石川捷治・中村尚樹(2006)『スペイン市民戦争とアジア』九州大学出版会
今はユーロ圏の中で危険とされているPIIGSの一つスペインですが、かっては大航海時代など世界を股にかけたスペインでもあります。一度はゆっくり訪ねてみたい国でもあります。1930年代後半の世界政治史における焦点の1つはスペインにありました。図書館で気になったこの本は、アジアとの関わりでした。「中国の抗日統一戦線の形成や戦中・戦後のアジアの民族解放闘争の展開と勝利は、スペイン市民戦争の教訓をなくしてはありえなかったはずである。日本や朝鮮半島、中国をはじめアジアの今を考える上でも、第2次世界大戦の前哨戦となったスペイン市民戦争の意味を再検討することは、今日的意義がある」。戦争に関わったアジア人を地道に取材しています。
教職者・臨時公使のアルパレスの関連記事で、「教育の目標は、有る意味で善と悪の区別をつける判断力。簡単です。・・・命令する者がだれであれ、それをすべきか、すべきでないかは、本来、自分で判断しなければならん。その判断力を与えるのが教育です(朝日新聞1979年)」。これは橋本市長にも聞かせたい一説です。
スペイン市民戦争は、「日本帝国主義や外国の帝国主義・植民地主義との闘いという、自らの自由を求める闘いとして位置付けられた。大規模な内戦を経験した(国)、つまり、スペイン市民戦争の終結が、中国や朝鮮、ベトナムにとって、別の新しいスペイン市民戦争の始まりを意味していた」。次に、五木寛之の「わが心のスペイン」を引用した後で、「私たちは時代閉塞の状況から「混乱」、「恐怖」、「権威主義的独裁」、「戦争」の社会へと突き進む可能性をもつ新たな「危機」の時代に生きている。そのような時代にスペイン市民戦争という過去からどのようなことを学びとればいいのだろうか、今日においても貧困や抑圧と言った「構造的暴力」に対する闘いはこれまで以上に求められる。」という一文は、今日の時代に通じます。
エピローグでは、「スペイン市民戦争とファッシズム支配を経験したヨーロッパはEUを形成し、強固なものにすることによって、平和へのステップを一段上がった」。「いまアジアでは、大きな構造変化と平和の共同体に向けた奥深い動きが起こっている。ASEANは、国の規模や歴史・文化も違う10カ国が協力して発展させた地域機構である」。「しかし日本はこうした流れにともすれば不協和音を持ちこみ、改憲と日米の軍事的融合という逆のベクトルに進もうとさえしている」。いまの普天間基地の問題、TPPがそうかもしれません。(写真は昨年12月旅行した宮古島のハイビスカスです)