車いすに乗った80代半ばの男性、ヘルパーの男性に押されてデイケアセンターのワゴン車のリフトに乗せられ、車に乗り込みました。この男性はつい最近まで、自分の足で歩いていたのです。ワゴン車に乗る前に会ったとき、男性は「えらいこっちゃ、歩けんようになった」と私に向かって言いました。
男性は借家を何軒か持っており、80代になっても家賃の受け取りに出かけるほど足は達者でした。それが、ここ1年余りで急激に体力が衰えたといいます。一番の原因は、肺炎で三回も緊急入院したことでした。そのつど数週間の入院生活を送ったことで、脚の衰えが目立ってきました。
病院では、筋力の衰えを防ぐリハビリ訓練はしなかったそうです。退院後は、努めて歩くことを心がけようとしたのですが、少し歩くと息が切れるありさまで、続きませんでした。
それで、自転車で出歩くことにしたのですが、今度は段差で転倒し、手足に打撲傷を負いました。自転車に乗るのも怖くなり、家で過ごす時間が増えました。
ここから車いすになるまでの時間は思った以上に早かったといいます。次にお会いしたときは、車いすでした。再び歩けるようになるのは、年齢から考えても難しいかもしれません。
デーサービスセンターでは、男性が体力を維持する運動に熱心に取り組んでいると聞いています。再び、自分で歩くことができる日が来ることを祈っています。