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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン  スーダンとの原油利益配分交渉が難航 国連、日本にPKO参加を要請

2011-08-10 21:40:05 | スーダン

(南スーダンの首都ジュバで道路の清掃作業を行う人々 Tシャツには「Keep Juba clean & green」の文字が。 ただ、南スーダンには舗装道路が60kmしかなく、ナイルにかかる橋も1本しかないとか。 “flickr”より By gregg.carlstrom http://www.flickr.com/photos/greggcarlstrom/5939056069/

両国は9月末までに決着させる方針で合意したものの・・・
7月9日に分離独立した南スーダンは、これといった産業もなく、インフラも未整備で、現在のところ財政的に頼れるのは石油資源しかないのが実情(原油収入が政府収入全体の約98%)です。一方、北のスーダンも、石油産出地域である南部独立で政府収入の約36%を失うとの試算があります。

南は石油の精製・輸出を北の施設に依存していることから、原油利益の配分が必要になりますが、両者ともに石油に大きく依存していることから、その交渉は両国にとって死活問題ともなります。
そのため交渉は予想されたように難航しています。交渉の駆け引きのひとつとして、スーダンが南スーダンの石油輸送船の出港を差し止めるといったことも起きています。

****スーダン:南北が石油で対立 利益配分未定のまま****
7月に分離独立した南スーダンとスーダンが原油利益の配分を巡る交渉で対立し、両国の緊張が高まっている。今月5日には、スーダン側が自国内の輸出港で南スーダンの石油運搬船の出航を突然差し止めるなど、揺さぶりをかけた。豊かな油田地帯を抱える南部の独立に、危機感を強める北部。周辺国を巻き込み、国際的な圧力を期待する南部。双方の駆け引きが本格化している。

北、高額な施設料請求
内戦を終結させた05年の包括和平合意(CPA)では、南北は原油利益を暫定的に折半した。しかし、このCPAの有効期間は南スーダンが独立した7月9日で終了。独立後の配分については未確定のままとなっている。

交渉仲介のため、アフリカ連合(AU)は先月後半、エチオピアの首都アディスアベバで会合を開催。
スーダン側は、輸出港へのパイプラインや石油精製施設が北部にしかないことを強みに1バレル当たり22・8ドル(約1800円)の施設使用料を請求。これに対し南スーダンは「法外な要求だ。使用料を支払う用意はあるが、国際的な常識の範囲内でなければならない」と拒否し、協議は決裂した。両国は9月末までに決着させる方針で合意したが、今後も交渉は難航が予想されている。

また、スーダンは今月5日、北東部ポートスーダン港で南スーダンの石油運搬船の出航を阻止。翌6日になって許可した。AFP通信によると、運搬船は石油60万バレルを積載。スーダン側は1バレル当たり32ドル(約2500円)の施設使用料を要求したが、南スーダンがこれに応じなかったため出航を阻止したという。

南スーダン政府は「正当な経済活動への妨害工作だ。すべての交渉を遅らせようとしている」と非難。AUに改めて妥協点を見いだすための協力を求めた。AUから具体的な合意案は提示されていないが、南スーダンはその決定には従うとしている。

スーダンは今回の南部独立で政府収入の約36%を失うとの試算がある。米政府は「テロ支援国家」の指定を解除しておらず、経済制裁で財政状況は逼迫(ひっぱく)している。一方、南スーダンは原油収入が政府収入全体の約98%を占め、オイルマネーへの依存度が高く、他産業の育成が課題となっている。

利益分配は両国にとり死活問題で、スーダンは軍事力という「カード」をちらつかせながら、南スーダンを威嚇。南は同じキリスト教系の周辺国と連携を強めることでスーダン側の強硬策をけん制し、少しでもその「取り分」を減らそうとしている。【8月8日 毎日】
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国連:ハイチの道路整備などで実績を残す日本の技術力を高く評価
こうした配分交渉の他、南北間で懸案事項となっている産油地域でもあるアビエイ地区の帰属問題も未解決です。南北それぞれの新通貨発行による「通貨戦争」の不安も懸念されています。
更に、南北間の問題以外にも、南スーダン内部における部族間対立による治安への不安もあります。

いずれにしても、南スーダンの門出は難問山積です。
そうしたなかで治安維持やインフラ整備のための国連平和維持活動(PKO)に日本も参加するように、国連から要請を受けています。

****南スーダン共和国:日本、PKO派遣難航 震災で余力なく、政治混乱も拍車****
日本政府は国連から、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に参加を打診されたが、当面は困難な状況だ。派遣を想定する陸上自衛隊は東日本大震災の復興活動などで人員の余裕がなく、菅直人首相の退陣表明後の混乱で政府・与党の検討も進んでいない。政府内では「派遣するにしても年明け以降」(防衛省幹部)との声が出ている。

国連安全保障理事会は8日、南スーダンの独立に伴い、インフラ整備要員や警察官など約8000人規模のPKO部隊「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」を派遣することを決めた。日本には道路整備やがれき撤去などを行う施設部隊の派遣を求めている。
しかし、自衛隊は現在も2万人を超える規模で震災対応を続けている。また、施設部隊はハイチ大地震の復興を支援するPKOに、昨年2月から約330人を半年交代で投入中で、余力は乏しい。南スーダンの治安情勢に不安もある。

首相退陣表明後の混乱した政治状況も拍車をかける。もともと、民主党政権はPKO参加による国際貢献には積極的で、昨年10月には「PKOの在り方に関する懇談会」を設置し、自衛隊の派遣条件を緩和するPKO5原則見直しを視野に入れていた。
ところが、懇談会は今月4日に中間報告で5原則見直しを先送り。座長の東祥三副内閣相は「方向性を決めたいとの思いもあったが、政治的リーダーシップが必要」と語り、PKOに対する政権の関心が低下していることを認めた。【7月18日 毎日】
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先日来日した国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は8日、菅直人首相、松本剛明外相と相次いで会談し、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊の施設部隊派遣を正式に要請しました。菅首相は「しっかり取り組んでいきたい」と述べています。

国連が日本の参加を望んでいるのは、ハイチでの道路整備などで実績を残す日本の技術力が高く評価されていることがあるそうです。

****国連、日本にPKO派遣熱望 南スーダンの道路整備など****
先月独立した南スーダンで道路建設などを担う国連平和維持活動(PKO)に日本が参加するよう、国連が熱望している。ハイチの道路整備などで実績を残す日本の技術力を高く評価してのことだ。ただ、日本側は、自衛隊の派遣には慎重な姿勢だ。(中略)

国連PKO局は自衛隊を「インフラ整備で世界最高水準の技術を持つ」と評価する。これを決定づけたのは、巨大地震に見舞われたハイチでの活動だった。
日本が派遣した陸上自衛隊は、昨年3月末から2カ月間で、壊滅的被害を受けた首都ポルトープランスから隣国ドミニカ共和国まで続く幹線道路を整備。盛り土を施し、雨期でも冠水しない。必要物資を届けるライフラインとして今も使われている。国連幹部は「南スーダンでも同じような活躍をしてほしい」と話す。【8月9日 朝日】
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技術力が評価されてのことであれば、日本としても前向きに検討していいのではないでしょうか。
安保理理事国入りを目指す向きもあるようですが、軍事力を背景にした外交ができない日本としては、こうした地道な国際貢献で信頼を得ていくことが重要かと思います。

原油事業参入に向けて
もちろん、PKOは何らかの経済的見返りを求めて行うものではありませんが、旧スーダンの石油埋蔵量は約60億バレル、その最大の輸出先は中国(65%)で2位はインドネシア(15%)、3位は日本(12%)ということで、日本とも繋がりがある国です。

最大の石油輸出先である中国は、今後の権益確保のため積極的な動きを見せています。
****中国:外相がスーダン訪問…石油権益確保の狙いも****
中国国営新華社通信によると、スーダンを訪れている中国の楊潔※(よう・けつち)外相は8日、バシル大統領と会談した。楊外相は9日に南スーダンも訪問する予定。中国政府は南スーダンの独立から間もない不安定な時期に双方に高官を派遣することで仲介役を担う一方、巨額の投資をする石油など資源の権益を確保する狙いがあるとみられる。(※は竹かんむりに褫のつくり)
楊外相はバシル大統領との会談で、南スーダン独立(7月9日)後の情勢などについて協議。楊外相は「石油や農業、鉱業開発の分野で協力を深めたい」と述べ、バシル大統領は「中国による投資拡大を歓迎する」と応じた。(後略)【8月9日 毎日】
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日本もスーダンでの原油事業参入を狙う動きがあるようです。
****新パイプライン構想 原油事業狙う日本****
今月9日、スーダンでの南北内戦の末に南スーダン共和国が悲願の分離・独立を果たした。その原油資源やインフラ事業を巡り、関係各国が駆け引きを繰り広げている。新たなビジネスチャンスをうかがう国々。日本もその例外ではない。

「あのまま現地に入れていれば、今ごろ日本企業の動きはもっと活発化していたかもしれない」。日本政府関係者の一人が悔しがる。
3月下旬、日本政府は外務省アフリカ審議官をトップとする民間企業との合同代表団を南部スーダンに派遣する予定だった。
独立で政情が安定しインフラ整備が進むことになれば、アフリカでインフラ輸出を積極化させる日本企業にとっては、大きな商機となる。派遣団は、その足掛かりを作るはずだった。
だが現地入りを目指したところに、東日本大震災が起きた。派遣は中止され、再開のめどは立っていない。

これとは別に、南スーダンと南側の隣国ケニアを結ぶ新パイプライン構想も現地で持ち上がり、日本企業の名前が挙がっている。
「日本の商社とハイレベル協議を進めている」。今月1日、ケニアの首都ナイロビにある首相府で、インフラ整備担当のカスク顧問はそう言って、分厚い内部文書を広げた。

ケニアの大規模開発計画(総額100億ドル=約8000億円以上)の調査報告書だ。南スーダンの原油を首都ジュバからケニアのラム港へと運ぶ新パイプライン(約1400キロ)構想が描かれ、06年にウガンダで発見されたばかりの油田(埋蔵量約25億バレル)とも結ぶ。「日本や中国、ウガンダにある米国系の企業が事業参加に意欲的」という。

南北スーダンで採掘されるのは「ナイルブレンド」と呼ばれ、硫黄分が少なく火力発電に適した原油。東日本大震災の影響で原子力発電が大幅に落ち込み、各電力会社が火力発電への切り替えを余儀なくされる日本にとっては、原油輸入を拡大させたい思惑もある。
この日本の商社のナイロビ支店は取材に対し「答えられない」とした。だが独立前の南部スーダン自治政府のグベク鉱山エネルギー省次官は5日、「日本とは独立後、本格的な協議をすることになるだろう」と語った。(後略)【7月18日 毎日】
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日本のPKO参加は、こうした動きをバックアップする効果もあるのでは。


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