孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン  準備が進む陸自PKO派遣  今も続く国境付近での衝突

2011-11-29 21:36:12 | スーダン

(南スーダンで地雷除去にあたるノルウェーのNGO、Norwegian People 's Aid(NPA)の女性チーム ノルウェーは地雷廃絶のための活動に関して国際的に高い評価を得ていますが、それは、こうした危険を伴う地道な活動があってのことです。“flickr”より By UNMAS http://www.flickr.com/photos/unmas/5906498748/

国境では武力衝突、難民キャンプ空爆も
南スーダンPKOへの陸上自衛隊派遣については、宿営地の都合でやや遅れが出ることもあるようですが、大枠としては実行に向けて準備が進められています。

****南スーダンPKO、来月20日にも派遣閣議決定****
南スーダン国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊の施設部隊派遣の実施計画について、野田政権は12月20日に閣議決定する方向で調整に入った。

閣議決定後に一川保夫防衛相が防衛会議を開いて自衛隊に派遣命令を出し、来年1月以降、陸自の中央即応連隊で構成される第1陣約200人がジュバに出発する。第1陣は活動拠点づくりを担い、その後に施設部隊を中心とした本隊約300人がジュバの道路建設などにあたる。

ただ、現地での自衛隊の宿営地は決まっておらず、派遣時期が遅れる可能性もある。当初、12月末に撤退予定だったバングラデシュ部隊の宿営地を使う計画だったが、国連南スーダン派遣団(UNMISS)本部が来年7月1日までの活動延長を要請したためだ。
このため自衛隊では、別の場所に宿営地を新設する案や、バングラデシュ部隊が撤退するまで、同じ敷地内に仮兵舎をつくる案などを検討している。【11月29日 朝日】
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自衛隊が派遣される首都ジュバ付近は治安も比較的安定しているとのことですが、北部スーダンとの国境エリアでは衝突も続いています。

****南スーダンで軍と武装勢力が交戦、18人死亡****
南スーダンからの報道によると、同国軍の報道官は11日、北東部の上ナイル州で10日、武装勢力が隣国スーダンから越境攻撃し、応戦した南スーダン軍兵士5人を含む18人が死亡したと述べた。
報道官は「スーダン政府は、南部の武装勢力に武器を供与している」と非難した。(後略)【11月12日 読売】
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スーダン政府は関与を否定しているとのことです。
また、上記衝突の前日には、避難民キャンプへの爆撃も報じられています。

****南スーダン:避難民キャンプ、スーダン軍が空爆****
国連平和維持活動(PKO)での日本の陸上自衛隊施設部隊の派遣が決まっている南スーダンからの報道によると、スーダン軍の戦闘機が10日、南スーダン北部ユニティ州の避難民キャンプを空爆し、同州当局者は12人が死亡、20人が負傷したと述べた。死傷者はなかったとの情報もある。

AP通信によると、スーダン軍は9日にも同州に隣接する上ナイル州を空爆、7人が死亡した。南スーダンのキール大統領は10日、スーダン側が侵略しようとしていると非難した。
米政府も空爆を強く批判する声明を出した。一方、スーダン軍側は関与を否定している。

南スーダンは20年以上続いた内戦を経て今年7月、スーダンから独立したが、両国の国境付近では双方の反政府勢力が活動し、断続的に戦闘が継続。両国とも自国の反政府勢力を相手方が支援していると非難し合っている。
ユニティ州の避難民キャンプは国境から十数キロ南にあり、反政府勢力掃討作戦が続くスーダン南部の南コルドファン州に隣接、1万5000人が暮らしている。スーダン側は、自国の反政府勢力がキャンプにかくまわれていると批判していた。
ユニティ、上ナイル両州は、陸自部隊が活動する首都ジュバから離れている。【11月11日 毎日】
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国連は、整備が遅れている北部での活動を日本側に要望
陸自部隊は、当初は治安が安定している南部の首都ジュバ周辺で道路補修などのインフラ整備を担う予定ですが、国連は、整備が遅れている北部での活動を日本側に要望しており、既にジュバから約150キロ北のボアなどでの活動を打診しています。

日本政府は、派遣する陸自部隊の安全を確保するため、アフリカで対テロ作戦を行っている米軍から治安情報の提供を求める方針を固め、米政府と調整に入っています。治安が悪化しているスーダン国境に近い北部情勢などについて、米軍との情報共有を図ることが目的です。

もとより、PKOが行われる地域は、治安面で危険が伴うエリアです。民間ではなく自衛隊などの“軍”が派遣されるのも、危険を前提としたことです。
危険を回避しては何もできませんので、治安面への配慮ともバランスをとりながら、現地住民の生活安定に寄与できるように取り組むべきでしょう。

ただ、将来的に危険度の高いエリアでの活動を行うのであれば、携帯する武器についても見直し検討が必要でしょう。
万が一の場合には、どこまで現地情勢に関与して、何を目標とするのか・・・腹をくくった意思統一も必要でしょう。ルワンダや、ボスニアのスレブレニツァの例もあります。

【「スーダンが国際基準と比べ極めて高額を求めてきている」】
現地情勢の今後を決定するスーダンと南スーダンの石油収入の分配交渉は難航しています。
両国ともに、原油依存の高い経済状態ですので止むを得ないところではあります。

***南スーダン:情報・放送相が石油収入分配でスーダン批判****
今年7月にスーダンから分離独立した南スーダンのベンジャミン情報・放送相が28日、東京都内で毎日新聞のインタビューに応じた。

スーダンとの間の石油収入の分配交渉について情報相は、スーダン領内の石油パイプライン使用料について「スーダンが国際基準と比べ極めて高額を求めてきている」と批判した。また、現在計画が持ち上がっているケニアへとつながる別のパイプラインなど、新たなパイプライン敷設の必要性を強調した。

南スーダン独立前の旧スーダンは産油国だったが、油田の多くが南側にある一方、輸出港につながるパイプラインはスーダン領内にしかない状態。石油収入の分配比率決定が大きな課題になっている。独立当初、両国は今年9月の合意を目指したが、交渉は難航している。

情報相は、スーダン側がパイプライン使用料について、1バレル当たり32ドルを要求していると述べ、「他国では1バレル当たり41セントか、それ以下の所もある」と指摘。その上で「別のパイプラインが必要」と明言し、日本企業も強い関心を示すケニアのインド洋沿岸につなぐパイプライン計画のほか、ジブチへとつなぐ可能性についても「検討している」と述べた。

今後産油量が減ることからパイプライン新設については実現性に疑問の声があるが、情報相は「計画を阻止しようとするプロパガンダだ」と一蹴し、「まだ産出が始まっていない油田がある」と力説した。【11月28日 毎日】*****************************

“1バレル当たり32ドル”と“1バレル当たり41セント”では雲泥の差があります。
素人にはよくわかりませんが、まだ両国の隔たりが大きいことはわかります。

北部からの帰還民の大量流入により、帰還民キャンプの生活環境は悪化
南スーダンの再建に向けた取り組みとしては、帰還民対策が難航していることが報じられています。

****南スーダン、帰還民の再定住進まず 「敵意」にも直面****
南スーダンの独立は北部のスーダンから数千人の帰還を促したが、新しいより良い生活への希望はついえようとしている。多くの帰還民たちが、いまだに、帰還民のための一時収容キャンプで日々生きていくのがやっとという生活を送っているのだ。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が帰還民支援のために中部レイク州ルンベクに建設したキャンプでは、れんがやビニールシートに覆われた小屋に60家族が暮らしている。3か月前にスーダンの首都ハルツームから再定住を求めて来たものの、南スーダン政府から土地が与えられず、キャンプでの滞在期間は延びる一方だ。また、帰還民の大量流入により、生活環境は益々悪化している。

国際移住機関(IOM)によると、2010年10月以来、南スーダンに帰還した南スーダン人は34万人以上にのぼる。レイク州だけで、この1年間に推定1万7000人以上が帰還した。
関係当局によると、北からの帰還民の多くは、雇用確保や法的地位への不安から帰還を決意した。スーダン政府は、7月9日に南部が南スーダンとして独立したのを機に、同国に住む南スーダン人に対し、9か月以内に帰還するか正規のスーダン国民になるよう通達を出していた。

■人口の半分が貧困層
スーダンと南スーダンの間では戦闘が勃発し、緊張が高まっていることもあり、各支援団体は帰還民の再定住に向けた取り組みを強化している。
今月10日には南スーダンの難民キャンプが空爆され、少なくとも11人が死亡する事件があった。国際社会はスーダン政府を強く非難したが、同政府は関与を否定している。

スーダンと南スーダンは、いまだに、国境線の画定や歳入・債務の配分で合意できていない。南スーダンは豊富な石油埋蔵量を誇るが、スーダン政府から長年顧みられてこなかったこともあり、公共サービスやインフラが整備されていない。世界銀行によると、南スーダンの人口800万人のうち半数以上が貧困生活を送っている。

■地元民からの敵意も
ルンベクの当局者は、帰還民の再定住を進めるために2年間は無償で土地を貸与する考えを示した。
南スーダンで生活を一から始める困難とは別に、地元民の反感に直面する帰還民もいる。20年以上続いた北部との内戦中に北部の軍や警察に所属していればなおさらだ。
ある帰還民は、「まずは居を定めて、国の発展に積極的に貢献していきたい」と話した。【11月29日 AFP】
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道ははるか・・・という感がありますが、一歩ずつ進むしかありません。
日本のPKO参加が、その一助となることを願います。
なお、言うまでもないことですが、スーダンは南スーダンとの問題のほかに、ダルフールも抱えています。

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