孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  バイデン米大統領は「解放する」とは言うものの熾烈な当局のデモ弾圧 対露ドローン供与問題

2022-11-07 22:43:32 | イラン
(テヘラン市内をバイクで走るイランの警官隊(2022年10月) 【11月5日 Newsweek】)

【バイデン大統領「われわれはイランを解放するつもりだ」】
最近「???」と感じたのはバイデン大統領のイランに関する「イランを解放」という発言。

****バイデン米大統領「イランを解放」と発言、選挙演説で****
バイデン米大統領は3日、中間選挙に向けたカリフォルニア州での演説で、政府に対する抗議デモが続くイランについて「解放」すると表明した。デモ参加者は間もなく自由になるだろうと述べた。

会場の外でイランの抗議者らを支持する集会が開かれる中、バイデン氏は「心配することはない。われわれはイランを解放するつもりだ。彼らはすぐに自由になるだろう」と語った。

具体的にどのような措置を取るのかには言及しなかった。ホワイトハウス国家安全保障会議は現時点でコメント要請に応じていない。

イランでは髪を覆うスカーフの着用が不適切として警察に拘束された女性が死亡した事件を受け、抗議活動が7週間にわたって続いている。

米国は2日、イラン政府が女性の権利を否定し、抗議活動に対し残忍な弾圧を行っているとして、45カ国からなる国連の「女性の地位委員会(CSW)」から同国の除外を目指すと表明した。【11月4日 ロイター】
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「イランを解放」ということは、イラン現体制を転覆させるということになります。イランからすればとても容認できる話ではなく、外交的には絶縁状みたいなことにもなります。核合意再建に関する協議も停止してしまいます。もう、合意をあきらめたのでしょうか。

何らかの具体的な話があってのことでしょうか? 仮にあったとしても、軽々に発言べきものでもないでしょう。

特に意味はなく、演説の勢いで口にした言葉でしょうか? そうであるなら、やはり軽率でしょう。かねてより懸念されている「バイデン大統領は大丈夫か?」という話にも。

台湾有事をめぐる従来からの「あいまい戦略」を否定するような発言は、何回も繰り返しているところをみると“うっかり”ではなく「確信犯」のようですが、今回イラン発言の真意は?

【熾烈なイラン当局のデモ弾圧】
ヒジャブ(スカーフ)の被り方が不適切として拘束されたのち、警察で死亡した女性をめぐる抗議行動は今も続いているようですが、単にヒジャブの問題、警察の暴力の問題にとどまらず、自由を求める現体制否定の闘いともなっており、それだけに当局側の弾圧も熾烈なようです。

****イラン革命防衛隊司令官、デモを「暴動」と呼び強く警告も…収束の兆し見えず***
女性の髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」の着用をめぐり抗議デモが続くイランで、精鋭部隊・革命防衛隊の司令官がデモを「暴動」と呼び、やめるよう強く警告しました。しかし、デモは翌日も行われ、収束の兆しは見えていません。

イランでは、ヒジャブの着用が不適切だとして警察に拘束された女性が死亡し、抗議デモが続いています。
ロイター通信によりますと、革命防衛隊の司令官は29日、「“暴動”はきょうで終わりだ。もう街に出るな」と抗議デモをやめるよう強く警告しました。

しかし、イランの大学では翌日もデモが行われ、女性がヒジャブに火をつけ、抗議の意思を示しました。また、集まった学生らは「イスラム共和国はいらない」と声をあげました。

治安当局はデモの鎮圧のため実弾も使用し、これまでに1万4000人以上を逮捕したということですが、依然として収束の兆しは見えていません。【10月31日 日テレNEWS】
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最高指導者ハメネイ師も警察当局の鎮圧行動を支持しています。

****殴りバイクでぶつかり、最後は至近距離で発砲...イラン警官、デモ参加者への非道な暴行現場****
<激しいデモが続くイランで、警官隊によるデモ参加者への常軌を逸した暴行の様子が撮影された。被害者の容態などは不明のままだ>

スカーフを適切に着用していなかったとして若い女性が道徳警察に拘束され、死亡した事件を受けて抗議運動が過熱しているイラン。緊迫した状況が続く首都テヘランで、警官隊がデモ参加者に激しい暴行を加える様子がビデオに収められた。

11月1日にSNSに投稿された2分強の動画には、夜の道路に横たわる男性に、12人ほどのイラン警察が襲い掛かる様子が映っている。警官たちは男性を蹴りつけ、棒で殴り、バイクでひこうとする様子も見られる。そして最後には、至近距離から男性に発砲する。アルジャジーラによれば、この銃は散弾銃と見られるという。

この男性がその後どうなったかは明らかになっていない。(中略)

イラン警察は、この事件が起きた場所や時間などを操作するとともに、関与した人物の特定を進めていると発表した。また国営メディア上で発表した声明で、「警察は暴力や非正規な行動を決して容認しておらず、違反者は規則に従って確実に法的措置を受けることになる」とした。

警察は暴行する「自由を与えられている」
一方、国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」イラン支部は、国連人権理事会にこの事件の調査を要請し、「彼らは抗議者を残酷な手段で殴ったり撃ったりする自由を与えられている」と声明で述べた。

ノルウェーに本部を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」によれば、イランで女性の死亡を受けて抗議デモが発生して以降、子供40人を含む277人が治安部隊によって命を奪われたという。拘束された人は1万4000人以上に上るとの情報もある。

ただ当局はこれまで、デモ参加者の死亡について関与を否定し、外国が支援する「潜入者」や「テロリスト」によるものだと非難している。【11月5日 Newsweek】
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****イラン当局、デモ参加者約1000人を起訴 公判へ=報道****
 強硬な取り締まりで知られるイランの司法当局は首都テヘランの暴動で約1000人を起訴し、近く公判を開く見通し。同国のタスニム通信が伝えた。当局は長期化する抗議活動の鎮圧に向けた動きを強めている。

スカーフのかぶり方が不適切だとして9月にマフサ・アミニさん(22)が風紀警察に拘束され急死した事件に抗議するデモは、学生や女性を中心に約7週間にわたって繰り広げられており、当局が弾圧を強めているにもかかわらず収束していない。

イランの指導者らは、デモ隊を暴徒と呼び、厳しい措置を取ると警告。米国を含む敵国が暴動をあおっていると非難している。

タスニム通信によると、テヘランの司法当局トップは、治安当局の襲撃や殺害、公共物の放火を含む破壊行為を行った約1000人の裁判が革命裁判所で開かれると表明。報道によると、今週に公開裁判の形で行われる。

司法当局によると、警察官に車で突っ込んだとされる22歳男の判決はまだ下っていないが、死刑に相当する「地球の腐敗」という罪に問われているという。【11月1日 ロイター】
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可能であるなら「イランを解放」してほしいところですが、単に口にするだけなら“米国を含む敵国が暴動をあおっている”とする体制側主張を刺激するだけで、一層の弾圧をまねくことになる危険も。

【イランのロシアへのドローン供与 強化されるイラン・ロシア関係の一端】
イランに関してここのところ問題になっているのが、ロシアに対するドローン供与。

イラン側もこれまでの否定を覆して“少数の無人機を侵攻前に供与した”と認めていますが、ウクライナ・ゼレンスキー大統領は「まだうそをついている」と批判。

****ロシアへの無人機供与認める ウクライナ侵攻前とイラン外相****
イランのアブドラヒアン外相は5日、ロシアがウクライナに侵攻する数カ月前に無人機(ドローン)をロシアに供与したと記者団に明らかにした。国営テレビが伝えた。イランはこれまで、ウクライナで使用される武器を送っていないと重ねて主張していた。

一方で、一部米メディアが報じた弾道ミサイルの供与については「ロシアに対していかなるミサイルも送っていない。完全に間違っている」と改めて否定した。

ロシアは、無人機によるウクライナのインフラ攻撃を激化させており、米欧はイラン製が使用されているとして、同国を強く非難。対イラン制裁で圧力を強めている。【11月5日 共同】
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****イランは「まだうそをついてる」 大統領、対ロ無人機供与で****
ウクライナのゼレンスキー大統領は5日のビデオ演説で、イランが同日、ロシアへの無人機(ドローン)供与を認めたことに言及した上で「まだうそをついている」と批判した。少数の無人機を侵攻前に供与したとのイランの主張に対し、ウクライナ軍が「昨日だけで11機破壊した」と指摘した。

ゼレンスキー氏は、イランの要員がロシア軍に無人機の扱い方を指導しているとし「そのことに関して、イランは沈黙している」と述べた。

10月に続いたウクライナ首都キーウ(キエフ)を含む各地への攻撃にはイラン製無人機が多用されたとみられている。【11月6日 共同】
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イランはロシアへのドローン供与の見返りに、核合意再建協議の決裂に備えて核開発に関する援助をロシアに求めているとも報じられています。

****米CNN、イランが露に核開発巡る援助要請と報道…米研究機関「無人機提供の見返りに」****
米CNNは4日、米情報機関の分析として、イランがロシアに対し核開発を巡る援助を要請したと報じた。イラン核合意の立て直しに向けた協議が破綻した場合に備えているとの見方を伝えた。

報道によると、イランは核物質の提供や核燃料の製造に関する支援を求めているが、ロシアが応じるかどうかは不明だという。

ロシアは核開発抑止を柱とする核合意の当事国で、イランの核兵器保有に反対している。軍事転用が懸念されるイランの核開発拡大をロシアが受け入れた場合、米政府は大きな方針転換につながる可能性があるとみて警戒を強めている。

米政策研究機関「戦争研究所」は5日、ロシアにイラン製無人機(ドローン)を提供する見返りに、イランが核開発への支援を求めているとの見方を示した。(後略)【11月6日 読売】
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イランのロシアへのドローン供与は2年前から極秘交渉されており、ロシアがウクライナ侵攻に備えて入念に準備していたとの見方も。
また、弾道ミサイルも交渉中とのこと。

****無人機供与、2年前から極秘交渉 イラン、弾道ミサイルも協議****
中東イランがロシアに攻撃用無人機(ドローン)を供与した問題で、供与に向けた両国間の極秘交渉は2020年末に始まり約半年で合意に至ったことが7日、分かった。イラン外交筋と革命防衛隊関係者が明らかにした。

機体は21年夏に初納入された。交渉の詳細が判明したのは初めて。ロシアはイラン製弾道ミサイルにも高い関心を示し、現在も売却交渉が継続中という。

ロシアは侵攻前の21年春に部隊を集結。交渉はその数カ月前に始まったことになり、兵器の海外調達を進めていた可能性がある。イランは核問題で米欧と対立、ロシアと軍事分野で急速に連携を深めた実態が分かった。【11月7日 共同】
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バイデン大統領としては、イラン現体制もロシアのプーチン支配体制もまとめてひっくり返したいところでしょうが、明日の中間選挙結果次第では、その前にアメリカ・バイデン政権が窮地に陥ることもあります。

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