中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第3回紬塾 「伊達締めを縫う」と「糸紡ぎ」

2010年06月18日 | 紬塾 '9~'12
今回の紬塾は「基礎コース」と「染織コース」の2コースがありました。
「基礎コース」では次の3つのテーマでお話と簡単なワークショップをしました。
1.「きものをとことん着尽くす」ことについて
2.麻の布で伊達締め(伊達巻き)を作る
3.腰紐について――幸田文の文章から

また、「染織コース」は糸紡ぎの実習を行いました。
ここでは「基礎コース」2.の「麻の布で伊達締め(伊達巻)を作る」で話したことを中心にご報告します。


夏の間は帯の下に汗をかき、ほうっておくと着物や帯に汗染みができますから、
夏の伊達締めは汗を吸い取るための吸湿性と発散性が必要です。
その意味では麻の生地のものが一番いいんです。
伊達締めには汗取りの役目もありますから。案外大事なんですね。



母が遺した古布の中にあった縮緬地で、私が縫った伊達締めをみなさんに見てもらう。


手持ちの布や麻100%のゆかたの白生地で伊達締めを縫ってもらいました。
下の写真は2人一組で裏返す作業をしています。



長襦袢にする伊達締めは、まずすべらないということが大切です。
みなさん固い博多織のものをよくされるようですが、
すべるし苦しいしで、あれは襦袢にはお奨めできないです。

たとえ紐1本でも、縫ってみると、使うときに
「これ、私が縫ったもの」と愛着が持てます。
自分もちょっとかかわっているというのが愉しいんですね。
だからたとえば、作っているときに長さが足りなくて、はいだりしますね。
そのはぐっていうのが、ひと手間かかるけれど面白いんで、
はいだところにちょっと赤い糸を使って二目落としで縫ったりすると、
かわいいかなあと思ったりして。

このちりめんは洗って縮んだ状態で、肉厚状態なんですが、これで充分なんです。
これは昔のもので、シボが強く出ていて布同士が密着しないから、
それが通気性になるんです。アイロンをかける必要もほとんどありません。

伊達締めや腰紐の素材をみつめることは、きものの布を知ることでもあります。




腰紐について―――幸田文の小説『きもの』から


「腰のどこへ紐を渡せばきりりと軽快に感じるか…」(小説からの引用文)

 腰紐はウエストで締める場合と腰骨で締める場合があります。
私は暑い時期に長い着丈のものを腰ではしょりあげて溜めるのはいやだという感覚があって、
紬とか木綿とか麻とかのすべらないものの場合は着丈を微妙に違えて仕立てると、
着やすいものになります。これは経験していかないとわからないことですが。
腰骨に紐をかけるということは、ウエストまでの何センチかの溜りが違うじゃないですか。

長いものをウエストのところでたくし上げる、
おはしょりを一重にしましょうといってたくし上げますが、
たくし上げたものをウエストで留めて、その上から帯を巻くというような着方は、
特に暑い時期など私はいやなので、むしろおはしょりは2枚をきちっと重ねて
ウエストに溜めないようにして着るんです。
おはしょりを一重に上げる人は、上げた分を押さえるために
紐をもう1本使ったりもするんですね。

ウエストがくびれている人は補整にはなると思いますが、
私はおかげさまでその必要はないので
紐を締める場合も、腰の脇のところでクッと締めるぐらいの強さというのは、
キリッと締まってゆるまないんです。それを一旦前にもってきてから、
一重目がしっかり締まってないのを前だけで締めようとすると、
グズグズなのにヘンに苦しいという感じになります。
小包に紐をかけるときも一周目を角でクッと締めて、
それがゆるまないようにして2周目も角でクッと締めると、しっかりと締まるんです。
それと同じです。今はなんでもガムテープで止めるので、
そういう暮らしのわざを持つ人も少なくなってきてますが…。




糸紡ぎの実習でN.K.さんが紡いだゆったり大らかな糸です。



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