孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コロンビア  和平合意した左翼ゲリラ組織FARCの一部メンバー、武装闘争再開を宣言

2019-09-05 22:32:27 | ラテンアメリカ

(戦闘再開を宣言する、イバン・マルケス氏(中央)らコロンビアの元左翼ゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC)」のメンバーたち。ユーチューブに投稿された動画より(撮影日および場所不明、2019年8月29日公開)【8月29日 AFP】)

 

【同調者は一部だが、もとからの分離派メンバーなどとの合流で戦闘再燃の懸念も】

2016年のノーベル平和賞が、左翼ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC)と4年間交渉を重ねた末、2016年6月に停戦合意に達し、50年余りの内戦を終わらせたことを評価し、コロンビアのサントス大統領(当時)に授与されたことは周知のところです。

 

ただ当時から、FARCメンバーが人質の拉致や殺人への責任を問われずに議会に議席を得ることに反発し、FARCに譲歩し過ぎだと、ウリベ前大統領を筆頭に停戦合意に反対する国民は多く、2016年10月に行われた停戦合意をめぐる国民投票では、反対票が50.24%と多数を占めました。

 

ノーベル平和賞授与は、こうした反対派の圧力で和平交渉がとん挫しないように、サントス大統領を後押しすることが狙いでもありました。

 

その後も、FARCへの国民批判は根強く、2018年6月に行われた大統領選挙では、FARCとの和平合意の見直しを訴えるイバン・ドゥケ前上院議員(41)が当選しました。

 

ドゥケ氏は「和平合意を粉々にはしない。だが、正義が行き渡る国を求める、みなさんの意見を前に進めると、勝利宣言で改めて和平合意の見直しを約束しました。

 

上記のように、逆風の中でスタートした感があるFARCとの和平合意ですが、不満は国民側だけでなく、FARC側にもあって、ここにきて更に難しい問題が。

 

****コロンビア一部ゲリラが闘争再開 和平合意守られていないと主張*****

南米コロンビアで2016年に政府との和平合意に応じた左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)の元幹部司令官が29日、再び武装して闘争を始めると宣言した。

 

ドゥケ大統領が元メンバーの身元の安全確保など和平合意を十分に履行していないと主張している。半世紀以上に及ぶ内戦を終わらせた和平への影響が懸念されるが、同調者は一部に限られる見通しだ。

 

ネットに投稿されたビデオには元FARCナンバー2で和平合意交渉担当者のイバン・マルケス氏が約20人のメンバーと登場した。

 

マルケス氏はFARCの武装解除後、「150人の元メンバーと数百人の左翼活動家が殺された」とし、防止策を取っていないと政府を非難。「闘争は続く。これが合意の裏切りに対する答えだ」と述べた。

 

マルケス氏は昨年、親族が麻薬取引容疑で逮捕され、米国に送還されて以降、行方をくらましていた。

 

FARCから生まれ変わった政党「人民革命代替勢力」のロンドニョ党首(元FARC最高司令官)は「元メンバーの90%以上が和平プロセスに関与している。一歩も後戻りしない」とツイート。武装解除に応じ、社会復帰を目指す約8000人の大半は同調しないと強調した。

 

一方、そもそも武装解除に応じなかった者に加え、その後の加入者をあわせ、FARCの離脱メンバーは約2500人にのぼり、ゲリラ活動を続けているとみられている。

 

これらのメンバーがマルケス氏に同調する動きが広がれば、戦闘が再燃する恐れもある。

 

ドゥケ氏はテレビ演説で「マルケス氏ら犯罪者を追跡する」と述べ、特別な捜査部隊の創設を命じたと発表。拘束につながる情報提供者に約86万ドル(約9200万円)の懸賞金を与えると明かし、影響を最小限に抑えようと躍起だ。【8月30日 毎日】

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【闘争再開宣言グループは、ELNとの同盟関係模索も主張】

コロンビアではいまだに左翼ゲリラによる殺害・誘拐は日常的に発生していますが、上記の一部ゲリラの闘争再開宣言直後にも市長選立候補女性が襲撃される事件が起きており、FARC離脱グループ(もとから武装解除に応じていなかったグループか)の関与が取り沙汰されています。

 

****コロンビア、政治家の車両襲撃され6人死亡 FARC離脱した地元グループの犯行か****

コロンビア南西部カウカ州で1日夜、同州スアレス市の市長選に立候補していた女性候補と市議会議員候補が乗った車両が襲撃され、この2人を含む6人が死亡した。当局者が2日明らかにした。スアレス市一帯では、麻薬密売と違法採掘をめぐる暴力が問題になっている。

 

同州当局者によると、10月のスアレス市長選に立候補していたカリナ・ガルシア氏とその母親、同市市議会議員候補ら6人は装甲を施した乗用車に乗って移動していたが、長射程武器で襲撃され、さらに車に火を放たれた。ガルシア氏の父親によると、同氏は他の候補の支持者らから脅迫を受けていたという。

 

コロンビア政府のミゲル・セバジョス和平高等弁務官は今回の襲撃で、2016年に政府との和平協定に合意した元左翼ゲリラ組織、コロンビア革命軍から離脱した地元グループのリーダーを非難している。

 

FARCの元メンバーの大半は政府との和平合意を受け入れたものの、交渉の先頭に立ったイバン・マルケス氏ら一部の幹部は先週、政府が協定を順守していないとして武装闘争の再開を宣言した。 【9月3日 AFP】

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前出【毎日】にあるように、当初から武装解除に応じなかったFARCの離脱メンバー(FARC分離派)が多数存在しており、コロンビア政府と交渉を続けながらもゲリラ活動をやめていない共産主義ゲリラ組織国民解放軍(ELN)も存在しています。事件が起きたカウカ県ではこのELNとFARC分離派が活発に活動しており、麻薬組織と激しい縄張り争いを繰り広げているとのこと。

 

闘争再開宣言をしたグループは、ELNとの同盟関係模索も主張しており,コロンビア政府はELNをけん制しています。

 

****ELNがFarc分離派と同盟を結ぶのであれば、和平交渉の扉を閉ざし鍵を海に投げ捨てる コロンビア政府****

「Farc分離派とELNの同盟が確認された場合、深刻な事態を招くことになるだろう。」とコロンビア政府高等平和委員のミゲル セバジョスは述べ、「犯罪組織・麻薬組織と同盟を結ぶELNとの対話の可能性は完全に失われる。」と強調しています。

 

Farcの元ナンバー2でありFarcの和平交渉団団長であったイバン マルケスと元Farcボス数人がYoutubeを通じ、武装闘争の再開を宣言しELNとの同盟関係を模索すると宣言しています。

 

先週、チョコ県で活発に活動するELN戦線のボス通称ウリエルが、Farcの元大幹部数人が武装闘争に復帰したことを歓迎すると表明しています。(後略)【9月5日 音の谷ラテンアメリカニュース

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コロンビア政府はFARC分離派への掃討作戦を行っています。

 

****Farc分離派ゲリラ9人を殺害した空爆作戦はマルケスに対するメッセージ コロンビア大統領****

コロンビア国防相ギジェルモ ボテロはFarc分離派ゲリラ9人を空爆作戦により殺害したと発表し、「投降か敗北しかないことを犯罪者たちに警告する。」と強調しています。

 

コロンビア大統領イバン ドゥケは空爆作戦について、コロンビア政府からイバン マルケスに対するメッセージであり、死亡したゲリラの中には麻薬犯罪・誘拐・恐喝などの犯罪行為を繰り返すFarc分離派ゲリラグループのボス通称ヒルダルド クチョが含まれていると明らかにしています。(中略)

 

和平合意を受け入れず武装闘争を継続しているFarc分離派は24グループ1800人近く存在しており、麻薬犯罪・鉱物違法採掘などを資金源に活動しています。今現在イバン マルケスが率いる新たなゲリラ組織との関連は不明です。【8月31日 音の谷ラテンアメリカニュース

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【隣国ベネズエラ・マドゥロ政権の左翼ゲリラ支援への批判も より重大な問題はベネズエラ難民の存在】

また、コロンビア政府は、隣国べネズエラの左翼マドゥロ政権のFARC分離派への支援を批判しています。

 

****マドゥロがFarcの再武装化を支援している コロンビア高等平和委員が言明****

コロンビア政府高等平和委員のミゲル セバジョスは、和平合意に反して武装闘争の再開を宣言したイバン マルケスをニコラス マドゥロ独裁政権が支援しているのは明らかであると語っています。

 

「最高幹部たちがベネスエラに潜伏しているELNをイバン マルケスが頼っていることからも、ニコラス マドゥロがELNだけでなく、新たな武装組織を支援しているのは明らかです。」とセバジョスはワシントンで行った記者会見で述べています。(中略)

 

セバジョスによれば、この(武装闘争再開宣言)動画が撮影されたのはベネスエラです。

 

「セニョール イバン マルケスが同盟を発表した国民解放軍(ELN)の47%近くがベネスエラ領にいることが分かっています。」とセバジョスは指摘しています。【8月30日 音の谷ラテンアメリカニュース

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コロンビア左翼ゲリラとベネズエラの関係は、チャベス-ウリベ時代からのもので、目新しい話ではありませんが、コロンビアにとってもっと大きな問題は、140万人と言われる大量のベネズエラ難民の存在ではないでしょうか。(混乱が続くベネズエラの方も、今はコロンビアに深く関与する余裕はないでしょうし)

 

****ベネスエラ難民危機は地域的問題ではなく、世界的問題となっている 国連Acnur*****

 

 国連難民高等弁務官事務所(Acnur)コロンビアの副代表Yukiko Iriyamaは、ベネスエラ難民危機は地域の問題から国際的問題へと拡大したと述べています。

 

「これまで以上に困難な状況でベネスエラ難民がやってきており、今まで以上の人道支援が必要となっています。」とAcnurコロンビアの副代表は語っています。

 

妊婦、栄養失調の子供、障碍者などを含む多くの難民がコロンビアにやってきており、コロンビアの負担は大きくなっているとYukiko Iriyamaは強調しています。現在コロンビアには140万人を超えるベネスエラ人が滞在しています。

 

コロンビアに流入するベネスエラ人は増加しており、エクアドルの人道ビザの効力があるうちにコロンビアを経由してエクアドルに入るベネスエラ人も多くいるとIriyamaは指摘しています。

 

コロンビア政府は8月半ば時点で9600万ドルの国際支援を受け取っていますが、国連が今年必要と見積もっている金額の30%に過ぎません。

 

ベネスエラからここ数年で430万人が国外に逃亡しており、そのうちの80%がラテンアメリカとカリブ諸国に滞在しているとAcnurは報告しています。

 

最大はコロンビアの140万人で、次いでペルー約85万3400人、エクアドル33万400人、チリ28万8200人、ブラジル17万8600人、アルゼンチン14万5000人となっています。【8月28日 音の谷ラテンアメリカニュース

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