Y男の日誌

映画を見た、本を読んだ、どこに行った、何か考えたなどなどのY男の行動記録。政治の話題も。暇な時にしかアップロードしない。

『影法師』

2012-07-12 07:05:34 | 読書


百田尚樹の時代小説。
主人公勘一と親友彦四郎の友情物語。
架空の茅島藩の下級武士戸田勘一と中級武士磯貝彦四郎。

身分による差別の激しい藩。勘一は少年期に目の前で上級武士に父親を殺害される。元服してやがて家督を継ぐことになるが下級武士で赤貧状態。

一方、彦四郎は学問も剣術も何でも苦もなくやり遂げる。性格も優れていて全く非の打ち所がない。しかし、彼は長男ではないため他家に養子に入るしかない。養子に行く先が無ければ長兄に従って部屋住みとして禄高も無いまま肩身の狭い生活を送るしかない。

結局彦四郎という人は何をやってもうまく出来る才能があったが、それを生かす機会をものに出来なかった。養子には行けなかったのだろう。

下級武士だが家督を継いで勤め先のある勘一を彦四郎は応援し始める。勘一を狙う刺客を殺したりするのだが、勘一にも誰にも知られないようにして行うから、誰からも認知されない感謝もされない。自分を無きものにしてでも友人が有利になるように味方する、応援する。

その応援の甲斐あって勘一は異例の出世をしてついには家老にまで上りつめる。自分が運よく切りぬけてきたと思っていたさまざまな事件の裏に彦四郎の存在を知った時、既に彦四郎は不遇のまま病死していた。

彦四郎みたいな人はいるのだろうか?自分を犠牲にしても友人の力になるという人だ。彼は自分の思いを遂げてはいるから満足ではあったのだろうか?

勘一の藩校時代の先生が彦四郎をみて、あらゆる才能が豊かなのに将来何も成し遂げる事なく一生を終えるのではないか?と予感した通り、彦四郎は特筆すべき業績がないまま一生を終えてしまった。勘一のような人生を送るのがまれであり、彦四郎のように才能を生かしきれないで時間ばかりが過ぎていってしまう人生が多いと思う。


評価を付けるとすれば★★★(五段階評価で)。設定が極端で作り話だなあと強く感じられてしまう。しかし、自分を戒めなくてはという気にもさせられた。
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