Con Gas, Sin Hielo

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「ボヘミアンラプソディ」

2018年11月18日 14時46分49秒 | 映画(2018)
WE ARE THE CHAMPIONS !


コンサートやライブの類にはあまり行ったことがない。会場が一体となって盛り上がる雰囲気に抵抗があるからというのが理由の一つなのだが、映画館はまったくその逆で、周りが暗くて集中できるからであろうか、よく笑うしよく泣く。

そんな自分が考えさせられた。このLIVE ADEの現場にいたら、気持ちの高ぶりを抑えることができただろうか。

それほどまでに、本作のラスト20分のステージは圧巻の一言に尽きる。

北米では、脚本が凡庸であるなどの批判的な評価が一部にあるらしい。確かに、世界的な名声を得た後にバンド内に確執が生じるという流れ自体に新鮮味はないし、友情や裏切りのエピソードは、時間軸があいまいだったり、でき過ぎた部分が多く見られたりするなど、真実かどうか怪しく感じられる。

ただ、それを差し引いたとしても、F.Mercuryが背負った運命や、彼とQueenのメンバーが作り上げた伝説に疑いをかける余地はまったくない。

主演のR.マレックは、どこからヴォーカルを吹き替えたのか気にならないくらい、フレディという人物を演じ切っていた。

印象的だったのは、売れる前からスターになった後まで一貫していた不安定な表情である。歯列が悪かったことを「音域が広がる要素」と言い張っていたが、その裏では出自も含めて蔑まれていた経験への劣等感も見て取れる。

溢れ出る才能に背中を押されるように前へ進み続ける一方で、常に破滅と崩壊の恐怖を心のうちに隠していたフレディ。家族への反発は成功の原動力となったが、それとは裏腹に、彼を大事に思ってくれる人の存在に気付くまでに長い時間をかける結果ともなった。

最期はこの映画のように、彼にとってのファミリーであったバンド仲間や親友たちに囲まれて安らかに旅立つことができたのだろうか。エンドロールまで全篇を通して流れるQueenの楽曲を噛みしめながらそんなことを考えていた。

ところで、本作に関する報道等を見ると、この映画の製作にもかなりの紆余曲折があったらしい。

監督として名前を連ねているB.シンガーは、出演者との確執等により解雇され、最後まで撮影することができなかったという話だ。

完成した作品を観るかぎり、ごたごたによるほころびは見られない。それにしても芸術というのはガラス細工のように繊細だと改めて感じた。

フレディは自らの命を削って、歴史に残る名曲の数々を世界に送り出したのだ。

(95点)
コメント (2)
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