「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

池田香代子さん講演会

2010年12月11日 | 非戦・平和・社会
 今日は下条村の下条大学で池田香代子さんの講演会があるということを、つい3日ほど前に友達のtwitterで知って、ぜひお会いしたいなと思って出掛けてきた。池田香代子さんは『世界がもし100人の村だったら』シリーズで有名だけど、もともと専門はドイツ文学の翻訳で、ベストセラーになった『ソフィーの世界』をはじめ、たくさんの児童書や絵本を出されている。
 『世界がもし100人の村だったら』は、インターネットでいろんなバリエーションで広まっていたメールの内容を池田さんが再話という形でまとめた本で、大ベストセラーになって、シリーズで5冊出て、さらに去年『日本がもし100人の村だったら』も出た。そのメール自体は、当時、私のところにもどこかから回ってきて読んでいたけど、それを池田さんが絵本にしようとしたのは、9・11の後、テロの実行犯とされたアルカイダが潜伏しているという理由でアメリカに攻撃されることになったアフガニスタンで、井戸を掘ったり医療支援をしていた中村哲さんのペシャワール会にまとまった支援をしたいというのが一つの動機だったそうだ。100万円くらい寄付したいと思っていたら、それどころか1億円を超え、半分くらいは税金で取られるけど(高額所得者の最高税率は、今は金持ち優遇策で当時に比べて随分引き下げられてしまった)、残りの何千万円かをすべて、100人村の基金として、難民支援や、さまざまな平和活動をしているNPOやNGOへの寄付に投じたそうだ。一つの本から始まって、こんなにいろいろな広がりが持てるのだという、ちょっと元気の出るお話。

 難民というと、日本は先進国の中にあって非常に難民に対して門戸を閉ざしている国で、アメリカやヨーロッパでは年間万単位で受け入れているのに、何十人というレベルでしか受け入れていないのだそうだ。そうした中、日本にやってきたアフガニスタンの少数民族の難民の方に「どうして日本に逃げてきたの?」と聞いたら、日本のNGOの人たちは、分け隔てをしない、危険が迫ったときに最後まで踏みとどまってくれるという答えだったそうだ。政府は本当にひどいけど、実は海外で活躍しているNGOの人たちがそうやって信頼を得ているのだと知って、本当に頭が下がる思いだし、素晴らしいことだと思って嬉しかった。

 さて、下条村は中山間地にあって子どもが増えていることで有名なところ。話のテーマも子どものことになる。つい先日報道されたPISAの学力調査。上位に来ているのは、かつての日本のように詰め込み教育をしている途上国であって、別に日本の子どもたちの学力が落ちているわけではないとのこと。あるいは、マスメディアで繰り返し凶悪事件が報じられるせいで、近ごろ日本では少年犯罪が増えているような気がしてしまいがちだけど、実は全然そんなことはなくて、少年犯罪も殺人事件なども減っている。また、諸外国と比べても、日本の少年犯罪はずっと少ない。外国の学会で、なぜ日本の子どもたちは非行が少ないのかと話し合われたりもしているそうだ。そこで出た一説として、ケアリングコミュニティがしっかりしているのではないかという話があったそうだ。これは都会はともかく、下条もそうだと思うし、うちの村でも、地域ぐるみで子どもを大切にしていると思う。とかく「近ごろの子どもは、若者は」という言い方をされがちだけど、全然そんなことはなく、日本の子どもたちは学力もあるし、世界の中でもいい子たちなんだと。ただし、自己評価の低い子、自信のない子が多いとも。また、日本は他の先進国に比べて、教育と医療にお金を使っていない。例えば子ども手当満額払って、ようやく先進国の平均くらいだとか。
 
 100人村シリーズの3冊目は食べ物編。日本の食糧自給率は40%とよく言うけど、それはカロリーベースの話で、重量ベースにすると何と20%。そして、食品の廃棄率も20%。といったところから、地産地消の重要性。地産地消は食料だけでなく、小水力や地熱など自然エネルギーを使って、エネルギーの地産地消もできればというお話。これは日本の場合、電力が独占事業になっているので、ここを規制緩和しないとできない。アイスランドは金融危機で大変だけど、地熱や水力でエネルギーを自給している。これは先日、田中優さんの講演でも聞いた話。

 最後に100人村シリーズの最後、子ども編の一部を朗読してくださって、講演を終わる。ドネラ・メドウズさんが言った貧しい人たちが幸せになる五つの条件、「1つめは、きれいな空気と土と水。2つめは、戦争や災害のためにふるさとをはなれなくてすむこと。3つめは、予防をふくむ基礎的な医療をうけられること。4つめは、基礎的な教育をうけられること。そして5つめは、伝統文化に誇りをもち、それらを楽しむことができること」。別に貧しい人に限らず、これが満たされれば、十分幸せではないかと思う。(でも、実は一見豊かな都市には1つめが欠如しているかもしれない)
 朗読のバックには、池田さんと高校の同級生だった鎌田實さんが「がんばらない」レーベルで制作した坂田明さんの「ひまわり」。このCDの売り上げはチェルノブイリやイラクで白血病に苦しむ子どもたちの薬代になるとのことで、購入してきた。初めて行った下条村は結構遠かったけど、いいお話を聞けて行ったかいがあった。しっかりミーハーで持参した本にサインもいただいてきた。

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