
おもしろい。読ませる本だ。
著者城戸久枝氏の父親城戸幹氏は中国残留孤児だった。彼は日中国交正常化前に自力で各方面に働きかけて日本にいる肉親にたどり着いて日本に帰国した。
本の内容は、著者が父親から彼の半生について話を聞き、中国留学の機会を利用して父親の中国での人生をたどり、著者自身が中国人や中国残留孤児の方々と出会って日本や中国について考えを深めていくという記録。ノンフィクション。
この文庫本の最初の方のページには城戸幹氏や関係者の写真が何枚かあるのだが、俺は養母の付淑琴(フースーチン)の写真を何度も見てしまうのだ。著者の文章から彼女(著者にとっては祖母にあたる女性)が息子孫玉福(スンユイフー)(城戸幹氏)を生きがいにして来た事は間違いない。豊かな愛情を注いで育ててきたに違いない。日本の肉親の居所がわかって玉福が日本に帰国する時や、著者が両親といっしょに中国の故郷を訪ね帰国する時の、付淑琴(フースーチン)の心情を想像すると読んでいても涙腺がゆるむ。玉福にしても帰国してしばらくは日本語が出来なくて意志の疎通が出来ず、能力を発揮して出来る仕事に就けず、遠い中国の養母付淑琴(フースーチン)のところにすぐにでも戻りたくなったという事が本人の日記にも記されていたという。
中国共産党政府の言ってる事ややってる事には嫌悪感を持つものの、一般の中国国民(人民)は普通の人々なのである。日本人の孤児を我が子として豊かな愛情をもって育ててくれた人々はどのくらいいたのか。同じ日本人の一人としても感謝申し上げたいくらいだ。
後半は戦争とは?国家とは?教育とは?と問い続けるような内容だと思う。日本政府の中国残留孤児の受け入れ態勢にも疑問を呈しているようだ。
読んだら何か書こう。いま300ページ。あと200ページある。