン大統領は、「関心のある国にはフランスの核の保護を拡大してもよい」と発言、実行可能性や成否には疑問があるが、興味深い考えを示した。

今や同盟国の指導者たちは、戦争になった時に自分たちは米国の助けをあてにできるのか、と深く自問している。

その答えへの懸念を示すように、欧州の指導者たちは総額1600億ドルの集団的軍事支出計画について協議した。しかし、通常兵力を自らの手に取り戻す決定は歓迎すべきだが、核兵力拡大の可能性には不安を覚える。

トルーマン以降、歴代の米大統領は核兵器拡散の制限を目指してきた。共和・民主両党の大統領が拡大抑止は米国に利すると認めたのは、一つにはそれによって軍事同盟が強化されるからだが、より重要なのは、米国の拡大抑止のおかげで多くの国が核武装の選択をしなかったことだろう。

しかし今やこのやり方はぐらついている。2月26日、趙兌烈・韓国外相は、核武装の可能性は排除されないと述べた。

韓国が核武装に走れば、他の核不拡散条約(NPT)署名国も追随する可能性がある。中国の軍事的脅しを受けている日本や台湾は自らの選択肢を再考せざるを得なくなるかもしれない。中東ではイランが完全な核武装に近づきつつあり、サウジ、エジプト、トルコ等を核の獲得へと促すかもしれない。

トランプは、核拡散に関する自分の考えは歴代の米大統領と変わらないと主張するが、彼の政策は反対の効果をもたらしつつある。同盟国の間では核兵器保有の価値が急上昇する一方、拡大抑止への信頼は低下した。

トランプは、各国で起きている核拡散の議論を打ち切らせ、米国の拡大抑止政策は揺るぎないことを同盟国に確信させるべく、早急に行動すべきだ。
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各国で高まる核武装
トランプ第2期政権の政策は、Pax Americana(アメリカの覇権に支えられた平和)を脅かすものになっている。特に、同盟関係と核兵器問題への対処は重要な問題である。

上記のヘニガンの論説は、欧州諸国を含む同盟国が米国の拡大抑止の信頼性に疑問を持ち、それなりの対応をしてきていることを描写しているものであり、傾聴に値する警告である。

ポーランドのドゥダ大統領は3月13日、米国に対し米国の核兵器をポーランドに持ち込むように求めた。現在、欧州には、オランダ、ドイツ、イタリア、ベルギー、トルコに約100発の米国の核兵器が配備されているが、ポーランドにも同じように配備するように求めたものである。

ドイツの次期首相となることが確実なメルツは3月9日、ドイツは仏英と核共有協定の討議をすべきである、と述べた。米国の核の傘に対する不信が背景にある。フランスのマクロン大統領は、関心のある欧州諸国に核の傘を提供することを考える用意があると述べた。

北東アジアにおいては、韓国では国民の過半数以上が核兵器開発に賛成であり、2月末、韓国外相が核武装は「排除されていない」と声明した。

中東では、イランは核兵器に益々近づいている。上記の論説が指摘するように、イランが核兵器を保有すれば、エジプト、サウジ、トルコの核兵器開発を促進するだろう。

「唯一の戦争被爆国」としての日本
核に関する今後の情勢は、東アジアにおいても中東においても、核兵器の廃絶ではなく核兵器の拡散に向かうことは、必定であると判断される。

このような核兵器をめぐる情勢に鑑み、日本は、「唯一の戦争被爆国」であるとのアイデンティティ(これはなくなる可能性が高い)を大切にし、非核3原則を核兵器政策の基本にしていることは不適切であり、核兵器問題を持ち込みの是非を含め、今一度、真剣に検討すべき時期が来たのではないかと考えられる。

平和は、それを願望したら実現するというものではない。力による平和が最も信頼できる平和であるということと、自分の国は自分で守るのが原則であることを今一度考えてみる必要がある。【4月2日 WEDGE】
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事実として「世界では核保有に向けた動きが高まっている」という状況で、日本がどうあるべきなのかは議論が分かれるところでしょう。

上記記事のような「力による平和が最も信頼できる平和であるということと、自分の国は自分で守るのが原則である」という考えに賛同もあれば否定もあるでしょう。

私見は控えますが、トランプ流の恫喝外交がまかり通るのであれば、そこは考える必要があるかも。
「唯一の戦争被爆国」であるとのアイデンティティを今後も重視するというのであれば、逆風の現実にどのように対応するのかも併せて提起する必要があるでしょう。
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