
(制裁決議後、握手を交わす米国のヘイリー国連大使(左端)と、中国の劉結一国連大使(右端)【9月13日 朝日】)
【“世界から孤立”はしていなかった北朝鮮】
北朝鮮による相次ぐミサイル・核実験強行を受けて、ようやく問題が日本、韓国、アメリカ、中国、ロシアという従来の関係国の範囲を超えて世界的な関心事となってきたようです。
****北朝鮮大使を国外追放へ=核ミサイル「日韓に脅威」─メキシコ****
メキシコ政府は7日、北朝鮮大使を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)として72時間以内に国外追放すると発表した。北朝鮮の核・ミサイル開発活動を理由にしている。核・ミサイル開発など北朝鮮の挑発をめぐり北朝鮮大使が追放されるのは極めて異例。【9月8日 時事】
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****ペルーも北朝鮮大使追放=核・ミサイル開発理由****
ペルー政府は11日、北朝鮮の核・ミサイル開発を理由に、同国のキム・ハクチョル駐ペルー大使を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)に指定し、5日以内に国外退去するよう求めた。最近の北朝鮮の挑発的な行動をめぐり大使が追放されるのは、メキシコに続き2例目。
中南米主要2カ国が追放に動いたことで、ブラジル、チリなども足並みをそろえる公算が大きくなった。欧州などでも大使追放の動きが広がれば、北朝鮮の孤立は一層深まりそうだ。(後略)【9月12日 時事】
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独仏からも北朝鮮問題への関与が言及されています。
****北朝鮮が、フランス大統領の表明に反応****
北朝鮮外務省のある関係者が、北朝鮮の核活動に関するフランスのマクロン大統領の発言に反応し、「核兵器が悪いものであるなら、フランスが核兵器を廃棄すべきだ」と語りました。
IRIB通信によりますと、マクロン大統領は北朝鮮による6回目の核実験の後、早急に北朝鮮に対する措置を講じ、同国の行動に対するまとまった明白な回答を示すよう、国連とEUに要請しています。
マクロン大統領のこうしたに発言に反応し、北朝鮮外務省欧州局のリ・トクソン副局長は同国の核計画を擁護しました。
リ副局長は、「フランスも、核爆弾の製造に対するアメリカの強い反対を押し切り、核兵器の開発に努め、これを獲得した後に、フランスが核兵器なしには自国の主権を守れないと明言した」と述べました。
また、「核兵器の保有が本当に悪いことであれば、何の脅威にも直面していないフランスはなぜ核兵器を廃棄しないのか」としています。
さらに、「北朝鮮の核兵器はアメリカの核の脅威や行過ぎた行動に対する抑止力であり、ヨーロッパを脅かしうるといわれるのは、実にこっけいである」と述べました。
9日土曜、中国の習近平国家主席は、フランスのマクロン大統領との電話会談で、「フランスが北朝鮮の6カ国協議の再開で建設的な役割を果たすよう期待する」と語っています。【9月10日 Pars Today】
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****独首相「交渉参加求められたらイエスと言う」北朝鮮問題****
ドイツのメルケル首相は10日付の独紙とのインタビューで、核実験を行った北朝鮮の問題に関連し「ドイツは積極的な役割を果たす用意がある」と述べた。
同国は北朝鮮と外交関係があり、2008年には金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の父親の故金正日(キムジョンイル)氏を治療するため、医師を派遣するなどした経緯がある。(後略)【9月11日 朝日】
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中南米諸国の北朝鮮大使追放の動きについては、「北朝鮮は、少なくともこれまでは“世界から孤立”している訳でもなかった・・・」というのが、個人的な率直な印象です。
日本は、拉致問題を含めて北朝鮮とは長年争っており、“まともなつきあいなどできない、とんでもない国だ”というのが当然の常識になっていますが、世界的に見ると、ASEAN各国を含めて多くの国が北朝鮮との関係を有しています。
北朝鮮と国交がないのは、日本を含めて35ヶ国・地域ですが、国交を有しているのは164ヵ国・地域、世界の約80%だそうです。
また、中ロだけでなく多くの国で北朝鮮労働者が外貨獲得のために働かされています。
国連等の制裁下にあっても、北朝鮮が核・ミサイル開発をここまで継続できたのも、単に中国の制裁が緩かった云々だけでなく、世界の多くの国々との関係があって可能となったのでしょう。
そうした中にあっての中南米の動きは、アメリカの働きかけがあるのでしょうか。
フランスと北朝鮮の応酬はネットでも話題になったようで、北朝鮮の言い分にも“一分の理”があるというか、米ロ中英仏印パなどの核はよくて、どうして北朝鮮・イランの核は悪いのか?という基本的な問題に通じます。
その話をしだすと、現実問題への対応がとれなくもなりますので(特に、現実の北朝鮮による核の脅威にさらされている日本などにとっては)、今するつもりもありませんが、本来は核をめぐる問題が抱える基本的な矛盾でもあります。
いずれにしても、北朝鮮に対する締め付けは、11日に採択した北朝鮮に対する国連の追加制裁決議や国際的関心の高まりもあって、今後は従来以上に厳しくなります。
もちろん完全には封じ込められず、多くの「抜け道」はあるにしても。
北朝鮮としても、“どうするのか”という決断を迫られます。
【「時間切れ」が迫るなかで、国内情勢絡みの米中の対応】
一方のアメリカ・中国の対応も、次第に限界点に近づいています。
****トランプ米大統領 「またも世界を侮辱」と怒り 米政権、対北制裁の厳格履行へ国際社会と連携 国連総会で訴え****
ランプ米大統領は15日、ワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地で演説し、日本上空を通過する弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮について「またしても近隣諸国と世界全体を完全に侮辱した」と非難した。
トランプ氏はその上で、「北朝鮮の脅威に対処するための(軍事的)選択肢は効果的かつ圧倒的だ」と述べ、米国と同盟諸国の防衛に向けた決意を強調した。
また、マクマスター米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は同日、トランプ氏の演説に先立ちホワイトハウスで記者会見し、北朝鮮への対応で「時間切れが近づきつつある」と述べ、国連安全保障理事会が11日に採択した北朝鮮に対する追加制裁決議の「厳格な履行」を急ぐべきだと強調した。
マクマスター氏は、北朝鮮に対する「現段階では選ばないが、軍事的選択肢はある」とした上で、国際社会に対して「戦争行為に至らない全ての措置を講じるべきだ」と指摘。
トランプ大統領が19日からの国連総会の一般討論の場などを通じて各国に対北朝鮮での連携を呼びかけていくことを明らかにした。
記者会見に同席したヘイリー国連大使も「先の制裁決議で北朝鮮に対する貿易の9割と石油の3割が遮断される」と米国主導の決議の成果を強調した上で、「挑発的で無謀な行為を繰り返す」北朝鮮に対して「あらゆる外交的選択肢で圧力をかける」と言明した。
一方、米国防総省のマニング報道部長は15日、北朝鮮への対応は「今なお外交的取り組みが主導だ」と記者団に指摘しつつ、「北朝鮮からのあらゆる攻撃や挑発行為から米国や同盟国を防衛する態勢を維持している」と強調した。【9月16日 産経】
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アメリカ・トランプ政権は、国内的行き詰まりを、このところは民主党と債務上限規定を3カ月間凍結することで合意したり、国境警備の強化とともに、幼少時に米国に不法入国した若者に対し滞在資格を与えることで合意したりろ、民主党と手を組むような動きをみせる形で切り抜けようとの変化が見られます。
もともと共和党本流とは異なる立場だったトランプ大統領ですし、共和党内部が割れている状況で、共和党との関係だけでは議会対策を乗り切れないということで、トランプ氏得意の“取引”でしょう。
この試みが裏目に出て、共和党との関係悪化だけでなく、コアな支持者の離反を招く(民主党支持層はどう転んでもトランプ大統領を嫌悪し続けます)・・・・という状況になれば、局面打開に残された手は外交、もっとはっきり言えば“戦争を始めることで国論を統一する”ことぐらいしかなくなります。
中国の方でも、変化が見られるとの報道があります。
****中国は北朝鮮に侵攻して核兵器を差し押さえるか?****
<少し前まで中国は北朝鮮からの難民を恐れて手をこまねいているように見えたが、北朝鮮の核問題が新たな段階に入った今、新たな対応の可能性が浮かび上がってきた>
北朝鮮と長らく同盟関係を維持してきた中国は、これまで核問題にあたっても北朝鮮への圧力を強化することには及び腰だった。しかし北朝鮮が今月3日に核実験を強行し、朝鮮半島有事の危機がいっそう深まる今、中国の姿勢に変化が生じている。
中国の対北朝鮮政策は別次元にシフトしている――ジョージタウン大学外交政策大学院のオリアナ・マストロ准教授(中国軍事・外交政策)が、アメリカ平和研究所(USIP)のサイト上で最新分析を公表した。
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1)中国はもはや、金正恩体制を維持することにはこだわっていない。過去3年程の中国の習近平国家主席の発言に注目すると、長期的には朝鮮半島の統一を公然と支持していることに驚かされる。最終的には北朝鮮が(もちろん平和裏にだが)なくなることも想定している。
世論調査などを見ても、中国国民は概して中国が北朝鮮と距離を置くことに賛成している。
2)これまで朝鮮半島有事の際の中国の最大の関心事は、北朝鮮から国境を越えて逃れてくる難民にどう対処するかだったが、現在はそれに北朝鮮の核兵器をどうするかという問題が加わった。
中国人民解放軍(PLA)の軍事力は過去10年の間に大幅に改善され、それに伴って朝鮮半島有事の際の行動計画も大幅に拡大したものと考えられる。北朝鮮の核兵器や核燃料施設を差し押さえることもPLAの計画には含まれているだろう。
中国が北朝鮮の核兵器を接収する目的は、北朝鮮に核兵器を使用させないためだけでなく、米日韓に核兵器を攻撃させないためでもある。仮にそうなった場合には、国境を越えて放射能汚染が中国にも及ぶからだ。
3)PLAが金正恩体制を防衛するために戦うことは考えにくい。中国政府高官も朝鮮半島有事への介入を求められるとは考えていない。
むしろPLAが軍事介入すれば、朝鮮人民軍から反撃を受けるかもしれない。しかし、朝鮮人民軍は米韓連合軍と対峙して南部に集結している。少なくともその点では中国側に有利だ。
4)しかし、朝鮮半島有事後の北朝鮮の管理を強化するために、中国が北朝鮮に侵攻する可能性はある。
中国が自国にとって都合の良い形で朝鮮半島統一を望むのは当然のことだ。北朝鮮が不安定な状態に陥ったり、北朝鮮にアメリカの影響力が広がったりするのは中国にとって最悪の事態だ。
とは言え、最終手段である軍事侵攻以前に、中国は北朝鮮への圧力をかける努力は続けるだろう。
5)現状で、朝鮮半島有事への対応計画を公にすることは、中国にとってはまだあまりにデリケート過ぎる。
今後アメリカと中国は、核問題に関する民間訓練や技術交換、または国際的な核関連の保安訓練への参加など、間接的な協力関係を始めることはできる。また中国の国家規模の核兵器への対応訓練に、アメリカの専門家がオブザーバー参加するといった方法もある。
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つまりこれ以上、金正恩の挑発がエスカレートすれば、これまでの予測とはかなり違った反応を中国が見せることも考えられるということだ。【9月15日 Newsweek】
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****「北朝鮮の崩壊に備えよ」 中国で有事対応説いた論文が注目****
中国の習近平政権が北朝鮮の政権崩壊を容認しない立場を取る中、中国の著名な国際政治学者が「北朝鮮の崩壊に備え、中国は米国や韓国と緊急対応策の調整を始めるべきだ」と提言し、話題となっている。
提言したのは賈慶国・北京大学国際関係学院院長で、論文「北朝鮮の最悪の事態に備えるときだ」を発表した。賈氏は中国の国政助言機関、全国政治協商会議(政協)の常務委員も務めている。
賈氏はまず、米国と韓国は北朝鮮の緊急事態時の対応について中国との協議を望んできたが、中国が応じてこなかったと指摘。戦争勃発の兆候がみられる以上、米韓との協議を始めるべきだと主張した。
調整すべき内容として、(1)北朝鮮の核の管理(2)難民問題のほか、北朝鮮国内の秩序をどう回復するのかなどを挙げた。核の管理については、中国がその役割を担っても、核不拡散の観点から米国は反対しないだろうと予測。逆に、米軍が北朝鮮領に入ることを中国は受け入れないと指摘した。
難民問題では、大量の難民が中国領に流入するのを防ぐため、人民解放軍が北朝鮮領内で安全地帯を設置する案を示した。
北朝鮮国内の秩序回復に関しては、韓国や国連の部隊が進駐する可能性を指摘しながら、米国の進駐には中国が反対するとした。
賈氏の論文をめぐっては「中国国内でXデーに向けた準備が進んでいる表れではないか」(外交筋)との見方もある。
こうした中、北京市と天津市は16日、防空警報の試験を実施する。北京市ではこの10年で5回目。市内各所でサイレンが3分間鳴り響く。朝鮮半島の危機が高まっている時期だけに、有事に備えた訓練の一環と見る向きもある。【9月15日 産経】
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これ以上、北朝鮮の勝手は容認できないということで、事態が急変しアメリカの影響力が北に及ぶような事態になるぐらいなら、中国が主体的に動いて北の核の管理を含めて、中国の手で事態を収拾する・・・との発想です。
習近平国家主席にしても、トランプ大統領同様、最大の関心事は国内問題、もっとはっきり言えば国内での権力闘争でしょう。
江沢民派や共青団派との激しい権力闘争を繰り広げ、自身への権力集中に躍起になっている習近平氏にとって、北朝鮮問題で上記のような踏み込んだ行動にうって出るのは、トランプ大統領以上に危険な賭けです。
もつれたら、自身の権力基盤が揺らぎます。
中国・習近平主席が北朝鮮に介入して、統治回復・核管理を中国の手で行うという選択は、国内事情がそのような選択をせざるを得ないほどよほど切迫するか、あるいはアメリカの対応が切迫するか・・・・そいう事態でなったときでしょう。
北朝鮮にしても、アメリカ・中国にしても、ぎりぎりの選択を迫られるところへ向けて、「時間切れ」が迫っています。
個人的には、朝鮮半島有事という事態になれば、日本は少なからぬ被害を受けますが、将来に禍根を残し、核武装論など日本自体の変質が進むぐらいなら、この際、犠牲は伴っても白黒の決着をはっきりつけた方が・・・先送りすれば、問題は厄介になるだけだ・・・という思いも強くなってきています。
挑発を繰り返す北朝鮮への苛立ちでしょうか。自分の頭の上にミサイルは落ちてこないだろうという、根拠のない楽観論によるものでもありますが。
もちろん、多大な犠牲を出すことが容認されるのか・・・という、まっとうな疑問もありますし、現実問題としては、なかなか思い切った行動には各国とも出られないので、結局“6各国協議”の焼き直し版か、北朝鮮とアメリカの直接協議で、問題を先送りする形で曖昧決着が図られるのだろう・・・という思いも。
なんとも歯切れの悪い言い様ですが・・・。
決定を下す立場の国家指導者は大変です。