孤帆の遠影碧空に尽き

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中国  新型コロナウイルス肺炎 1100万人都市・武漢封鎖 直前の混乱、現在は静寂

2020-01-24 22:35:18 | 疾病・保健衛生

(中国・武漢の駅に到着した利用客(2020年1月23日撮影)【1月24日 AFP】)

【習近平主席「断固として蔓延を抑え込め」との指示 武漢封鎖へ】
中国の新型コロナウイルス肺炎について、1月18日ブログ“中国  新型ウイルス肺炎 「国外へは出るが省外へは出ない。愛国ウイルス」との皮肉も 実態は?”でとりあげたときは、患者45人、死者2人というレベルで、国外事例もタイと日本だけでした。

しかし、「愛国ウイルス」であるはずもなく、その後状況が一変したことは周知のところです。
感染が急拡大したというより、最高権力者・習近平国家主席が20日、「断固として蔓延を抑え込め」との指示によって、水面下に隠蔽されていたものが一気に噴出した・・・というように見えます。

中国当局は、1100万人が暮らす大都市・武漢を事実上「封鎖」するという思い切った措置で、感染封じ込めと、「適切な対応をとっている」との国際アピールを狙っています。

しかし、すでに多くの感染者が武漢から中国各地に散らばり、更に春節の民族大移動で全国各地にシャッフルされるということで、急速な沈静化は困難に思えます。

****新型肺炎、武漢「封鎖」 中国、拡大阻止へ強硬策 武漢で邦人、重度肺炎 大使館発表****
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が広がっている問題で、武漢市は23日、市内全域の交通機関に加え、同市を出発する航空便や鉄道の運行を停止した。

駅や高速道路を閉鎖し、1千万人を超える市民に実質的な移動制限をかける異例の措置だ。国際社会の懸念が深まるなかで中国政府が強い対応に乗り出した形だが、混乱はさらに広がりそうだ。

武漢市政府は同日未明に幹部会議を開き、「全面的な戦時状態に入っており、蔓延(まんえん)を食い止める措置を実行する」と、非常態勢に入ることを決定。午前10時から市内全域の公共交通機関の運転停止と武漢発の航空便、鉄道の運行を中止するとの通知を出し、市民に「特殊な事情がなければ武漢から離れてはならない」と指示した。
 
日本直行便もある武漢天河空港からは23日、約600便が出発予定だったが午前10時以降は全て欠航となり、全日空など、武漢への到着便の欠航を決める航空会社も相次いだ。
 
駅や高速道路の入り口が閉鎖され、地下鉄や路線バスも運行を停止。住民によると、市内は人通りが極端に減り、閑散としている。
 
中国ではこれまでに17人が死亡、約570人の感染が確認されており、その大半を武漢の住民が占める。
 
北京の在中国日本大使館はこの日、武漢市内で日本人1人が重度の肺炎を発症したと発表した。新型肺炎による症状かどうかは未確認という。
 
約1100万人の人口を抱える武漢市は中国の各都市へ高速鉄道や高速道路が延びる交通の要所でもある。日本貿易振興機構(JETRO)によると、500~600人の日本人も暮らしている。中国は25日に春節を迎えるが、多くの人が移動するシーズンに重要な交通網を「遮断」したことで、暮らしや経済への影響は避けられない情勢だ。
 
背景には、新型肺炎の感染が国内外に拡大するなか、健康被害や社会の動揺、国際的な批判を何とか食い止めたいとする中国政府の焦りがある。
 
中国政府は21日に新型肺炎を法定伝染病に指定し、最大級の防疫対策の実施を決めたが、感染者は連日100人単位で増えた。国外でも感染は広がり、23日も新たにシンガポールとベトナムで、中国人男性計3人の感染が確認された。
 
国際社会の警戒も広がるなか、一気に強硬策に打って出た形だが、春節前の大規模な移動はすでに始まっており、効果は未知数だ。
 
世界保健機関(WHO、本部スイス・ジュネーブ)の専門家委員会は23日午後(日本時間同日夜)、前日に引き続き緊急会合を開催。22日の会議では、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たるかどうかで意見が分かれており、中国側からの新たな状況報告を待って判断するとみられる。
 
専門家委員会によると、家庭や医療施設でヒトからヒトに感染することが確認されたが、二次感染した人からさらに別の人に感染したケースは確認されていないという。記者会見した疫学の専門家は「中国国外で、二次感染が確認されていないことは重要だ」と指摘した。

致死率についても、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や12年に発見された中東呼吸器症候群(MERS)のコロナウイルスと比較して低く、症状の重さも患者による差が大きいという。【1月24日 朝日】
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【WHO、緊急事態宣言を見送り】
WHOは「事態軽視しているわけではない」としつつも、中国以外での症例の少なさを主な理由に、緊急事態宣言を見送っています。「武漢封鎖」といった強硬措置がアピールした面もあるでしょう。

****中国の新型肺炎、WHOが緊急事態宣言を見送り…「事態軽視しているわけではない」****
世界保健機関(WHO)は23日、中国で感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎について、スイス・ジュネーブで専門家による緊急委員会を開き、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」の宣言を見送った。記者会見した専門家らは、中国以外での症例数が限られており、宣言には「早すぎる」と説明した。
 
WHOのテドロス・アダノム事務局長は今後の状況悪化の可能性に触れながらも「中国にとっての緊急事態だが、世界的な健康の危機ではない」と述べた。

中国の国外で人から人への感染例は見つかっていないことなどを、宣言を見送った理由に挙げたが、「宣言を今日は見送ったからといって、WHOとして事態を軽視しているわけではない」と強調した。
 
また、「人の移動や貿易のより広範な制限は勧告しない」としたが、中国政府に対し、感染の広がる地域の国際空港や港での出国者に対する体温検査実施などを求めた。
 
緊急委員会は初日の22日に結論が出ず、2日続けて行われた。宣言の是非について意見が分かれたものの、中国以外での症例の少なさに加え、中国が封じ込め対策に力を入れていることも見送りの理由となった。

中国の習近平・国家主席は22日、メルケル独首相、マクロン仏大統領とそれぞれ電話会談し、中国が実施している防疫措置を強調するなどし、理解を求めていた。
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WHOが緊急事態の宣言を見送ったことを受け、厚生労働省は、新型コロナウイルスによる肺炎を、入院や就業制限を強制できる感染症法上の「指定感染症」に位置づけることは見送る方針だ。現状では、感染が日本国内で拡大しておらず、強制的な措置を取る段階ではないと判断したためという。
 
WHOが緊急事態宣言を見送ったことについて、東北大学の押谷仁教授(ウイルス学)は「患者が増えている状況から、国際的に感染が広がる危険性があり、今回、宣言を出すべきだったのではないか」と指摘する。その上で、「今後、中国以外で患者が増えたり、人から人への感染が広がったりするようになれば、宣言が出されるだろう」と話している。【1月24日 読売】
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このあたりの判断はいつも問題となるところです。
純粋に疫学的な判断だけでなく、「人の移動や貿易のより広範な制限」という話になると中国経済、ひいては日本を含めた世界経済に多大な影響を与えますので、政治的判断がどうしてもつきまといます。

【脱出へ殺到する人々、そして今、人影が消えた街】
「武漢封鎖」直前の状況については以下のようにも。

****武漢脱出の最終列車を逃すな 感染都市封鎖ルポ ****

朝日が昇る中、武漢の通りはターミナル駅へ向かう人であふれていた。23日、新型コロナウイルス感染で既に17人が死亡したこの都市から人々は脱出しようとしていた。 
 
中国当局が武漢から他都市への移動を禁じる計画を発表した後とあって、駅の待合所はごった返していた。死者を出した新型ウイルスは、野生動物が取引される同市内の市場で発生したとみられている。移動禁止は感染を食い止める新たな手段だ。駅では静かに座って食べたり会話したりする人もいたが、遅れて封鎖計画を知った人々はパニック状態の中をかき分けて進んだ。 
 
「いま行かなければ、出られなくなる」と語る倉庫マネジャーのゴン・シアンさん(31)は、わずか数時間前に荷造りしたダッフルバッグに腰掛けた。移動禁止を知ったのは午前3時。すぐさま午前9時の邯タン行きの乗車券を予約した。中国北部の河北省にある邯タン市には親戚がいる。 
 
これほど大きな都市の封鎖は前例がない。武漢はロサンゼルスを上回る1100万人の人口を抱える中国第8の都市だ。市内を流れる揚子江の両側には高層ビルが立ち並ぶ。 
 
ゴンさんは56歳の父親と並んで座っていた。感染の中心地にとどまれば父親の健康が心配だという。ウイルスが人から人へ感染することを当局は今週まで公表しなかったので、もう政府を信用できないと話した。 
 
「政府は不正直で、私たち一般人に何週間も隠していた」と言い、人々が朝起きて封鎖を知れば、怒りとパニックの波が押し寄せると思うと語った。「出口が閉鎖され始めたら、誰にもとどまる勇気なんてないでしょう」 
 
午前8時30分。駅に20カ所ある有人発券所のうち、開いているのはわずか2カ所で、人々が長い列を作っていた。乗車券を交換あるいは購入できた幸運な客は、スーツケースやカバンを引きずりながら中央口へと急いだ。 
 
間に合わなかった人もいる。ウエートレスのデン・キアンリンさん(20)は発券所の窓際に腰掛け、この日の朝に服を詰め込んだ紙袋を手にしていた。朝7時に友人に起こされてニュースを知り、地下鉄に飛び乗ったという。携帯電話の予約サイトで正午の乗車券を早い時間のものと交換しようとしたが、約290キロメートル北西の出身地、襄陽行きの空席はなかった。 
 
デンさんは携帯を指さしながら、「ベッドから出て外へ飛び出したのに」と語った。1時間ものあいだ、乗車券の交換を試みていたが無駄だった。「乗車券は全部売り切れ」ていた。 
 
(中略)こうなった以上、きっと心配し過ぎだと自分に言い聞かせようとしていた。「心配する必要なんてない」と言いながらも、声は震えた。「感染さえしていなければ、運がいい」 
 
封鎖まであと1時間に迫ると、パニック状態になった。十数台の警察車両が駅の外に止まり、黒い制服の警官が整列した。警察の装甲車が小型の警察車両を両側に従えるかのように、有人発券所の前で警護にあたった。 
 
警官は人々の乗車券を点検し、出発時刻が午前10時以降であれば追い返した。緑色のコートを着て直立不動の兵士らは、ぎりぎりで駅に駆け込む乗客の姿を目で追っていた。 
 
「閉鎖ってどういうこと? そんなこと聞いてない」。入場を拒まれ、発券所で返金してもらうように言われた女性はいら立ち、泣き声を漏らした。 
 
別の人が叫んだ。「新しい乗車券を買えなかったらどうなる。いったいどうなるんだ」 
 
駅の構内は不気味なほどに静まりかえっていた。午前9時頃、人々はおとなしく北京行き「G512」号に乗り込んだ。危機を逃れる難民のような乗客で車両はいっぱいになった。

この列車――武漢を去る最終列車の1つ――が5時間半の旅へ向けて駅から滑り出すと、車内には安堵(あんど)が広がった。旅程が急きょ変更になったことを知らせようと、何人かは親戚に電話をかけ始めた。 
 
「乗り込んだ途端、私の後ろでドアが閉まった」と女性の声がした。安堵と戸惑いの入り交じった様子で、幾度も同じ言葉を繰り返していた。 【1月24日 WSJ】
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そして今、武漢は人影もなく静まり返っているとのこと。

*****感染恐れ、武漢閑散 外出控える市民「人影ない」 新型肺炎****
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大という脅威に対抗するため、中国政府が湖北省武漢市の「封じ込め」に乗り出した。旧正月の祝福ムードは吹き飛び、行き場を失った住民たちは息をひそめて不安を募らせている。国際機関も中国政府の対応を見据えつつ、対策を検討している。

(中略)通常なら旧正月の「春節」を控え、年越しの買い出し客などでにぎわう時期。だが、電話取材に応じた住民は「街はひっそりしている」と口をそろえた。
 
市内のホテルに勤める40代男性は、予定していた故郷への帰省ができなくなった。「感染が怖いので家族は外出させず自分が買い物に出ている。街中に人影はほぼなく、子連れの人は全く見かけない」と話す。
 
市中心部の大型商業施設は23日からブランド品店などが入る地上階は休業としたが、地下のスーパーは営業を続けた。当局が、物不足の不安を和らげようと食料の販売は休まないよう促しているためだ。ただ、電話に出た従業員は「昨日までは買いだめの客が殺到したが、今日はほとんどいない」と話した。
 
市内の病院は最近、ベッドが足りない状況になっているといい、薬局ではマスクも品薄に。当局はマスクの増産が進められているとし、食品や医療品などは「十分備蓄がある」と呼びかけている。(中略)
 
 ■中国決断、SARSを教訓に
武漢市が鉄道駅や空港を閉鎖するという通告を出したのは、23日午前2時過ぎ。その約4時間前に湖北省政府が開いた会見では、「空港や駅での体温検査を増やし、出入りを厳格に管理する」とするのみだった。

都市全体を事実上封鎖するという決断は、北京の習近平(シーチンピン)指導部が下したとの見方が強まっている。
 
中国当局の対応は20日、習氏が出した「断固として蔓延(まんえん)を抑え込め」との指示で大きく変わった。感染者数が全国規模で続々と発表されるようになったほか、政府の専門家グループも「ヒトからヒトへの感染が認められる」と明言した。
 
背景には、重症急性呼吸器症候群(SARS)のトラウマがある。中国当局は2002年11月に広東省での発症を認識していたが、翌年2月まで公表せずWHOにも報告しなかった。こうした「隠蔽(いんぺい)」が被害を拡大したと批判を浴びた。
 
習指導部は果断な処置で内外の信頼を回復させたい考えだが、感染者は増え続け、25日からは北京の故宮博物院の休館が決まるなど影響は広がる一方だ。
 
大規模な移動制限はそこで暮らす住民には甚大な犠牲を強い、習指導部にとって両刃の剣だ。SNS上では「武漢に残ってどんな解決策があるのか」「医療機関が足りていないのに助かるのか」などと不満が噴出している。

 ■「封じ込め」効果未知数
中国当局による「封じ込め」で感染拡大を食い止めることはできるのか。
 
国際医療福祉大の和田耕治教授は「ある程度は拡大を防げるかもしれないが、物流や市民生活などへの影響が大きい。コストに見合った効果が得られるかわからない。ただし、国として対策をとっていることを対外的に示すことはできる」とする。
 
02~03年に流行したSARSに国立感染症研究所で対策にあたった田口文広・元日本獣医生命科学大教授は「コロナウイルスは、ヒトからヒトへとうつる中で感染力が増していく。初期に食い止めることが重要だ」と指摘。「ウイルスの潜伏期間に気づかずに市外に出てしまった人もいるだろう」とし、効果は限定的とみる。(後略)【1月24日 朝日】
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中国政府にとっては、国民の信頼が得られるかどうかが最大の関心事でしょうが、“ソーシャルサイトの微博には、「食べ物も除菌グッズも足りていない。もっと情報も必要だ。私たちがこの世の終わりのように感じていることを、みんなに理解してほしい」との武漢市民の投稿があった。”【1月24日 AFP】とも。

2003年のSARSのときと異なり、国民の権利意識も上がり、ソーシャルサイトでの情報発信も可能になっている現在、感染拡大防止と並んで信頼回復は難しい課題となっています。

国外の対応も揺れています
“「シンガポールがすべての中国人の入国を拒否」は事実ではない”【1月24日 レコードチャイナ】
“中国人観光客、送還へ=武漢からの464人―フィリピン”【1月24日 時事】

【わずか10日間で1000床の新病院建設】
そのほか、いろんな情報が飛び交っていますが、いかにも“中国的”と思えた記事を一つだけ。

****中国・武漢に1000床の新病院、10日間で建設 新型肺炎治療に特化****
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国当局は流行の中心地・湖北省の武漢市内に、感染者の治療に特化した病院を新設している。建設期間はわずか10日間で、来月3日には病院施設が稼働する見通しだ。中国国営メディアが24日、報じた。
 
新型ウイルスによる肺炎では、これまでに中国国内で少なくとも26人が死亡し、感染者は830人を超えた。流行を食い止めるため、武漢をはじめとする複数の都市で交通遮断措置が取られ、合わせて4100万人が移動制限の影響を受けている。
 
中国中央テレビは、武漢市内の建設現場でショベルカーやトラック数十台が稼働しいている映像を紹介した。新華社通信によると、2万5000平方メートルの敷地にベッド数1000床の病院を建設中だという。
 
建設作業は、新型肺炎の流行が拡大し、対応指定された病院のベッド数の不足が伝えられる中で開始された。
 
中国は2003年に重症急性呼吸器症候群の感染者が急増した際にも、北京郊外にわずか1週間で新病院を建設して対応した例がある。新華社によると、武漢の新病院の施設も、北京の「小湯山医院」をモデルにして建設しているという。 【1月24日 AFP】AFPBB News
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わずか10日間で1000床の新病院・・・さすが中国、びっくりです。
それだけ武漢では患者が溢れている・・・ということでもあるのでしょう。

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