20世紀最大の哲学者といわれるウィトゲンシュタイン研究の第一人者とされ、哲学をわかりやすい言葉で語る野矢茂樹・立正大教授(64)は最近になって「つまらない奴でいいじゃないか、と思うようになった」と話しています。
NHKラジオ深夜便「明日へのことば」で「人生のみちしるべ、さあ、立ち止まって考えよう!」のテーマで、野矢さんは自分の人生を振り返りました。「若いときは自分が面白い奴、魅力的な奴と思われたい。そう思われるように、自分を自己演出していました。それが、最近ではそういう振る舞いは居心地が悪い、つまらない奴でいいじゃないか、と思うようになった」
東京大学時代の恩師で、座禅の師でもある末木剛博・東京大学名誉教授(故人)の「最近、ようやく自分がやっていることが取るに足らないことか、覚悟できました」と発言したことに共感を覚えるといいます。末木さんの「生きているだけで、もうけものと思わなくちゃあ」にも引かれたそうです。
振り返れば、私もおもろい奴、魅力的な奴と思われたくて、自己演出をしていたと思います。周囲には、キャラが立つというか、個性的というか、変人、奇人、くせ者がごろごろいましたから、ごく普通の人の私は自己演出しないと「周囲から埋没しかねない」と考えたのでしょう。
それが、定年になり、会社の肩書がなくなると、甲斐性がなくなり、自己演出する必要もなくなりました。等身大の自分を見つめることで、ずいぶん気が楽になりました。野矢さんのいうように「つまらない奴でいいじゃないか」で、70代を生きようと思っています。