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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  大筋は“それでもプーチン” ただし、物言う中間層も成長

2011-12-27 22:08:44 | ロシア

(モスクワ 12月24日 不正選挙への抗議行動に参加する人々 “flickr”より By genia_zub4ik http://www.flickr.com/photos/zub4ik2/6574945289/

【「プーチンなきロシアを」】
ロシア下院選挙の不正疑惑に地する抗議行動が続いています。
24日には主催者発表で13万人とも12万人(警察発表によると2万9000人)ともいわれる参加者を集めました。

こうした批判に、メドベージェフ大統領は政治改革方針を示してはいますが、抗議は沈静化していません。
いまのところ、政権側はこうした抗議行動を強権的な鎮圧でいたずらに刺激することなく、静観の構えです。

一方、デモの組織委員の一人、役人の汚職批判を展開するネット活動家アレクセイ・ナバルヌィ氏(35)は、「我々は平和な活動家であり、権力を力で奪取はしない。来年、政権は平和的に代わる」と語っているように、抗議者側も街頭行動での政権転覆などではなく、来年の大統領選挙でプーチン復帰を阻止する、選挙による政権交代という目標を据えています。

****ソ連崩壊後最大「13万人デモ」 民主化、空約束に激怒****
ロシア下院選での大規模不正疑惑に抗議するモスクワの反政権デモは24日、参加者が主催者発表で13万人と今月10日の前回デモを上回った。1991年のソ連崩壊後で最大となる反政権運動のうねりが続いていることが浮き彫りになった形だ。
メドベージェフ大統領は前回のデモ以降、政治制度の民主化方針を示したが、デモでは政権側の「口約束」に終わるのではとの懸念が渦巻いていた。

モスクワ中心部のサハロフ大通りを、デモに参加する老若男女が埋め尽くした。人々は抗議運動のシンボルとなっている白いリボンを衣服につけ、白い風船やカーネーションを手にした人も目立った。
「前回デモでわれわれが要求した政治犯の釈放も、票の再集計も実現していない」「新年をロシア政治の転換点にしよう」。演壇からの呼びかけに参加者らは力強く呼応し、「プーチン(首相、前大統領)なきロシアを」と気勢を上げた。

前回のデモを受け、メドベージェフ大統領は22日の年次教書演説で、プーチン前大統領時代に廃止された知事選挙や下院選小選挙区制度の復活といった改革方針を表明した。
ただ、24日のデモ参加者からは「メドベージェフはこの4年間、改革を約束しながら何もしてこなかった」(27歳、男性技師)といった声が多く聞かれ、政権の表面的な“ガス抜き”には現時点で効果が表れていない。
プーチン首相が15日のテレビ放送で、反政権デモが「外国の資金援助」を受けていると述べたことは逆に参加者の憤りを招いており、男性団体職員(44)は「われわれを侮辱している。これからもデモに参加する」と話していた。

この日のモスクワのデモは10日と同様、1人も拘束されることなく平穏に終了した。都市部では政権に対する不満を持つ人が急増しており、大規模な反政権デモを弾圧することはもはや不可能だ。来春の大統領選でのプーチン首相再選は確実視されているが、不満がくすぶる中で次期政権運営が順調にいくかは不透明になりつつある。【12月25日 産経】
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民主主義より秩序
中東の民衆運動「アラブの春」を踏まえて「ロシアの冬」とも呼ばれるロシアの抗議行動ですが、これで実際に政権交代が実現するか・・・と言えば、それはないだろう・・・というのが、個人的な感想ですし、多くが指摘するところでもあります。デモ参加者からは「プーチンなきロシアを」の声があがってはいますが、“それでもやはりプーチン”ではないでしょうか。

****それでもプーチンは生き残る****
ロシア 下院選の不正問題でソ連崩壊以来最大のデモが発生 しかし大多数の国民は民主主義も革命も望んでいない(オーエン・マシューズ)

・・・・10日に行われた6万人規模のデモはソ連の共産主義体制崩壊後、最大のものだったが、モスクワのボロトナヤ広場が「第2のタハリール広場(エジプト民衆革命の中心地)」にはなることはない。プーチンがエジプトの独裁者ホスニ・ムバラクのように、市民の怒りによって権力の座から追われることもない。
プーチン体制にとっては、05年に年金削減に抗議する大規模デモが全土に広がって以来最大の試練であることは間違いない。4日の下院選では、過半数の有権者がプーチン率いる最大与党「統一ロシア」以外に投票した。不正により得票の水増しが行われたとされているにもかかわらず、同党の得票率は49.5%にとどまった(前回の07年は64%だった)。

それでも、デモに参加した市民は少数派でしかない。選挙への参加を許された唯一のリベラル政党ヤブロコの公式の得票率はたった3%(不正がなければ6%を獲得していたと、同党は主張)。ロシア共産党と公正ロシア党の一部リーダーはデモを支持しているが、両党の支持者が大挙してデモに加わる事態にはなっていない。

民主主義よりも秩序を
プーチンが直面しているのは、あくまでも民主主義の「管理」の問題だ。革命の脅威にさらされているわけではない。
民主主義の「管理」に関して、プーチン陣営の参謀たちは相次いでミスを犯した。まず、穏健リベラル派の大富豪ミハイル・プロホロフの政治活動を妨げたのが失敗だった。プロホロフの活動を容認していれば、市民の不満のガス抜きがかなりできたはずだ。それに加えて、選挙不正問題への対応がお粗末だった。(中略)

大半の庶民はプーチン体制の強権的な姿勢より官僚や警官の汚職や権限乱用を嫌っている
「アラブの春」とは、状況がまるで違う。エジプトのムバラク前大統領一派と違って、プーチンにはまだ多くの選択肢が残っている。例えば「良い独裁者」の役回りを演じ、高官を何人か更迭し、汚職で何人か訴追してもいいだろう。
それに、今回の下院選で統一ロシアの得票率が50%を割ったとはいえ、それはプーチン個人への反対票というより、汚職の蔓延に対する抗議の意味合いが強い。ロシア国民は誰でも、役人の汚職により日々迷惑を被っている。

ロシアの反体制運動で目下の最重要人物は、役人たちの大掛かりな汚職の証拠をインターネット上で暴露し続けてきた弁護士のアレクセイ・ナバルニーだ。汚職問題こそ、大半のロシア国民にとって最大の政治的な関心事だからだ。
ロシア国民の多くが最も関心を持っている政治的なテーマは、報道の自由の抑制でもなければ、莫大な予算をつぎ込んだ軍備強化への懸念でもなく、移民に対する厳しい取り締まりでもない。政権を裏切った人間の毒殺や、反体制派や野党系富豪の投獄でもない。
むしろ、一般市民はプーチン体制のこれらの行動を歓迎しているようだ。最近の調査によると、ロシア国民の間で、「秩序」を「民主主義」より優先すべきだと答えた人は、民主主義を秩序より優先すべきだと考える人の約3倍に達している。

その半面で、ロシアの一般市民は役人が私腹を肥やしたり、権力を乱用したり、警官がゆすり行為を働いたりしていることを、そして官僚体質がロシア経済の活気を奪っていることを嫌っている。ナバルニーのメッセージがリベラル派の野党指導者たちの言葉よりはるかに大きな共感を呼んでいるのは、そのためだ。
ナバルニーは政府への抗議活動を行ってはいるか、親欧米のリベラルな主張を展開しているわけではない。最近も反移民運動に参加するなど、極めてナショナリスト的な傾向が強い。

国民は政治に関心がない
ロシア人の圧倒的大多数は、リベラル派が嫌いだ(欧米の手先だと思っている)。民主主義者も嫌いだ(過去に国を滅ぼした犯人だと思っている)。「革命」など願い下げだと思っている(過去に起きた「革命」がどういう結果をもたらしたかを考えれば無理もない)。それ以上に、大半のロシア人は政治に関心がない。不満は持っているが、怒りは感じていないのだ。

実は、10日にロシア全土でデモに参加した人の数を合計しても、アメリカの感謝祭翌日、クリスマス商戦幕開けの日となる「ブラックフライデー」(今年は11月25且に買い物に出掛けたニューヨーカーの数より少ない。
ソ連が崩壊した91年(またはロシア革命が起きた1917年)と違って、怒れるロシア人が街を埋めているわけではない。経済の危機が政権の正統性の危機と結び付かない限り、今後も状況は変わらないだろう。歴史上、ロシアで革命が起きたときはいつもこの2つの要素が結び付いていた。

11月のある日、モスクワの総合格闘技の試合会場に姿を現したプーチンが観客からブーイングを浴びせられる事件があった。本来であればプーチンの中核的支持層であるはずの普通の市民が、こうして不満を噴出させたのは極めて異例のことと言っていい。
プーチンにとって本当に脅威なのは、民主主義を求める騒がしい少数派のインテリ層ではなく、この日の格闘技ファンのような物言わぬ大勢の市民たちだ。
役人の汚職と権限乱用を封じ込めることに失敗し、この層の不満を抑え切れなくなったとき初めて、プーチン体制は崩壊の瀬戸際に立たされる。【12月28日号 Newsweek日本版】
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中流層は、安定した暮らしのもとで民主的な政治を求める
ただ、ロシアでも「都市中間層」が増加しており、この層が安定した暮らしのもとで民主的な政治を求めて声をあげ始めています。今のところ、こうした中間層の不満の受け皿となる政治勢力が存在しないというのがロシア現状です。政権側も今後、こうした中間層取り込みの配慮が必要になるでしょう。

****ロシア、目覚めた都市中流層 反政権デモ、最大規模に****
■プーチン氏いまだ盤石、不満の行き場なし
「物言う モスクワ!」
集会を伝えた反政権紙ノーバヤ・ガゼータは、1面の見出しを、こう掲げた。
90年代の混乱を「自由の代わりに安定をもたらす」という図式で立て直したプーチン体制に、市民が声をあげたといえる。我々の声を尊重しろ、と。

もともとは野党勢力が呼びかけた集会だが、主役はふつうの市民だった。
下院選で共産党や中道左派「公正ロシア」へと、政権批判の票を投じた層だ。中道の政権与党「統一ロシア」と民族右派、さらに左派系という今のロシアの政治ではすくいとれない「行き場のない有権者層」だとみられている。大規模集会を許可した当局も、民意の動きを感じ取っている。

成熟社会の基盤である中流層は、安定した暮らしのもとで民主的な政治を求める。政治学者のラジホフスキー氏は「中流クラスは2000年代の原油高騰期に生まれた。そしていま、政治的に物言う時が来た」と指摘する。
ロシア国営保険会社の調査では17%とされるが、都市部では3割に達しているとする専門家もいる。欧米では「中流の崩壊」で街頭デモが起き、ロシアでは中流の形成でデモが起きる。来春の大統領選に向け、中流層の取り込みがいっそう活発になるのは確実だ。

ただし、ロシアはユーラシア大陸に広がる多民族国家だ。中流が育つ都市部と、なお「安定」が優先される地方とでは、地殻変動に時間差がある。
集会があった10日と翌11日に全ロシア世論調査センターが実施した調査では、大統領選での投票先はプーチン氏が42%を占めた。2位のジュガノフ共産党委員長の11%を大きく引き離した。プーチン氏の支持基盤は固いものの、行き場のない不満を市民に抱かせたままでの「大統領復帰」になるとの見方が強い。【12月22日 朝日】
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ソ連の崩壊を「残念」と思う人は減少傾向
最近の世論調査で興味深かったのは、下記のものです。
見出しは“ソ連崩壊「残念」5割超、復活望む声も”となっていますが、特筆すべきことは、“ソ連の崩壊を「残念」と思う人は2000年の調査では75%だったが、ここ10年は減少傾向が続いている”という点ではないでしょうか?

****ソ連崩壊「残念」5割超、復活望む声も ロシア世論調査****
1991年末のソ連崩壊を「残念」と思うロシア人は53%いる一方、かつての形でのソ連復活を望む人は14%――。ロシアの民間世論調査機関レバダセンターが、ソ連崩壊から20年になるのに合わせ、ロシア人のソ連へのノスタルジー度を調べた。

15共和国で構成されたソ連の崩壊を「残念」と思う人は2000年の調査では75%だったが、ここ10年は減少傾向が続いている。「残念でない」との回答は00年の19%から今年は32%に増えた。ソ連崩壊を「避けられた」と考える人は53%で、10年前より5ポイント減。「不可避だった」は33%で10年前より4ポイント増えた。
ソ連が崩壊して何が残念かについては、「共通の経済関係の喪失」(48%)、「大国に所属しているという感覚の喪失」(45%)、「相互不信の高まり」(41%)などが挙がった。【12月25日 朝日】
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ソ連復活とも見えるプーチン首相の掲げる“ユーラシア連合構想”は、未だ多くの支持基盤があるとも言えますが、次第に国民の意識とのずれが大きくなりつつあるとも言えるのでは。
   
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