孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  4月1日の「自由で公正な選挙」を目指した取り組み

2012-03-13 23:25:36 | ミャンマー

(街角で売られているスー・チーさんのポスター “flickr”より By wisawin http://www.flickr.com/photos/26978279@N05/6920487259/ )

衰えぬスー・チー人気
4月1日に行われるミャンマー補欠選挙での、スー・チーさんの人気は依然衰えぬものがあるようです。

****ミャンマー補欠選挙 スー・チーさん旋風****
ミャンマーでは、4月1日に民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チーさんも参加して、国会の補欠選挙が行われる。スー・チーさんは積極的に地方遊説を行い、旋風を巻き起こしている。

ミャンマーの民主化を目指す政党・NLD(=国民民主連盟)を率いるスー・チーさんは、毎週のように地方遊説を行っている。10日、スー・チーさんは自宅のある最大都市・ヤンゴンから300キロ離れたモン州へ向かった。道中の集落ごとに大歓迎され、通常約6時間の道のりが倍の12時間近くかかって、州都・モーラミャインに到着した。11日の演説会は、中心部の会場の使用許可が当局から下りず、郊外のグラウンドを急きょ拡張して行われたが、それでも1万人以上が詰めかけた。

NLDは、スー・チーさん人気で勢いを増しながら、選挙戦の終盤に突入しようとしている。【3月12日 NNN】
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補選は、上下両院と地方議会の計48議席を対象に行われますが、スー・チーさん率いる国民民主連盟(NLD)は、下院に立候補しているスー・チーさん自身を含め、全選挙区に候補者を立てています。
このNLDがどれだけ議席を獲得するかが注目されています。
個人的には、全議席独占といった形で“勝ちすぎる”のも、政権側の保守派の反発がありそうで、少し怖い感もあります。

国際的に自由で公正な選挙をアピールしたいテイン・セイン政権側は、民主化運動の象徴であるスー・チーさんには随分気を使っているようで、直接的な選挙妨害はなく、12日には下院議長の招待で、スー・チーさんは首都ネピドーで行われている下院の議事を1時間にわたって見学し、下院議長、上院議長とも会談しています。【3月13日 読売より】

【「人々が自由で安全に生きることができる社会を築きたい」】
当選が確実とされるスー・チーさんについては、当選後の閣僚への起用の話も出ていますが、あくまでも議員として活動で民主化努力を強めていく考えを示しています。

****スーチーさん単独会見:議員活動に意欲「国民に自由を****
ミャンマーの民主化運動指導者アウンサンスーチーさん(66)は8日、最大都市ヤンゴンの自宅で毎日新聞との単独会見に応じた。4月1日の国会議員補選で選出されれば「人々が自由で安全に生きることができる社会を築きたい」と述べ、議員の立場を生かして現実の政治で民主化努力を強めていく考えを示した。

スーチーさんは「私が言う自由とは、恐怖からの自由と欠乏からの自由を意味する」と話した。現状について「軍に支配された見せかけの民主主義だ」と述べ、真の民主化への具体的目標として(1)法の支配(2)少数民族との和解(3)憲法改正--を挙げた。

選挙後に閣僚入りを要請された場合、受諾の可能性があるかについては「現憲法では、閣僚になれば国会議員を辞めなければならない。私は国会を去るために国会議員になる努力をしているわけではない」と否定的な考えを示し、野党勢力を率いていく方針を示唆した。

選挙の現状に関しては「死んだ人や子供の名前が有権者名簿に記載されているなどの不正が見られ、選管に改善を求めている」と公正の確保に懸念を示した。

一方、日本政府が、選挙が公正に実施されればミャンマーへの政府開発援助(ODA)の円借款を再開する方針であることには「少し性急過ぎると思う。援助は歓迎するが、透明性の確保が必要だ」と注文をつけた。
また、日本政府からの訪日要請について「いつごろ外国訪問できるかは補選が終わった後に見通しをつけたい」と話し、具体的な時期は不明ながら前向きな考えを示した。【3月9日 毎日】
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【「建国の父」の娘
スー・チーさんの人気の背景には、民主化運動に対する強固な信念を貫いていることが当然ありますが、それ以外に、彼女が建国の父アウン・サン将軍の娘であることも影響しています。

****スー・チーさんの選挙戦 「建国の父」と二人三脚****
・・・・「大学通り」に沿った自宅の大きな鉄の扉の上には、「国民の顔を見よ」「迅速に決断、行動せよ」という、父アウン・サン将軍の言葉が写真とともに掲げられている。

アウン・サン将軍といえば、英国からの独立に生涯をささげ、1948年1月の独立を目前にして、32歳の若さで凶弾に倒れた「建国の父」だ。地方へ行くと、スー・チーさんと父親の写真が並ぶ選挙ポスターも目につく。スー・チーさんの支持者には、「将軍の娘だから支持する」という人も少なくない。
スー・チーさんにとり選挙戦は、父親との二人三脚なのかもしれない。【3月8日 産経】
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スー・チーさんの対立候補として政権与党「連邦団結発展党」(USDP)から立候補している元軍医、ソウミン氏(49)は、「今後、軍とスー・チーさんの関係は?」という問いに、「アウンサン将軍は国軍の父でもあり、長女のスー・チーさんと軍はいわば兄弟姉妹だ。協力して国をよくしていくべきだ。」と答えています。【3月12日 毎日より】
特に、政権側、軍部にとっては、「建国の父」の娘という立場は、スー・チーさんとの協力関係を作っていく上で影響力がありそうです。

問題点はあるものの、目に見える圧力はない
政権側からの直接的な選挙妨害はあまりないようですが、今回選挙の公正さに問題がない訳ではありません。

****ミャンマー「公正な選挙」黄信号 政見放送を事前検閲、有権者名簿に死者****
「自由、公正」なものとなるかどうか、国際社会が注視するミャンマーの連邦議会補欠選挙(4月1日投票)は、各党代表による政見放送の演説草稿が事前検閲により、部分的に削除、修正されるなど黄信号がともっている。

政見放送は録画で、各党は演説草稿を事前に情報省に提出しなければならない。14日に政見放送が予定される国民民主連盟(NLD)の党首、アウン・サン・スー・チーさんは「軍政は法を、国民を抑圧するために繰り返し利用してきた」と批判した段落が、削除されたとしている。

スー・チーさんはまた、「有権者登録名簿に多くの不正が見つかり、選挙管理委員会に善処を求めている」と明らかにしている。
NLD関係者によると、例えば最大都市ヤンゴンの選挙区の一つでは、死亡、あるいは他の選挙区へ転出した市民が名簿に含まれ、その数は名簿に記載されている約2千人のうち、1181人にのぼる。1世帯全員が名簿から抜け落ちている事例もあるという。

そこに「不正」の余地がある。関係者は「政権と与党・連邦団結発展党(USDP)が、死亡した複数の市民の名前を使い、1人で何回もUSDPに投票できる。逆に名簿に記載がなければ、NLD支持者は投票できない」と解説する。
別の野党の関係者は「2010年の総選挙のときも重複投票があり、状況は同じだった」と言う。

有権者登録名簿は10年の総選挙時のものを踏襲している。
選挙管理委員会は2月29日から3月6日まで、名簿の誤った情報の修正を受け付けた。だが、通達が届いたのは、シャン州内のある選挙区の場合、締め切り当日の6日だった。

票が現金で買収されているとの情報も絶えない。首都ネピドー郊外の村では、当局が「NLDを支持すれば電気を供給しない」と圧力をかけているという。
欧米は選挙監視団受け入れをテイン・セイン大統領に要求している。だが、依然、決定されていない。【3月13日 産経】
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問題は多々ありますが、「一昨年の総選挙では、我々の選挙運動を当局の情報部員が監視し、事務所に訪れては支持者を脅した。それに比べると今回、目に見える圧力はない。政権は制裁解除のために気をつかっており、我々は満足している」(NLDとは別の民主化勢力政党「ミャンマー民主党」から立候補している党首のトゥウェイ氏)【3月12日 毎日】といった発言にみられるように、米欧が経済制裁解除の前提条件に掲げる「自由、公正」な選挙に向けての政権側の努力は見て取れます。

NLDは、他の野党勢力とは選挙協力せず
「ミャンマー民主党」のように、スー・チーさんの国民民主連盟(NLD)以外にも、民主化を求める野党勢力はありますが、今回NLDはこうした他の野党勢力とは一線を画した選挙選を行っています。

****ミャンマー:「自由、公正」な実施焦点…補選まで3週間****
・・・・民主党など総選挙に参加した民主化系や少数民族系の10政党は昨年、補選での協力協定を結び、同じ選挙区での相打ちを避けるため候補者の一本化に合意した。

10政党はその後、補選参加を決めたNLDにも候補者調整に参加するよう呼びかけたがNLD側は反応せず、多くの選挙区でNLDと10政党連合の候補者が競合する事態となっている。
「一昨年の総選挙をボイコットしたNLDには、総選挙に参加した10政党への感情的なわだかまりがあるのだろう」。地元記者の一人はそう打ち明ける。

「我が党の選挙運動は車3台を使うのがやっとだ。NLDは5、6台。USDPは15台。これが力関係だ」。選挙の見通しを聞くと、(「ミャンマー民主党」の)トゥウェイ氏はそう言って笑った。(後略)【3月12日 毎日】
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先の総選挙への対応の違いに加え、NLDには民主化運動の中核としての自負心があるのでしょうが、民主化運動進展のためには、他の野党勢力との協調も今後必要になるのではないかと思われます。

一方、与党USDPは潤沢な選挙資金を使えるようですが、“「我々が勝てば不公正だと非難を浴び、負ければ『自由、公正に行われた』となるのだろう」。USDPの関係者はそうこぼした。”【同上】というように、損な役回りである側面もあります。
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