豊田の生活アメニティ

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「建築紛争」

2006-12-21 | 気になる本
建築紛争」五十嵐敬喜、小川明雄、岩波新書、2006年
 この本は「都市計画」、「『都市再生』を問う」に続いた、規制緩和や市場主義の政治が続く中での、住民サイドに立っての都市計画・まちづくりの本です。タイトルにあるように、耐震偽装から高層マンション建設など、具体的な紛争、裁判事例をあげ判りやすく解説しています。「行政・司法の崩壊現場」とサブタイトルにありますが、裁判官の都市法の無理解と良心を弁護士として嘆いています。
 1章は、日本が危ないとして、耐震構造偽装の背景と問題点を明らかにしています。
 2章は、法の抜け道により、戸数の多い高層マンションの問題です。1敷地1棟の考え方や、団地認定制度の問題を挙げています。「周辺の市街地の実態とも、都市計画法で定められた用途地域が想定した市街地の姿とも極端にかけ離れた高さと規模の高層建築物が当たり前になった。」と、当然の指摘です。天空率は、「少し大げさにいえば、日本の建築物の高さ規制していた斜線制限を消してしまった」。省みれば建築基準法の集団規定の歴史は、改悪の歴史でありました。住居地域の20m高さ制限を外し容積率制にし、容積率で開放廊下の床面積を除外し、容積率にボーナスを与えてきました。自治体の条例制定や住民の提案権も付与されましたが、そのスピードは改悪の歴史のほうが数倍速いです。最近では新宿区が駅周辺を除いて、高度地区を大部分にかけました。また、いくつかの自治体では景観法により、高さの制限条例を設けています。地方都市では高層のノッポマンションが建ち始めていて、スピードが求められています
 3章は、官から民で、民間主事制度の経過と問題を述べています。
 4章は、政官財、メディアの問題を書いています。2003年に日本経団連は住宅政策の提言をしました。その後、公団・公営住宅のいきづまり、住宅金融公庫は廃止し、住宅の市場化が打ち出されました。
 5章は、裁かれる裁判官―「良心」を忘れた司法です。高層建築は何が問題かとして、日照、圧迫感、プライバシー、景観、不法駐車などを挙げています。他に、コミュニティの問題、地震時の設備休止、はしご車、学校建設など問題があります。さらには、「高度利用」はコンパクトシティに貢献できるのか議論が必要です。
 6章で、「美しいまちづくり」は、建築基本法の動きを紹介しています。また、建築確認は許可とすべきであるという主張は同感です。民間でも確認できてしまえば、地域に説明もなく、地域に調和しない計画が一方的に合法とされ、建設されます。住民参加が言われていますが、都市計画や住環境整備の方針が議論され、具体化されていません。日照問題の裁判は負ける場合が多いけれど、それでも地下室の考えや、説明責任など前進したとしています。「美しき都市も、運動なくして権利として成立しない」という言葉は、安倍さんに贈る言葉でしょうか。
(写真は12月上旬早朝、白浜公園から矢作川堤防)
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