孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「米中新冷戦」の時代 リムランドを制する中国 信頼を失うアメリカ 「フィンランド化」する同盟国

2019-09-02 22:57:44 | 国際情勢

(2014年3月10日 DIAMOND online)

 

【トランプ以後の世界は「米中新冷戦」の時代】

世界に混乱を惹起している“変わり者のトランプ”がいなくなれば、世界秩序は以前に戻るのだろうか?

 

おそらく、そうはならないのでしょう。“トランプ”が出現したのは世の中の流れを受けてのことであり、その流れはトランプ大統領が消えても続くのでしょう。

 

****トランプ以後の世界はどうなるか?****

トランプ米大統領の登場以降、世界の秩序は大きく変化しているように見える。この変化は、トランプが去れば元に戻るようなものなのか、それとも現在起きていることは将来に大きな爪痕を残さずにはいないのか。

 

この問いについて、Russian International Affairs Council(ロシア国際問題評議会)のIvan Timofeev理事は、‘A New Anarchy? Scenarios for World Order Dynamics’と題する8月6日付けの論文で、ロシア人にありがちな「夜郎自大」を排した冷静な分析を示しており、興味深い。

 

Timofeevは、現在の世界の秩序をどう定義するかについては、次の二つの対照的な見方があるとする。

 

第一は、冷戦後の世界は、西側の軍事、経済、そしてモラル上の優位に支えられ、ルールに基づくリベラルな秩序になった、というものである。

 

第二の見方はそれとは逆に、リベラルな世界秩序の実体は、米国とその同盟国による覇権、即ち一極支配であり、今やBRICSや上海協力機構等の台頭によって安定性を脅かされている、とするものである。

 

第二のシナリオの方がロシアにとり好ましいものに思えるが、実際には米国による一極支配の世界の中で、何とか自立性を維持している格好をつけているだけのものに過ぎない。ロシアは自己責任で自分の利益の確保をはからねばならず、誤りのコストは大きいだろう。

 

Timofeevは、上記の二つに加えて更に二つのモデルが議論されている、と指摘する。第三のモデルは、主権国家や古典的な資本主義等の枠組みが崩壊し、万人の万人に対する闘争、つまり混沌とした無極世界が訪れるというものである。

 

米ロ間では、偶発的な武力衝突が核戦争に至ることもあり得る。中国、あるいはロシアによるサイバー・テロが米国で死傷者を出せば、武力報復につながり得る。南シナ海での米中衝突は、核戦争に至り得る。

 

ここでは国家の力というもののあり方、生産のモデル、国際的な枠組み、国際関係等、全面的な再編が行われることになる。

 

第四のモデルは、冷戦時代の米ソに代わる新たな二極構造、つまり、米中対立である。誰が米国の大統領になろうとも、米中対立はなくならないだろう。

 

西側の同盟関係は欧州では再び強固なものとなろうが、アジア諸国は米国につくか中国につくかの選択を迫られるだろう。

 

中ロは軍事的・政治的な同盟関係を樹立するだろう。しかし、それはロシアにとって、経済だけでなく安全保障分野においても中国のジュニア・パートナーに堕する危険性をはらむ。そして米国は中ロの仲を裂き、まずロシアを片付けたうえで中国にとりかかろうとするだろう。

 

この論文は、ポスト・トランプの世界は、従来の国際秩序にそのままの形で戻ることはなく、「万人の万人に対する闘争」あるいは「米中新冷戦」の世界が迫っていることを示唆している。

 

現在の問題は、主要国同士の間で最悪の状況現出を避けるために連絡を取り合う、きちんとしたメカニズムがないことである。大国同士が、相手に圧力をかけては封じ込めようとするばかりなので、事態はスパイラル状に悪くなるばかりである。

 

著者は「変わり者のトランプがいなくなれば、ものごとは以前に戻るだろうと期待している者達もいるが、現在起きていることが何らかの爪痕を残さずにいることはあるまい」と指摘する。

 

これは、日本にとっても重要な認識である。日本は当面の問題を処理していく一方で、主要国との間、或いは国際組織において、これからのあるべき世界の秩序についての戦略的対話を励行し、日本の立場を世界にインプットしていくべきだろう。

 

なお、日本については、この論文は、「日本は米国の同盟国であり続けるだろうが、軍事的・政治的にもっと力をつけるにつれて、これまでの(対米)政策からは徐々に乖離していくだろう」と述べているのみである。ロシア人の大半にとって、アジアは縁遠く、異質でよくわからない地域なのだということをよく示していると言えよう。【9月2日 WEDGE】

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「第四のモデル、冷戦時代の米ソに代わる新たな二極構造、つまり、米中対立」の世界にあっては、“米国は中ロの仲を裂き、まずロシアを片付けたうえで中国にとりかかろうとするだろう”とのことですが、“片付ける”が“手なずける・取り込む”ということであれば、アメリカにとっては賢明な策でしょう

 

冷戦・中ソ対立の時代は、アメリカは中国・ソ連の中を裂き、中国を支援する形でソ連に対抗していました。

 

この「米中対立」の世界にあって、日本はどうするのか?

 

“日本は米国の同盟国であり続けるだろうが”・・・それは、アメリカが従来のようなパワーをアジア世界で発揮できればの話で、そうでなければ日本としても再考を迫られます。

 

中国が国内の政治・経済的な歪みが爆発することで体制崩壊するのか、それとも今後ともその影響力を拡大し続けるのかは知りませんが、これまで何度も「中国崩壊論」が言われながらもそうはなっていない経緯を見ると、今後とも中国の影響力が拡大する方向の方が現実性があるかも。

 

【「スパイクマン時代」の終わり、アメリカ同盟国は「フィンランド化」する?】

ところで、私は初めて目にする名前ですが、(何らかの方法で未来をのぞき見したのではないかと思われるほど)恐ろしく先見の明があったニコラス・スパイクマンという地政学の学者(地政学の祖とも称される著名な学者らしいですが)がいたようです。

 

****アジアに、アメリカに頼れない「フィンランド化」の波が来る****

<アメリカ一極支配によりアジアの安定が当たり前だった時代は去ろうとしている。これからは予見不可能なアジア、中国に従属するアジアの時代になるかもしれない。日本もそうした将来への準備が必要だ>

1942年、米海兵隊が太平洋の島を舞台に日本軍との終わりの見えない激しい戦闘を繰り広げていたころ。オランダ系アメリカ人の地政学者でエール大学の教授だったニコラス・スパイクマンは、アメリカと日本が戦後、中国(当時はアメリカの重要な同盟国だった)に対抗して同盟を組むことになると予言した。

日本はアメリカにとって忠実かつ有用な同盟国になるだろうとスパイクマンは主張した。日本が食糧や石油を輸入できるようにアメリカがシーレーン防衛にあたらなければならないものの、人口の多い日本とは強い通商関係で結ばれることになるというのだ。

一方で中国は、戦後は大陸における強力かつ危険な大国となるから、力の均衡を保つための牽制策が必要になるだろうとスパイクマンは述べた。スパイクマンはまた、アジアにおける日本が欧州におけるイギリスのような存在になると考えた。つまり海を挟んで大陸と対峙するアメリカの同盟国ということだ。

スパイクマンは1943年に癌でこの世を去ったため、この予言が現実のものとなったのをその目で見ることはなかった。実際、彼の予言はアジアという地域を定義するとともにこの地に安定をもたらし、70年以上にわたってアジアに平和と繁栄をもたらすビジョンとなった。

「スパイクマン時代」の終わり
1972年のニクソン訪中を始め、ソ連を牽制するためにアメリカが中国に接近したこともある。それでも日米同盟は、アジアの安定の礎石であり続けた。両国のパートナーシップなくして、大成功を収めたニクソン政権の対中政策も存在し得なかっただろう。

スパイクマンの予言は当時としては非常に先見の明のあるものだったが、米中の貿易戦争が繰り広げられる(そして彼の名を知る人はほとんどいない)今日においても、その意義はまるで失われてはいないように見えるかも知れない。

だが実のところ、スパイクマンの唱えたアジア秩序は崩壊を始めている。この10年間にアジアが大きな変容を遂げたせいだ。

 

変化は徐々に進み、いくつもの国々へと広がっていったため、新しい時代に突入しつつあることを理解している人はほとんどいない。新しい時代の背景にあるのは、国内における不安定要素も強硬さも増した中国と、ひびの入ったアメリカの同盟システム、そして過去数十年間ほどには支配的でなくなった米海軍だ。

香港での危機や日韓関係の悪化は、新たな時代の序章に過ぎない。アジアの安定はもはや当たり前ではなくなっている。

まず第1に、中国はもはや私たちの知っていた中国ではない。かつて毎年2ケタの経済成長を遂げ、リスクを嫌う顔のないテクノクラートの一団(厳しい任期制限によってその行動は抑制されていた)によって支配されていた中国は、今や経済成長率はせいぜい6%で、1人の強硬な独裁者によって支配される国となっている。

景気が減速する一方で、中国経済は熟練度の高い労働者を擁する、より成熟したシステムへと変容しつつある。新しい中流階級は愛国主義的であるとともに要求水準が高い傾向にあり、政府にも高水準のパフォーマンスを求めている。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席はこうした中産階級に対し、中国はナショナリズムを高め、経済改革を推し進めることで、ユーラシア大陸に広がる交易路や港を手中に収める「世界大国」になれると思わせている。

だが習はまた、顔認証といった過去にはなかったさまざまなテクノロジーを用いて国民の行動を監視している。政治的に無傷な状態を維持しつつ、債務過剰で輸出主導型の経済を改革するには、かつてソ連を率いたミハイル・ゴルバチョフ書記長とは逆に、政治的コントロールを緩めるのではなく厳しくしなければならないと習は承知している。

中国海軍は急速に規模を拡大し、アジアのシーレーン全域に展開している。これを背景に、アメリカが過去75年間にわたって一極支配してきた海上軍事秩序は、多極的で不安定なものへと変容していくだろう。

 

この一極支配による海上軍事秩序は、スパイクマンの日米同盟ビジョンの隠れたカギだった。だが多極化はすでに始まっている。

朝鮮半島と日本の対立
具体的には、多くの専門家やメディアは南シナ海と東シナ海における中国海軍の侵犯行為を個別の案件と捉える傾向にあった。だが実際には、これらの事案は西太平洋全体のアメリカの制海権に影響を与えている。

米海兵隊が駐留するオーストラリア北部ダーウィンの99年間の港湾管理権を中国企業が獲得するなど、中国が外国の港湾開発に乗り出す事例も相次いでいる。カンボジアの海岸リゾート、シアヌークビルでの大規模プロジェクトは、南シナ海とインド洋をつなぐ海域をどれくらい中国が手中に収めつつあるかを示している。中国はこの10年間にインド洋における港湾ネットワークを築いてきた。

中国の新たな海洋帝国の姿が明確になってきたのはこのほんの数年のことだが、インド太平洋海域はもはや、米海軍の「庭」ではない。(中略)

もちろん、朝鮮半島ほどアジアのなかで影響の大きい地域はない。トランプと北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が始めた首脳会談はどこか混乱気味だったが、その予想外の結果として北朝鮮と韓国の間で活発な対話が始まった。

この南北対話はそれ自体の論理と方向性があり、浮き沈みもあるだろうが、いずれは北朝鮮と韓国の平和条約締結、そして最終的には2万3000人を超える在韓米軍の撤退に向かうだろう。

 

そんなことはありえない、とはいえない。南北ベトナム、東西ドイツ、南北イエメンの例からしても、20世紀に分断された国家は統一に向かう傾向がある。これが朝鮮半島で起こった場合、最も割をくうのは日本だ。

日本の安全保障上は、朝鮮半島は分断されている必要がある。第2次大戦の遺恨はもちろん、1910年から45年までの植民地化の歴史ゆえに、統一された朝鮮はおのずと反日国家になると考えられるからだ。

日韓間の貿易、安全保障関係が、第2次大戦中の徴用工問題と慰安婦問題と相まって悪化している最近の状況は、朝鮮半島が統一された暁にいずれ日本との間で噴出するであろう政治的緊張の厳しさをうかがわせる。

トランプはアジア全体へのビジョンを明確にせずに、アジア各国に対して個別にゼロサムゲーム的な二国間主義の交渉を行う政策を選び、アメリカの同盟国同士を敵対させかねないパンドラの箱を開けてしまった。こうなると最後に勝つのは中国だ。

中国は着実に空・海軍力を増強しており、いずれその戦力は東シナ海における衝突で日本をしのぐとみられる一方、北東アジアの駐留米軍の兵力は減少する可能性がある。日本は今、そんな未来に備えなければならない。

中国は現在好機をうかがっている段階で、これまでのところは、非常に有能な日本の海上自衛隊と持続的に対立する危険を冒すことを望んでいない。

こうしたことはすべて、アメリカの外交および安全保障政策の信頼性が、第2次大戦以来最低になった状態で発生している。意思決定の一貫性が崩れ去ったことで、アジアだけでなく世界的に、アメリカの力に対する信頼は損なわれている。

大統領就任初期にTPP(環太平洋経済連携協定)の離脱を決めたトランプは、高性能兵器がアジア全体に拡散しようとしている時に、同盟関係の構築に背を向け、イラン核合意から離脱しINF全廃条約を破棄するなど、軍事力の抑制に必要な国際管理の枠組みを弱体化させた。

アメリカと同盟関係にあるアジアの国々との信頼と暗黙の理解も著しく損なわれた。信頼性は、大国や指導者にとって最も重要なものだ。

インドは中立を選ぶ
(中略)地理的に中国に近すぎて安心できないインドは、最終的には2つの大国間のバランスをとる非同盟戦略を再発見する必要があるかもしれない。(中略)


トランプ大統領の出現は、アメリカ社会、文化、経済が長い時間をかけて変化してきた結果だ。超大国であるアメリカの国内状況は最終的に全世界に影響を及ぼすが、中国もそうだ。テクノロジーの助けを借りた習の強権的な国内政策が、今後10年ほどの間に中産階級の反乱を防ぐことができなくなれば、中国が海外で展開している巨大構想の多くが疑問視され、内部から揺らぐこともあるかもしれない。

日本が「フィンランド化」する
しかし、それは現時点では考えにくいシナリオだ。より可能性が高いのは、中国がインド太平洋とユーラシア全域に軍事力と市場を拡大し続ける一方で、アメリカの第2次大戦後の同盟国に対する責任感が減退し続けることだ。

 

アジアにおいてはそれが「フィンランド化」、すなわち民主主義と資本主義を維持しながら旧ソ連に従属したフィンランドと同じように中国に従属していく動きにつながる。

東は日本から南はオーストラリアまで、アジア地域のアメリカの同盟国は、冷戦中のフィンランドが旧ソ連に接近したように、徐々に中国に近づいていく可能性がある。

 

アメリカの同盟国は、西太平洋地域において地理的、人口統計的、経済的に超大国である中国と仲良くする以外に選択肢はなくなるだろう。

そうなれば、「スパイクマンの世界」の終わりが見える。【9月2日 Newsweek】
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【ウィキペディア】によれば、スパイクマンは「リムランドを制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界の運命を制する。」と主張したそうです。

 

リムランドとは、北西ヨーロッパから中東インドシナ半島までの東南アジア中国大陸、ユーラシア大陸東部に至るユーラシアの沿岸地帯を指す地政学用語です。

 

スパイクマンはアメリカがリムランドに対して、その力を投影させ、ソ連を中心とする他の勢力の浸透を阻止させ、グローバル勢力均衡を図るよう提言しました。

 

しかし今、アメリカは中東・アフガニスタンから撤退でその存在感を薄め、同盟国との信頼関係を失いつつあります。

 

一方で、まさにスパイクマンの言う「リムランド」を席巻しつつあるのが中国の進める「一帯一路」です。

神業的な先見の明があったスパイクマンの主張に従えば、「リムランド」を制する中国は、やがては世界を・・・。

 

スパイクマンが予見して、まさにそのように実現した「スパイクマンの世界」は崩壊し、Timofeevの言う「第四のモデル」で中国が有利に展開、アメリカは責任感を放棄し信頼を失う世界が出現する・・・そういう時代にあっては、日本を含む「アメリカ同盟国」は「フィンランド化」を検討する必要がありそうです。

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