「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

リニア環境アセス技術委員会(3回目)

2012年01月19日 | リニア新幹線
 昨日は県庁で行われたリニア新幹線の環境アセス方法書についての県の環境影響評価技術委員会の傍聴に行ってきた。9月27日に方法書が公告・縦覧され、10月になって各地で説明会が開催され、11月10日締め切りで一般の意見募集が行われたが、これらの意見も参考にしながら、今度は2月末までに長野県知事としての意見を出す。その知事意見を取りまとめるための委員会で、11月4日には現地視察の後、大鹿村で1回目の会議が行われている。当初の予定では、3回目となる今回で意見集約することになっていたので、どのような形でまとまるのか知りたいと思って傍聴に行ったのだけど、委員側とJR東海側との議論がかみ合わず、2月3日にもう一回開かれることになった。根本的な食い違いは、環境アセスに対する姿勢の違い。
 第2回審議での委員意見と事業者等の見解要旨の資料説明の後、まず片谷委員が、「気象調査は、1週間連続×4季の調査を基本としています。但し、常時監視局の分布、保全対象施設の分布、工事の規模、地形の状況等を考慮し、一部通年観測を行うことを検討します」とされていることについて、過去のアセスでも、そもそも基本は通年であって、現実的には条件によって1週間×4季になることはあるけれども、これでは逆だと指摘。
 また、塩田委員が騒音などの環境基準の地域類型が指定されていない地域についてどう考えるのかと質問。今回の対象地域は山岳地帯でほとんどが地域類型が指定されていない、非常に環境の良いところであることから、ただ基準を守ればよいとすれば、現状の環境を守れないことになる。それに対して、JR東海側からは「実行可能な範囲でできるだけ環境影響の低減・回避を図る」と、いつものパターンの曖昧な回答。
 次に富樫委員が、評価項目の選定で、工事の実施段階のトンネル工事部分について、評価対象に入っていない理由を、「地形・地質についてトンネル工事においては、工事完了時の改変範囲と大きな差異が生じないことから鉄道施設の存在に対して予測、評価を行うこととしています」としていることに対して、トンネルを掘るということそのものに対して、どうして予測・評価の対象から外してしまうのか、地表からは見えなくなるかもしれないけれども、トンネルを掘ることそのものが非常に大きな地形・地質改変であり、ほかの要素にも影響を与えるものではないかと指摘、環境影響評価項目の選定を示す表に○印を付けるべきだと主張される。JR側は、○を付けていないからといって、やらないという意味ではないと答えたため、きちんとやるつもりがあるなら、○を付ければよいではないかというやりとり。
 亀山委員長からも、景観や人と自然との触れ合いの活動の場という項目が、工事の実施段階で評価項目に選定されていないことについて、「工事中は、建設機械や工事用施設を配置することになりますが、工事延長が長く、機械や施設の配置状況も変化するため、景観や人と自然の触れ合い活動の場へ影響を与える同一の要因が永続的に存在するものではなく」と回答されていることに対して、工事期間が長く、沿線市町村からの意見でも工事中の景観影響を懸念する意見がいくつも出ていることからいっても、やはり評価対象にすべきと指摘。
 また、大塚委員からは、今回提出された動植物の既存文献調査結果資料の収集文献の中に長野県レッドデータブックの非維管束植物・植物群落編が入っていないこと、「植物の調査対象は、維管束植物であるシダ類及び種子植物を基本に考えていることから、『高等植物』と記載しています」とされていることに対して、納得できるものではないと言われ、「高等植物」ではなくて「植物」とすべきで、再度ご検討願いたいと。JR側は準備書において検討させていただきたいとの回答。

 などなど、方法書の評価項目について議論がかみ合わない。指摘された評価項目は18項目に及んだ。委員側が、あくまでこの方法書の段階で評価項目の選定の表に○があるかないかが重要だとするのに対し、JR側は、原則としては○を付けたものを中心に影響を予測・評価するが、それ以外のものを評価しないというわけではない、準備書において適切に対応するという回答に終始して、平行線の状態が続く。委員側から、これらの項目についても評価対象にして適切に予測評価するということを、準備書の段階でといわれても確かではないので、修正版を出すなり、はっきり明文化してほしいと要求。あるいは、他県に合わせるために方法書を変えられないというのならナンセンスで、それぞれの地域の実情に合わせて変えるべきだという意見に対して、○を付けたものと理解していただいて構わない、また他県と合わせるということではないが、いったん出したものを出し直すということについては、また18項目全部かについては検討させてほしいとJR側が返答を留保したため、次回もう1回となった。
 
 この会議は公開で行われているものの、審議が行われている県庁は現地から遠いせいか、傍聴に来ている人はごくわずか。ただし、当日の資料も含めて、ホームページで全部公開されている。少し時間差はあるけど、当日の資料と音声は比較的すぐにアップされる。議事録は11月のものがアップされている。現地視察の際のやりとりも文字化されていて、「青木川についてはこれから計画の中において明かりで行くのか、トンネルで行くのかといったことについて検討します」となっていた。中央構造線付近はトンネルと、8月5日に長野県分を加えて出された環境配慮書6-27ページに書かれていたはずだけど、こんな重要な項目についても未定ということか。ちなみに、今回は関係市町村からの意見や動植物の既存文献調査結果なども資料として出されている。