孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル  パレスチナ人のバス同乗禁止措置は一時凍結 頑なな姿勢が深める国際的孤立化

2015-05-22 22:22:16 | パレスチナ

(パレスチナ自治区ヨルダン川西岸北部で16日、「ナクバ(アラビア語で“大災厄”の意味 パレスチナ人がイスラエルによって住む土地を追われて難民となった出来事を指す)」に抗議するパレスチナ人のデモ隊とイスラエルの治安部隊が衝突し、カメラマン2人を含む5人が負傷しました。【5月17日 AFP】)

パレスチナサッカー協会:FIFAにイスラエルの資格停止処分を求める
対立が続くイスラエルとパレスチナ。
******************
イスラエルの警察によると、エルサレムの旧市街東部の地区で20日、イスラエル軍がパレスチナ人男性を射殺する事件があった。

国境警備の警官たちに車で突っ込もうとしたため発砲したと主張している。

しかし、パレスチナ自治区の通信社は目撃者の証言を基に、男性はUターンを試みて、発砲されたと伝えた。【5月21日 CNN】
*****************

スポーツに政治を持ち込んではならない・・・・とは言うものの、その政治によって一方的に理不尽な扱いを受けていると感じる場合は、そうも言ってはいられません。

サッカー界でも、パレスチナサッカー協会(PFA)が、ヨルダン川西岸地区とガザ地区間の選手の移動が制限されていることで活動を妨害されたとして、FIFAにイスラエルサッカー協会(IFA)の資格停止処分を求めており、29日のFIFA総会で議論される予定です。

****パレスチナとの対立解消協議=イスラエル首相、FIFA会長と会談****
イスラエルのネタニヤフ首相は19日、エルサレムで国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長と会談し、パレスチナ人選手の移動制限などを理由に、パレスチナがFIFAにイスラエルの資格停止処分を求めている問題の解決に向けた方策を協議した。

パレスチナは、ヨルダン川西岸地区とガザ地区間の選手の移動が制限されていることに反発。29日にチューリヒで開かれるFIFA総会で、イスラエルの資格停止の是非が議論される見通しだ。動議の可決には4分の3以上の賛成が必要。

ネタニヤフ首相は「スポーツを政治化すればFIFAを崩壊させかねない。サッカーは国家間の友好の手段」と強調。ブラッター会長も「サッカーは人々を分断ではなくつなげるものだ」と応じた。同会長は20日、パレスチナ・サッカー協会会長と面会し、取り下げを求める方針。【5月20日 時事】 
*******************

ネタニヤフ首相との会談で、FIFA・ブラッター会長はイスラエルとパレスチナによる親善試合を提案、ネタニヤフ首相もその提案を承諾していると報じられています。

しかし、「親善試合」で丸く収めるには、イスラエル・パレスチナの間の溝はあまりに深いものがあります。
パレスチナ側の姿勢は変わらないようです。

****資格停止要求、取り下げず=対イスラエルでFIFA会長に―パレスチナ****
国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長は20日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラを訪問し、パレスチナ・サッカー協会のラジューブ会長らと会談した。パレスチナ人選手の移動制限などを理由に、パレスチナがFIFAにイスラエルの資格停止処分を求めている問題について協議したが、ラジューブ氏は取り下げを拒否した。

ラジューブ氏は「私たちの選手や関係者の自由な移動に関し妥協はしない」と断言。近くチューリヒで開かれるFIFA総会で、この問題を議論する意思は変わらないと強調した。【5月20日 時事】 
*******************

この件に関しては、上記のような記事しか目にしていませんが、ヨルダン川西岸地区とガザ地区間の移動制限は今に始まった話ではないでしょうから、今この時期、パレスチナ側が問題としているのは、イスラエル側の和平交渉への姿勢が消極的ななかにあって、パレスチナが国連正式加盟や国家承認などで外交攻勢をかけている一連の動きの一環でしょうか。

パレスチナ人はイスラエル人と同じバスには乗せない
時期を同じくして、パレスチナ人の移動に関する別の問題も表面化しています。

****イスラエル当局、パレスチナ人のバス同乗を禁止 ヨルダン川西岸****
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸からイスラエル領内へ通勤しているパレスチナ人に対し、帰宅の際にイスラエル人と同じバスに乗ることを禁止する措置が、20日から施行されることが分かった。同国の国防省高官が明らかにした。

AFPの取材に匿名で応じた高官は「3か月の試験期間を経て20日より、イスラエル領内で働くパレスチナ人が帰宅する際には同じ検問所から、(ヨルダン川西岸のイスラエル占領地に住むイスラエル)住民が使っているバスを使わずに帰宅する必要がある」と語った。西岸に入った後は、イスラエル人が乗車する車両を避けてバスを乗り換える必要があるという。

イスラエルの公共ラジオは、モシェ・ヤアロン国防相がこの禁止を承認したと報道。この措置により「パレスチナ人とイスラエル領内から出る者をより良く管理し、安全上のリスクを減らす」ことができると伝えた。

ヨルダン川西岸からは、主に建設業で働くパレスチナ人が毎日数百人、イスラエル領内へ通勤しており、通過許可証を使用して検問所を通過している。

西岸に住むイスラエル人入植者たちは長年、パレスチナ人の存在は安全を脅かすとして、西岸でパレスチナ人の公共交通の利用を禁じるべきだと要求してきた。【5月20日 AFP】
*******************

なお、続報では“主に建設業で働くパレスチナ人が毎日数百人”は“数千人”とされています。

イスラエルに入るパレスチナ人の監視強化による治安維持やイスラエル人とパレスチナ人の摩擦減少を狙って打ち出された措置ですが、「同じバスには乗せない」・・・・あきらかに差別的な措置です。

そもそも占領地での入植地建設は国際法上違法とされています。しかし、イスラエル政府は戦略上重要な地域への入植を奨励し認めてきました。

そうしたイスラエル政府が認める入植地約120カ所以外に、過激なユダヤ人グループは政府が認めない地域でも入植を行い、イスラエル国内法に照らしても違法な入植地が100ヶ所以上存在しています。

更に、イスラエルは西岸地区において、極めて差別的な政策を行っているとされています。

****イスラエル/西岸地区:極めて差別的な入植地政策 *****
・・・・ヒューマン・ライツ・ウォッチの対外関係担当副代表キャロル・ボガートは、「パレスチナ人は、人種・民族・国籍のみを理由に、電気・水・学校も奪われ、道路を利用することも許されないという、制度的差別の下にある。その一方で、近隣に住むユダヤ人入植者は、国からのサービス全てを享受している」と語る。

「イスラエル人入植者はますます豊かになり、かたやイスラエルの統治支配の下、パレスチナ人は、分断され不平等な処遇を受けるだけでなく、自分の土地や家から追い出されることもある。」

イスラエル政府は、パレスチナコミュニティを事実上居住出来ないようにして、住民を強制的に追い出すという差別的政策を取ってきた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。

イスラエルの排他的支配にある西岸地区内の「Cエリア」(西岸地区の60%を占める イスラエル軍が行政権、軍事権共に実権を握る地区)、及びイスラエルが一方的に併合した東エルサレム、この2つの地域に住む世帯に対し、2009年6月に行われた調査によると、パレスチナ人住民の約31%が2000年以降強制退去させられているという。

ヒューマン・ライツ・ウォッチがCエリアと東エルサレムを調べた結果、いずれの地域においてもイスラエルは二重基準を用いた統治政策を取っていることが明らかとなった。

ユダヤ人入植地の住民には生活向上のための金銭的支援とインフラを提供している一方で、パレスチナ人住民には、基本的サービスの供給を意図的に抑え、経済成長を阻害し、コミュニティに苛酷な条件を押し付けているのが実態だ。

正当な目標のため特定個人に対してのみ制約を加えるどの対応をとるのではなく、人種・民族・国籍を基にコミュニティ全体の処遇に差異を付けることは、人権法上の差別禁止原則への違反である。

イスラエルの政策は、Cエリアと東エルサレムで暮らすパレスチナ人の日常生活を様々な点で支配している。

今回ヒューマン・ライツ・ウォッチが明らかにした、パレスチナ人に対する差別には、例えば、入植事業を目的とした土地接収、道路使用禁止農地までの通行遮断、電気や水の供給拒否、住宅・学校・診療所・インフラの建設の不認可、家屋(コミュニティ全体に至ることもある)の取り壊しなどがある。

このような措置はパレスチナ人村落の拡大を抑制するとともに、医療をほとんど受けられないままに住民を放置するなど、パレスチナ住民に大きな苦難を強いてきた。

それと対照的に、イスラエル政府は、パレスチナ人には事実上使用不可能な土地やその他の資源を利用して、Cエリアと東エルサレムのユダヤ人入植地拡大を推進する政策をとっている。

イスラエル政府は入植者に対し、住宅・教育・特別道路のようなインフラへの資金援助をするなど、数々の奨励策を施している。

こうした政策による便益は、入植地の持続的かつ急速な拡大につながり、入植者人口は東エルサレムを含めて1992年に約241,500人だったものが、2010年にはおよそ490,000人まで増大した。(後略)【2010年12月19日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ】
*********************

こうした事情を考え併せると、今回の通勤バスに関する措置の不当性が一段と際立ちます。

数時間で凍結 「首相には容認できない案だった」?】
さすがにイスラエル国内にも批判が強く、運用開始して数時間魏にネタニヤフ首相が一時凍結を命じています。

****パレスチナ人のバス同乗禁止措置、イスラエル首相が凍結命令****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は20日、イスラエル領内からパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に戻るパレスチナ人がイスラエル人入植者と同じバスに乗ることを禁止する措置を、一時凍結するよう命じた。

パレスチナ人の同乗禁止措置は、モシェ・ヤアロン国防相の承認の下、3か月間の試験運用期間が始まったばかりだった。

だが首相府高官がAFPに語ったところによると、運用開始のわずか数時間後、ネタニヤフ首相が凍結を決定。同高官は「首相には容認できない案だったので、首相はけさ、国防相と話し合い、凍結が決まった」と述べた。(中略)

同措置の発表を受けて人権団体や野党は即座に反発、パレスチナ人に不必要な屈辱感を与え、最終的にはイスラエルに損害を与えることになると批判していた。

ヨルダン川西岸からは、主に建設業で働くパレスチナ人が毎日数千人、イスラエル領内へ通勤しており、通過許可証を使用して検問所を通過している。

西岸に住むイスラエル人入植者たちは長年、パレスチナ人の存在は安全を脅かすとして、西岸でパレスチナ人の公共交通の利用を禁じるべきだと要求していた。【5月20日 AFP】
*****************

“イスラエル首相府の高官はCNNに、計画はヤアロン国防相が主導したが、ネタニヤフ首相が容認出来ないとして介入、国防相と会談し、棚上げを求めたとしている。”【5月21日 CNN】とのことですが、首相が関与せずに国防相が独断で実施したというのも信じがたいことで、当初から首相も関与していたのではないでしょうか?

“一時凍結”ということで、計画そのものが撤回されたのかは不明です。

イスラエル国内の批判については
*******************
イスラエルのリブリン大統領は、ヤアロン氏と20日に会談したとし、「ユダヤ人とアラブ人のバスを区別するという想像もつかない措置の停止を歓迎する」と表明。

野党のシオニスト連合のヘルツォグ指導者はフェイスブック上で、この微妙な時期にイスラエルのイメージを損なう誤った政策と批判。世界でのイスラエルに対する憎悪の炎に不要な油を注ぐようなものと主張した。

また、同国の非政府機関「イエシュ・ディン」関係者は、恥ずべき、人種差別的な計画であり、実行されたらイスラエルの道徳観念を低い水準に追いやるなどと指弾した。【5月21日 CNN】
*******************

パレスチナ国家承認の流れ ネタニヤフ首相の二枚舌
イスラエル・ネタニヤフ首相がパレスチナとの和平交渉に消極的姿勢を続けるなかにあって、国際社会はパレスチナ国家を容認する方向へ流れています。

****<バチカン>「パレスチナ国家」承認 条約に調印へ****
キリスト教カトリックの総本山・バチカン(ローマ法王庁)は13日、パレスチナ自治政府との間で、「パレスチナ国家」の正式承認を盛り込んだ協定について最終合意したと発表した。

欧米諸国などに対するバチカンの影響力は大きく、国際社会に国家承認の潮流を広めたいパレスチナ側にとって弾みになりそうだ。

バチカンが13日、「パレスチナ国家」との連名で、最終合意を伝える共同声明を出した。協定はパレスチナにおけるカトリック教会の活動と信仰の自由を保障するのが目的で、イスラエルとパレスチナの「2国家」樹立による紛争解決への支持をうたっている。バチカン、パレスチナ双方の当局によって近日中に調印される。

国連総会は2012年11月にパレスチナの地位を「オブザーバー機構」から「オブザーバー国家」に格上げし、国家として承認する決議を採択。

決議を受けバチカンはこれまでもパレスチナを「国家」として扱ってきた。協定はパレスチナ解放機構(PLO)との基本合意(00年)に基づくもので、国家として正式に承認する文書となる。

AP通信によると、アッバス・パレスチナ自治政府議長の側近は「バチカンの政治的な地位は大きく、承認は非常に重要だ」と歓迎、他の欧州諸国がバチカンに続くよう期待を表明した。これに対し、イスラエル外務省は「和平交渉を前進させる動きではない」と批判した。

パレスチナを国家として承認しているのは世界で135カ国。欧州ではスウェーデン政府が昨年10月、国家として承認した。英国、フランス、スペイン、アイルランドの各国議会も自国政府に国家承認を促す決議を採択している。

フランシスコ・ローマ法王は昨年5月の中東歴訪時、「パレスチナ国家」の樹立を支持する立場を表明した。法王は16日、バチカンにアッバス議長を迎え、会談する。17日には、19世紀にオスマン・トルコ帝国時代のパレスチナで活動していた修道女2人をカトリックの「聖人」と認定するミサをささげる。【5月14日 毎日】
*******************

先の選挙期間中にパレスチナ国家樹立を認めない立場を示したネタニヤフ首相ですが、政権樹立後、態度を一変させています。

****パレスチナ国家樹立を支持=EU外相と会談―イスラエル首相****
イスラエルのネタニヤフ首相は20日夜、エルサレムで、欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表(外相)と会談し、パレスチナとの和平について「私は二つの国家という構想を支持する」と述べた。

首相は3月の総選挙の選挙戦中に、パレスチナ国家樹立を認めない立場を示したが、改めてその発言を撤回した格好だ。【5月21日 時事】 
******************

パレスチナ国家樹立を認めるのか、認めないのか・・・・和平交渉のもっとも基本的な枠組みです。その点に関して国内外で対応を使い分けるというのでは、政治家として信用できません。

新内閣も右派連合で、和平交渉進展は期待できないと見られています。
イラン問題でも、アメリカ・オバマ大統領の溝がいよいよ深まっています。

イスラエルが頑なな姿勢を続ける間に、国際的孤立化が進んでいきます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« タイ  新憲法案を国民投票... | トップ | ロシア  輸入代替で経済制... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

パレスチナ」カテゴリの最新記事