中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第8回紬きもの塾ーー布を織る

2015年12月02日 | 紬塾 '13~'16
   
初冬の景色の中で、先々週の土、日2日間に渡り、機織りの実習をしました。
その報告です。(上の画像は、庭の真ん中に物干し竿で見苦しいですが、、糸を干すために最優先の場所なのです。。。^^;)

いつものように3寸ほどの布をそれぞれの設計図を元に織りました。
同じ条件でお話しても、受け止め方もそれぞれで、随分違った雰囲気の布が織り上がりました。
染織実習の感想文を書いてくださった方のものは講評と合わせてご紹介いたします。

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「初めての機織りでした。
最初は緊張して肩に力が入ってしまい、杼はうまく通せないし、横糸を通した後に踏みかえ忘れて打ち込んでしまうし、糸は絡まるし、大変でした。
やっていくうちにだんだんリズムが掴めてきて、楽しくなりました。
特に「耳のところは籠を編むように」という先生の言葉通り、耳の部分の糸の調子がうまく整うと、また一つ織り進んだ実感が湧いて、とても嬉しかったです。
自分で紡いだ糸が太かったり細かったりで、どう見えるか心配だったのですが、織り進むうちにそのむらが素敵な風合いに見えてきました。
もっともっと織りたい気持ちでしたが、糸が終わり機を離れて帰宅する時は、子供を置いて帰るような気分でした。
また会える日まで、撮った写真を見て過ごそうと思います。S.T」

<講評>最初は緊張してとても力が入っていましたが、少しずつ糸が布の形に、そして色が縞模様を生み出す光景を見るに付けだんだんいい感じでリズムに乗って織っていました。
自分の糸と色糸を交互に混ぜながら味わい深い布になりました。



設計図の手直しをしてから織りにかかりました。
色糸も上手に使って雰囲気のあるオシャレな布が出来上がりました。



「今は、織ることに向きあった1時間ほどの至福の時間に感謝し、自分で織った裂に感動しています。そして、この感謝や感動は織るという経験だけでは決して感じられなかった気持ちであり、4月からこれまでの7回の紬塾があったからなのだと思っています。
先生の紬塾では、毎回テーマがあり、糸を知る、糸を紡ぐ、縫う、染める、設計する等、糸に真摯に向き合い、着物を着るために必要なことを知る時間を持ちます。自然と向き合い、手仕事と向き合い、自分と向き合う。現代の生活の中で、忘れてしまった大切なことを感じる、考える、そんな貴重な時間でした。その集大成が自分の手で、自分で紡いだ糸を、自分の心のままに織るということでした。
初めて機で織った裂は美しく、愛おしいものでした。この経験を通じ、私は更に紬織に魅せられてしまいました。織りを通じて、自分と向き合い、今の私の心を織る。その世界に私は心の安らぎを感じました。いつの日か、自分で着物や帯を織りたい。必ず実現したいと思います。
中野先生、素晴らしい世界に導いていただき、本当にありがとうございました。K.T」

<講評>やはり色糸を多用してデザインをされました。
最初足の踏み変え方にも筬打ちにも力が入ってしまい、経糸の節に筬が引っかかり糸を切ってしまいました。経に節糸を多用しているので初心者には本当にむずかしいと思います。
でもそのおかげで、初心者でも風合いのある布を織ることができるのです。
杼の投げ方も弱いと途中で止まってしまいます。でも最後の方は上手に織っていました。
紬の着物を着ることも大好きということですので、これからも糸に力のある紬を着て欲しいと思います。




「染織実習の「糸つむき」を楽しみに紬塾の申し込みをしました。
写真でしかみる事がない道具を実際使いました。
木綿とは違う糸の強さを感じました。     
先生が細すぎない太すぎない糸をつむぐよう、声をからしてご指導下さいました。
この結果は染め、織りの実習でより実感しました。
また、先生は入塾の際「五感で学んで欲しい」と言われました。
そのご指導を沢山いただきました。
私の細胞は以前より活性したように思います。T M」

<講評>
毎回遠くから真剣な面持ちで通ってくださってます。
機を織るために踏み木に乗せる足元も木綿の足袋を用意されました。
木綿を織る経験があり、力強い打ち込みで、やや力を弱めてもらいました。
色糸も多用したかったようですが、「自分の糸を大切に使い切ろう」という声がけをしましたので、予定のデザインとは大きく変わってしまいました。が、かえって素敵な布になったと思います。思いがありすぎてもそのまま全部を盛り込もうとすると抜け感のないものになってしまいますので、ご本人も納得されてとても嬉しそうに織っていました。良かったです。



<講評>この方も織りの経験はあるのですが、自己流の織り方がなかなか直せずにいましたが、なんとか織り上がりました。カラフルな強い個性的な布になりました。

杼の持ち方、置き方、筬の持ち方、打ち込み加減、足の踏み変えのタイミング、それは糸や機の構造や耳をきれいに真っ直ぐにタテヨコを交差させるための意味のあるやり方なのです。
機織りは誰にでもできるのですが、美しい布を織るためにはどの作業も無駄なことをしてはならないと思います。些細と思われる小さな仕事も次の仕事へ全て繋がっているのです。



「「なぜ中野先生の布が好きだと感じるのか、本当によい布とはどういうものか知りたくて、実習に参加しました。
 体調管理がうまくできず、織りの実習の前からお休みする事になってしまったのですが、先生のご厚意で設計のところまでさせて頂き、織って頂きました。
 布となった画像が届き、見てみると、最初は自分で設計したデザインが目に入り、なんだか算数的な、定規で描いた絵みたいだな‥と、恥ずかしくなりました。思い出すと、設計していた時は、一生懸命計算していました‥。糸の色や手触りを感じることが、設計するときに大切なのだと思いました。
 それでも、自分で紬いだ糸は、無事に布になっていました。経糸と合わさって、糸の形が見える、陰影を持った布です。触ってみたくなりました。それから、初めて見た、繭からほどけていく糸の形を思い出しました。小さな者のつくった、ちいさなかたち‥とても印象に残っています。これから布を織ることがあれば、忘れたくないかたちです。
 実習を通して、たくさんの大切なことを教えて頂きました。次世代にも語り継ぎたいことばかりです。ありがとうございました。K.M」

<講評>Kさんも遠くからご参加いただいていたのですが、途中から特別な事情で参加が難しくなりました。
織りをとても楽しみにされていましたので、メールのやり取りをし、ブログに上げてある色糸や地糸を画像から選んでもらい設計図を書いて送ってもらいました。代理で私が織りました
糸もとても良くつむがれていて、ほぼ設計図通りの布になりました。
シンプルですっきりした布ですが、実際の布を見ると奥行きのある美しい布になったと思います。

糸をつむぎ、草木で染、自分でデザインし、自分で織る、という体験を、本当に美しいものはどこから来るのかを考え、これからの暮らしにも生かすきっかけとしてもらえたらと思います。
自分の布は額装にするなり、小物にするなり身近で時々見つめて欲しいです。








コメント
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