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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イランのソレイマニ司令官殺害 米国防総省も衝撃を受けたトランプ大統領の決定

2020-01-05 22:35:25 | イラン

(ソレイマニ司令官の娘の1人はロウハニ大統領に、父の死に対する復讐はいつになるのか尋ねた【15日 BBC】)

(米軍の空爆で死亡したイランのソレイマニ司令官やイラクの親イラン武装勢力のムハンディス副司令官の棺と、それを取り囲む人たち(4日、イラク・カルバラ)【同上】)

 ロウハニ大統領としては、何もしないわけにもいかないでしょう。

 

【他の選択肢をより受け入れやすくための非現実的な選択肢のはずが・・・】

一昨日ブログ“アメリカ トランプ大統領指示で国民的英雄ソレイマニ司令官を殺害 注目されるイランの対応”でも、今後戦闘状態を誘発しかねない、また、中東情勢の悪化という日本など世界に大きく影響することにもなりかねないイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害という決定について、トランプ大統領がどれほどの検討・熟慮をしたのか疑問がある旨を書きましたが、「決断」に至る経緯は下記のようにも。

 

****司令官殺害、トランプ氏が決断するまで 国防総省に衝撃****

米軍が、イランのイスラム革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したことで、両国の間の緊張が高まっている。

 

トランプ米大統領は、ソレイマニ司令官の殺害をどう決めたのか。米メディアは相次いで、トランプ氏が急に決断し、政権内にも驚きが広がった様子を伝えている。

 

ソレイマニ司令官が「米国の外交官と軍人を攻撃する計画を進めていた」ため、「防衛措置として攻撃した」というトランプ政権の説明にも疑義が生じている。

 

イラクでは数カ月前から、米軍などがロケット弾攻撃を受けており、米側は親イラン派の武装組織が行っていると抗議してきた。12月27日、イラク北部のロケット弾攻撃で米国の民間人1人が死亡、米軍兵士4人が負傷したことで、一気に緊張が高まった。

 

ニューヨーク・タイムズによると、この攻撃を受け、米軍幹部らはソレイマニ司令官の殺害を「最も極端な選択肢」としてトランプ氏に提示した。

 

国防総省は歴代大統領に非現実的な選択肢を示すことで、他の選択肢をより受け入れやすくしており、今回もトランプ氏が選ぶことは想定していなかったという。

 

実際、トランプ氏は昨年12月28日に殺害計画を拒否し、親イランの武装組織に対する空爆を承認した。だが、数日後に在バグダッド米大使館が親イラン派に襲撃される様子をテレビで見たトランプ氏はいらだち、その後に司令官殺害を決断した。国防総省幹部らは衝撃を受けたという。

 

ワシントン・ポストによると、国防総省幹部らは何らかの軍事行動を求めていた。昨年6月にイランが米軍無人機を撃ち落としたり、昨年9月にサウジアラビアの石油施設が攻撃を受けたりした後、米側が何ら報復をしていないことをトランプ氏に伝え、「何もしなければ、イランは何でもできると考えてしまう」と訴えたという。

 

トランプ氏も、無人機撃墜に報復をしなかったことをめぐる批判的な報道が気になり、「弱腰」と映ることを懸念していたという。ただ、同紙も司令官殺害が「非常に大胆で、我々の多くを驚かせた」という政権高官の言葉を伝えた。

 

同紙によると、殺害計画の決定後、米当局は司令官の動きを追い、バグダッド空港の付近で攻撃することが最適だと判断した。1月3日の攻撃の直前、トランプ氏はゴルフリゾートで最終承認をしたという。

 

CNNは、攻撃直前まで政権内で攻撃の法的根拠をめぐる議論が続いたと伝えている。トランプ氏は3日の会見で「米国の外交官と軍人に対する切迫した、邪悪な攻撃を計画していた」と述べ、阻止するために司令官を殺害したとした。

 

だが、CNNは「政権は具体的な脅威を明らかにせず、法的な根拠もはっきりと示していない」と指摘。こうした点については、米議会からも疑問が出始めている。【15日 朝日】

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大統領の決定に国防総省が「衝撃」を受けたとのことですが、他の選択肢をより受け入れやすくための非現実的な選択肢を苛立つ大統領が選択し、それが「了解しました」と実行される・・・・その実態にアメリカならず世界の人々が「衝撃」を受けます。

 

****猛反発、読み違い?****

(中略)ただ、ソレイマニ司令官の殺害は、もともと本格的な対米衝突を望んでいなかったイランを追い込み、想定以上のリスクを背負った可能性がある。

 

イランのラバンチ国連大使は3日、米CNNの取材に「戦争行為だ」と反発し、報復の「軍事行動」に出ると宣言。ホワイトハウス元当局者は「トランプ氏は、イランがここまで激しく反発するとは予想していなかったのではないか」と話した。

 

今後、衝突は収束できるのか。ブッシュ(子)、オバマ両政権で、中東問題を担当した経験を持つ民主党のスロトキン下院議員はツイッターで、両政権もソレイマニ司令官の殺害を検討しながら、報復や長期的な対立を考慮し、見送ったと指摘。(後略)【15日 朝日】

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前回ブログでも書いたように、ソレイマニ司令官は大統領をもしのぐ国民支持があり、体制内の実力者でもあります。その人物を殺害して「ここまで激しく反発するとは予想していなかった」というのも理解できな話です。

 

【攻撃は国際法と米国内法に照らして合法だったのか?】

トランプ大統領の決定には、国際法と米国内法に照らして合法だったのかを疑問視する声も出ています。

 

****イラン司令官殺害、米政府の法的根拠に疑問の声****

イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を空爆して殺害したことについて米政府は、自衛行為だと正当化し、国際法に違反しているとの非難や、法律の専門家や国連の人権関係者の懸念をかわそうとしている。(中略)

法律の専門家からは、イラク政府の同意を得ずにトランプ大統領がイラク国内で攻撃する法的権限があったのか、また攻撃は国際法と米国内法に照らして合法だったのかを疑問視する声がでている。

イラクのアブドルマハディ首相は攻撃について、米軍のイラク駐留を巡る合意に違反していると指摘。またイラク国内の複数の政治勢力は米軍の撤退を求めた。

国連憲章は他国への武力行使を原則として禁止しているが、当該国が領土内での武力行使に合意した場合は例外としている。専門家によると、イラクの同意を得ていないことから米国は攻撃を正当化することは難しいという。

国際法が専門のイェール大学ロースクールのウーナ・ハサウェイ教授はツイッターで、公表された事実からみると今回の攻撃が自衛行為であるという主張は「支持されないようだ」とし、「国内・国際法いずれに照らしても根拠は弱い」と結論付けた。

国防総省は、「今後のイランの攻撃計画」を抑止するためソレイマニ司令官を標的にしたと指摘。トランプ大統領は、司令官は「米国の外交官や兵士への悪意のある差し迫った攻撃を画策していた」と述べた。

テキサス大学オースティン校ロースクールのロバート・チェズニー氏(国家安全保障法が専門)は、国連憲章上の問題を巡る政権のよりどころは自衛と指摘。「アメリカ人殺害作戦の計画を受け入れれば、それに対応する権限が与えられる」と述べた。(中略)

米国とイラクが2008年に調印した戦略的枠組み合意では、イラクの「主権、安全保障、領土の保全」に対する脅威を抑止するために緊密な防衛協力をうたったが、米国がイラクを他国攻撃の拠点として使用することは禁じている。

国際法のこれまでの基準からみて、脅威にみあった対応を必要に迫られて行う場合、国家は先制的な防衛が可能だ。

司法管轄外の処刑に関する国連特別報告者のアグネス・カラマード氏は、攻撃がこの基準を満たしているかどうか疑問を示す。

 

ソレイマニ司令官を標的にしたことは「差し迫った自衛のため事前対応というより、過去の行為に対する報復のように見える」と指摘。「このような殺害への法的根拠は非常に狭く、適用するのは想像しがたい」と述べた。

米民主党議員はトランプ大統領に対し、ソレイマニ司令官による差し迫った脅威について詳細を提供するよう求めた。

上院情報特別委員会の副委員長である民主党のマーク・ウォーナー議員はロイターに対し、「脅威があったと信じているが、どれだけ差し迫っているかという点は答えがほしい」と述べた。

米国内法からみたトランプ大統領による司令官殺害の権限と、議会に事前に通知せずに行動すべきだったかどうかについても疑問が示されている。

法律の専門家は、最近の米大統領は民主・共和問わず、標的の殺害を含む一方的な武力行使の可能性を拡大解釈しており、歴代政権内の法律専門家により支持されてきたと指摘する。

今回の場合の自衛論の論拠は、米国人を攻撃するという差し迫った計画に関する具体的な情報を政府が公表することにかかっているといえる。(後略)【15日 ロイター】

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“米国人を攻撃するという差し迫った計画”云々は、結局のところ後付けの理由・言い訳に過ぎないように思えます。

 

【「アメリカの35の重要施設」に対し「52の目標を選定」】

今後のイランがどうでるのかはよくわかりません。

恐らく、イランにとっても司令官殺害は想定外の事態で、どの程度の強度の報復で対応すべきか迷いがあるところでしょう。

 

イランとしてもアメリカと大規模な軍事衝突に至ることは避けたいところでしょうから。

イラン国民にも、「アメリカに死を!」という大きな声(いつものことですが)がある一方で、戦争への不安も広がっています。

 

****イラン、緊張激化に不安広がる 「戦争は嫌だ」市民の願い切実に****

イラン革命防衛隊の精鋭部隊のソレイマニ司令官が米軍の空爆で殺害されたことを受け、イランの市民の間では両国の対立激化が紛争に発展するのではないかとの不安が広がっている。「戦争は嫌だ」。家族を、友人を、暮らしを守りたいとの願いは切実さを増している。

 

首都テヘランの主婦マンスレさん(64)は198088年のイラン・イラク戦争を体験、貧困の中で辛酸をなめた。「私は戦争が何をもたらすのかよく分かっている。大災難だ。何としても回避してほしい」と訴えた。

 

テヘラン市内では至る所にソレイマニ氏の肖像や追悼の黒い旗が掲げられ、沈鬱な雰囲気に包まれている。【15日 共同】

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****情勢緊迫 イランが繰り返し報復宣言 米大統領が強く警告 ****

アメリカがイランの司令官を殺害し、イランが3日間の喪に服すると表明してから2日たちました。この間、イラン側が繰り返し報復を宣言しているのに対し、トランプ大統領は報復に出れば激しく反撃すると警告し、情勢は緊迫しています。(中略)

イランの最高指導者ハメネイ師は、国民から英雄視される司令官の殺害を受けて、国を挙げて3日間、喪に服すると表明し、2日がたった5日には葬儀が営まれました。

またイラン国民の間ではアメリカへの怒りが高まっていて、ハメネイ師をはじめ政権の幹部は繰り返し報復を宣言し、革命防衛隊の幹部は「アメリカの35の重要施設を狙うことができる」と述べました。

さらに4日にはイランと強いつながるのある武装組織「カタイブ・ヒズボラ」が「5日の夜以降、アメリカ軍基地から1キロ以上離れるべきだ」とする声明を出し、アメリカ軍への攻撃を示唆しました。

これに対しトランプ大統領は4日、ツイッターでイランが報復に出た場合、直ちに激しく反撃するとしたうえで、すでに攻撃対象として52の目標を選定し、「目標のいくつかはイランとイランの文化にとって非常に重要なものだ」として強く警告しました。さ

らに4日深夜にも「私が強く忠告したのにもし彼らがまた攻撃してきたら、今までやられたことがないほど激しく攻撃する」、「われわれの軍事装備は世界最高かつ最大で、イランがアメリカの基地やアメリカ人を攻撃すれば、ためらいなくそれらを送り込む」と立て続けに投稿してけん制しました。

イランではアメリカによる殺害の発表から丸3日がたったあとの現地時間の6日にも喪が明ける可能性があり、イラン側がどのような報復に出るのか、情勢は緊迫しています。

 

アメリカ 増派部隊が出発

AP通信などによりますと、アメリカ国防総省がイランとの緊張の高まりを受けて増派を決めた部隊の一部が4日、クウェートに向けて出発しました。

出発したのはアメリカ南部ノースカロライナ州を拠点とする陸軍第82空挺師団の数百人の兵士で、国防総省が4日に配信した映像では、兵士たちが装備の点検をしたり、航空機に搭載したりする様子が確認できます。

 

民主党 攻撃の判断に疑問 追及の構え

トランプ大統領の指示でアメリカ軍がイランの精鋭部隊の司令官を殺害したことに対し、野党・民主党は攻撃の判断に疑問を呈し、追及の構えを見せています。

民主党のペロシ下院議長は4日、法律の規定に基づき、政権側から軍事力を行使した際の報告を受け取ったとしたうえで「報告の文書からは攻撃を決定したタイミングや方法、そして正当性に関して、深刻で切迫した疑問を感じた」と述べ、攻撃の判断に疑問を呈しました。

そして「今回の攻撃は議会との協議も、軍事力の使用許可も、明確で適切な戦略の説明も、ないまま実施された」と述べ、政権側に説明を求めるとして判断の経緯や根拠などを追及する構えを示しました。

また大統領選挙の民主党の有力候補、バイデン前副大統領は3日、アイオワ州の演説で「現政権は最大限の圧力をかけてイランの侵略を阻止し、核合意でうまく交渉するとしてきたが、どちらにも失敗した。そして司令官を殺害しイランからの攻撃を防ぐというゴールを定めたが、この行動はほぼ確実に反対の影響を与えるだろう」と述べて、司令官の殺害がさらなる攻撃を引き起こすと批判しました。

アメリカではことし11月の大統領選挙に向けて選挙戦が本格化していて、今回の司令官殺害とイランとの緊張の激化が選挙戦の行方にも影響を与える可能性があります。

 

イラン軍司令官「米に反撃を実行する勇気ない」

イランのメディアが5日に伝えたところによりますと、イラン軍のムサビ司令官は「ソレイマニ氏の殺害は節度のない、許しがたい行為だ」と述べて、アメリカ軍の攻撃を改めて強く非難しました。

そのうえで、トランプ大統領がイランが報復に出た場合は、52の目標を選定して、直ちに反撃するとしていることについて「アメリカには実行する勇気がないと思う」と述べてけん制しました。(後略)【15日 NHK】

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「アメリカには実行する勇気がないと思う」・・・・相手の出方に対する読み違えから、緊張が次第にエスカレートして戦争へ・・・というのは、古今東西の戦争の歴史が示すところです。

 

イランの言う「アメリカの35の重要施設を狙うことができる」が何にを示すのかは知りませんが、トランプ大統領の「52の目標」については、“トランプ氏は、標的の52カ所について、1979年の在テヘラン米大使館人質事件で444日間にわたり人質となった米国人52人と同じ数だとし、「ハイレベルな場所」や「イランやイラン文化にとって重要な場所」が含まれるとした。「米国はこれ以上の脅しはいらない!」ともつづった。”【15日 朝日】とのこと。

 

アメリカの執拗なイラン嫌悪の背景に1979年の在テヘラン米大使館人質事件のトラウマがあると私は思っていますが、ここにきてまた事件の亡霊がさまよっているようです。

 

それにしてもこの緊張状態において、人質の数だか何だか知りませんが、言葉遊びのような真似はやめて欲しいものです。

 

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