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ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

日本の経常収支について考える

2018-03-08 17:58:07 | 経済

1月の日本の経常収支が発表になった。7年ぶりの大幅な経常黒字と言っているが、中身は第1次所得収支が1.5兆円の黒字、貿易収支は7000億円程度の赤字ということで所得収支が大幅黒字という状況はますます顕著になっている。この点は2月9日にも書いたのだが今回はこの第1次所得収支についてもう少し考えを深めてみたい。

第1次所得収支は配当金や利息の受け取りと言われているが、中身を見ると、日本企業が海外企業を買収したりして利益を得るFDI(Foreighn Direct Investment)による利益はわずかで、大部分が債券などの利息や配当だという。

この配当を受け取っているのはどういう組織なのかを調べようとしたが見つけられなかった。以下は私の推測である。私は日本の海外投資が増えているのは、GPIF(年金を管理する機構)などがアメリカ国債などの外債を大量に購入しているからではないだろうか。大手の銀行なども買っているように思う。これは日本国内の金利が非常に安いからで日銀の低金利政策と関連していると思う。日銀が低金利政策を続けているのは、企業が借金をしやすくなって、日本国内での資金の循環が良くなることを狙ってのことだが、実態としては低金利は貸し出しには回らず、外国債を買うという行動につながっているのではないかと思う。

アメリカやヨーロッパは金融緩和の出口に向かっており、金利を引き上げる方向である。特にアメリカは具体的に金利引き上げを始めている。このままでは金利差が開くので、ますます大手金融機関の外債購入が増えるだろう。低金利政策は国内の資金循環の活性化にはつながっていないと思う。そうかといって、日銀が金利引き上げに動くと、円高になり、日本の実体経済に悪影響が出る。今は日米の金利差が開いているのも関わらず円高方向に向かうという不思議な動きになっているので、ここで日本が金利を上げるというのは動きにくいだろうが、いつかは金利引き上げに動かないといけないのだろうと思う。

2月9日の時には「第1次所得収支が黒字なのは良いことだと思う」と書いたのだが、これは必ずしも良いことではなく、むしろ日銀の苦境を表しているのではないかと最近は感じている。

このあたりをきれいに解説した記事は無いものだろうかと思っている。


研究開発と企業の利益

2018-02-26 09:35:17 | 経済

今朝の日経の一面トップは「研究投資、3割回収できず」というものだった。

これは、6-10年前の研究開発費の合計が2500億円を超える企業で、直近の5年間の利益合計がどうだったかを計算したもので、3割が利益のほうが少なかったということを示したものである。利益を生むまでには5年くらいかかるだろう、という見立てである。

この記事は一つの見方であるが、いくつかおかしな点がある。まず、研究開発費はコストで、利益はコストを差し引いた残金なので、回収はできている。それよりももっと本質的な問題は、「研究開発費が利益の厳選なのか?」という根本的な疑問である。

日経の当期利益ランキングベスト10(2018年1月22日)を見ると、1.トヨタ、2.ソフトバンク、3.NTT、4.日産、5.ドコモ、6.ホンダ、7.KDDI、8.三菱商事、9.JT、10.JR東海 である。これらの内、ソフトバンク、ドコモ、KDDI、三菱商事、JT、JR東海は今回の日経の調査対象に入っていない。つまり、研究開発費が小さいということである(ドコモはNTTの子会社なので対象外とされている)。要するに横軸に研究開発費、縦軸に利益、を取っていろいろな会社をプロットすると殆ど相関関係が無いバラバラな図になるのではないか、ということである。

それなのに研究開発費と利益の関係をプロットしてもあまり意味がないと思われる。記事ではAppleの利益/R&D比率は非常に高い、とか書いているが、Amazonの同じ数値は相当に低いはずである。しかし、AmazonのR&Dが事業に貢献していないとは思えない。もっと切り口を変えて分析するべきであると思う。

これを1面トップに持ってくるなんて、「日経は大丈夫か?」と思う。

 

 

 


株安はバブル破裂か?

2018-02-10 15:30:26 | 経済

最近、アメリカを発信源として世界の株価が急落している。どうなるかが気になるので「ラジオ日経」を聞いていると、色々な人が色々な見方を言っていて興味深い。

一番多いのは、「アメリカ経済は好調だし、失業率も小さい。企業の利益も出ている。誰かが株安を仕掛けただけでいずれ戻る。」という意見である。私はよく理解できていないのだが、「株価の変動カーブから見て25日線を切って200日線も切るようになったので様子を見たほうが良い」という人もいる。「これはバブルが弾けたのだ。大きく下がる。」という人もいる。どれが正解なのかは分からない。ただ気になったのは「バブルがはじけた」と言っている人の意見である。

バブルがはじけるというのは企業の業績とは直接関係はない。実体経済がいくら良くても、借金をして株を買っているような人がたくさんいれば、株価が急落すれば資金繰りに困り、優良資産でも売らざるを得なくなる。そうするとまた株価が下がる。それで破産する人が出ると、金融機関の業績が悪化する、という悪循環に入る。個人ではなくファンドのような組織がやっていると金額も大きくなる。リーマンショックの時には「サブプライムローン」という資金の無い人が返済の当てのない住宅ローンを買って、返済前に住宅を売って高く売れれば差額が儲かる、というような資金繰りが詰まって、破産する人が続出し、貸し手の銀行が倒れたのが引き金となった。

今回の状況で、バブル的に資金を回している人(組織)がたくさんいるのか、ということが問題になるのだが、バブル論者は「いる」という。根拠の一つは仮想通貨の急騰である。トランプ大統領もリーマンショック後に規制された金融機関の危ない資金循環を認める方向である。一番私のアンテナに引っかかったのは「株高になるのは株を買う人が増えたからだが、通常なら債権を売って資金を下部に回すというような、資金シフトをするので債券安が起こるはずだが、それは起こっていない。資金が無いのに無理して株を買っている人が多いのではないか」という意見だった。

株価が下がっても倒産する企業などが出なければ、大きな問題にはならず、いずれ戻ってくるのだろうが、倒産が出ると債権者に損失が広がって、実体経済に影響が広がってくる。実際に倒産が出るところまで下がるかどうか、予想はできないが、危ない感じはしている。


国の経常収支、貿易収支よりサービス収支・所得収支を重視すべき

2018-02-09 10:55:36 | 経済

日本の2017年の経常収支が財務省から発表され、21.8兆円の黒字だった。経常収支には貿易収支、サービス収支、所得収支の3種類があり、それらの合計である。2017年で言うと、貿易収支は約4.9兆円の黒字、サービス収支は7000億円の赤字、第1次所得収支は19.7兆円の黒字であった。

貿易収支はモノの売買、サービス収支はサービスの売買、所得収支は投資の配当金などである。数字が合わないが、項目としてはこれらに加えて第2次所得収支という項目があり、これは海外支援や寄付などである。これが2兆円以上あるのでバカにできない金額である。

これらの内、一番有名なのは貿易収支でトランプ大統領がやり玉にあげたりしているが、もっと他の収支も注目してよいのではないかと私は思っている。以前は日本は貿易で稼ぐ国で、貿易収支が大幅に黒字でアメリカの制裁の対象になったりしていたのだが、最近は貿易黒字は減少してきて、原油が1バレル100ドル以上だった時期には貿易収支も赤字になっている。原油価格が下がったので、再び貿易収支は黒字になったが、最近また原油価格が上がってきたので2018年は貿易黒字は減るだろうと思っている。

サービス収支は知的財産権の収支の占める割合が大きく、Windowsのライセンス料のマイクロソフトへの支払いなどが大きく、日本は大幅な赤字だったのだが、最近は赤字がどんどん減ってきている。これは、日本の知的財産権の収入が増えてきたからだが、中身は特許料ではなく、トヨタなどの海外子会社が得た利益を「ブランド料」のような名目で日本に還流させているものの割合が大きい。要するに日本企業が世界進出して利益を上げる金額が大きくなってきたということで、評価してよいと思う。

ここで思うのは貿易収入は「売り上げ」なのに対してサービス収入は「利益」であるということである。通常の企業活動で言えば「売り上げ」より「利益」のほうがはるかに重みが高い。利益率を10%としてもサービス収支の重みは貿易収支の10倍くらいあると思う。アメリカのサービス収支は黒字が続いており、アメリカ企業はアメリカに資金を戻すと課税されるので、これまで現地で得た利益をそのまま留めていた。つまり実態としてはもっと大きな黒字だったはずである。昨年のトランプ減税で企業の税率が下がったのでアメリカへの送金が増えて日米のサービス収支は、日本から見て来年は大幅に悪化するのではないかと思っている。

第1次所得収支は株の配当などである。昨年の日本の黒字は大部分がこの分野で、日本の第1次所得収支は21世紀に入って一本調子で増加している。日本の株式市場などに外国人投資家が投資をしていてその影響が大きいなどと言われているが、実は日本人が海外に投資しているほうがずっと多いということである。これが良いことなのか悪いことなのか、私には判断できないが、低金利がずっと続いていて、日本国内で投資してもうまみが無いので海外に投資する金額が増えている、ということを意味しており、投資資金が海外に逃げるという意味では政策的に考えるべき問題ではないかと思っている。この金額も「利益」に相当するので重みは高いうえに、金額の貿易黒字の約4倍ある。

要するに貿易収支ばかりを言わないでサービス収支や所得収支にももっと目を向けて日本経済の状態を考えるべきではないか、と感じている。


2017年の技術

2017-12-17 13:19:14 | 経済

「2017年の日本を振り返る」で書いたように、私は日本の産業が今一つ元気がないのは世界的な技術革新の波にうまく乗れないからだと考えている。2017年の技術革新で何が起こったかを簡単に振り返ってみたい。最大の技術進化は人工知能だろう。技術的には2016年から起こっていたのだが、今年になって日本でもスマートスピーカが発売されたりして人工知能が身近になってきたと思う。このブログにも何度か書いたように囲碁の分野では人工知能が完全に人間を凌駕した。人工知能技術はまだまだ広がりを見せ、多くの分野で利用されるようになることは間違いないだろう。

巷には人工知能の解説本や記事があふれているが、あまり中身がないのに人目を引こうと目立つタイトルにするようなものが多いような気がする。専門家の意見でもあまり納得できないものが少なくない。電子情報通信学会はこの分野では専門家が集まる集団の一つ(本当の専門家は人工知能学会)だが、彼らが100周年記念特集として50年後の未来をいろいろ議論した記事が学会誌に出たのだが、私にはピンとこなかった。

学会誌ではSF作家などと対談した後で将来はどのようになるかを座談会で議論しているのだが、50年後ということで倫理的な話や感情を扱えるか、というような技術的な目途のない話を根拠なく予想するような話と、目の前の問題を解くような話に2分されていたような気がする。人工知能がどのように導入されていくかを考えると、産業として成立する、つまり人工知能の活用によって儲かる分野から入っていくに決まっている。そして儲からない分野ではなかなか普及しない、というのが当然の視点だと思うのだが、そのような産業的視点からの見方は座談会では出ていなかった。50年後特集で一番良いと思ったのは、かつて私の同僚だった筑波大学の岡本英司氏の寄書だった。

どのような分野で人工知能を導入すれば儲かるか、と考えたときに最も分かりやすいのは人間を置き換えて人件費を減らすことである。つまり、肉体的ではなく、知的作業で、適度に難しい作業が最も導入されやすい分野である。そしてその分野で働いていた人たちは別の仕事を探さざるを得なくなる。これは中間層上位の没落を意味しており真剣に考えるべき問題だと思う。

今年、大きな話題となったもう一つの技術が仮想通貨である。昨年の今頃は10万円だったビットコインが今は200万円近くになっている。私は今年の6月頃にビットコインの仕組みを調べてみて、技術的な支えとなっているブロックチェーン技術は将来的に使われていくだろうが、ビットコインという仮想通貨自体にはそれほど発展性はなく、バブルっぽいと感じていた。当時ビットコインは30万円ほどだったので、私の予想は大きく外れたわけだが、今でもビットコインは怪しげで暴落の可能性が高いと思っている。アマゾンの取引をすべてビットコインというのは取引件数が多すぎて無理だと思うが、特定企業の取引くらいには使えるだろうと思う。例えばグーグルの支払いは原則一月に1回なので全てビットコインというようなことは可能だろうと思っている。


楽天の携帯電話事業参入は成功するか?

2017-12-15 09:53:52 | 経済

インターネット通販大手の楽天が携帯電話事業に参入すると発表した。同社はこれまでMVNOといってドコモの回線を借りて格安スマートフォンサービスを提供する事業は行っていたが今回は総務省から電波免許を受けて自前の基地局を作ってサービスをするという本格的な事業に参入するとのことで、6000億円を投じるとしている。周波数帯は1.7GHz帯と3.4GHz帯らしい。

この発表を受けてドコモや、KDDI、ソフトバンクの株価は競争が激化するとして下がった。そして当の楽天の株価も下がった。これはうまくいかないだろうとみる人が多いことを意味している。過去には世界最大のグローバルオペレータ、ボダフォンが日本のオペレータとして参入したがあまりうまくいかずにソフトバンクに売却している。ボダフォンよりもかなり資本力で劣る楽天の成功を危ぶむのは当然かもしれない。しかし、私は結構うまくいく可能性があると考えている。

その理由は、スマートフォンサービスがかなり技術的に容易になっているからである。携帯電話サービスは技術的には非常に難しい。しかしデータサービスはベストエフォートなのでかなり容易になっている。そしてLTEでは電話もIPになっているので容易になっている。問題は6000億円で全国網を構築できるかという点だが、おそらく他の3社に比べれば相当に見劣りするだろうことは間違いない。楽天はMNVOを継続して、田舎ではドコモの回線を利用してサービスを提供するつもりだろうが、本格的ライバルとなった楽天に対してドコモが今まで通りの契約を許すか、このあたりは政府の意図が大きく影響しそうに思う。安倍内閣は楽天を護るだろうが総理が変わるとどうなるか分からない、という気がする。

営業は楽天でも経験があるのでそれほど大きな問題にはならないだろう。問題は基地局を置く場所を確保できるかどうかである。世界では基地局用の鉄塔が別事業になっているので参入しやすいが、日本ではまだ別事業にあっていない。これがどの程度難しいか、ある程度見通しが立っているのか、あまり検討していないとすると相当に苦労するだろうと思う。私は楽天が通信事業に関して電力会社の資本を受け入れ電柱や高圧線の鉄塔を利用するようなことを考える必要があると思う。

楽天に有利な面もある。それは3G無しの4G技術だけでサービスを提供できる点である。これはシステム運用コストを大幅に下げる。インドでは4G専門のJioという会社が無料でLTEのサービスを始めて急速に加入者を集め、他の事業者に対して大きな影響を与えている。インドの場合にはリライアンスという大きな財閥が資本力を用いて無料サービスを始めて後から有料にする戦略を取っている。有料化後も他の事業者より安い価格でサービスを提供しているので、インドの通信事業者再編につながっている。

楽天がそこまで大胆なことはできないだろうが、十分なエリアをサポートするシステムが構築できれば運用コストは他社より安くなることは間違いなく、成功の道を歩む可能性は高いと思う。


2040年以降ガソリン車販売禁止はやりすぎではないか

2017-08-15 18:16:39 | 経済

イギリスとフランスが2040年以降はガソリン車(ディーゼル車を含む)を販売禁止にすると発表した。電気自動車に向かう政府の意志を明確に示したものだが、イギリスはともかく、フランスではやりすぎではないかと私は考えている。

それはどうしても電気の供給がままならない場所や場合が出てくると思うからである。停電がしばらく続くと自動車が走れなくなるのでは困る。ヨーロッパではそれほど大きな災害は起こらないのかもしれないが、山奥で電気の通らないところをなくすのも大変だろうと思う。やはり燃料を積んでいない車は停電には弱いと思う。ハイブリッド車が妥当だと思うのだが、ハイブリッド車を締め出そうというヨーロッパ勢の産業政策かもしれないと思う。

トヨタなどは電気自動車の開発には出遅れているので困るのではないかと言われているがが、燃料電池車と電気自動車のハイブリッドを推し進めるチャンスかもしれないと思う。案外フランスで水素ステーションの普及が進むかもしれないという気がする。燃料電池車では日本が進んでいると思うのでこの点では問題は大きくないように思う。

日本の自動車産業の課題は推進力が変わることではなく自動車ソフトウェア化だと思う。自動運転は確実に来るだろうし、この分野では恐らく日本勢は勝てないだろうと思っている。これをトヨタがどう切り抜けるか、うまく切り抜けられないのではないか、と感じている。


東芝の経営者の動きから経営者の人選を考える

2017-03-31 09:56:05 | 経済

東芝が再三決算発表を延期したうえ、半導体も、ウェスチングハウスも切り離して身を縮めようとしている。しかし、いったいどういう将来ビジョンを描いて様々な手を打とうとしているのかは一向に見えてこない。東芝の粉飾決算(当初は不適切会計と呼んでいた)が明らかになったのは約1年半前だが、それ以来、最初は第3者委員会を抱き込んで抑え込もうとした。これはあまりうまくいかなかったがそれなりのところで収まった。しかし昨年の決算の時点でアメリカの原子力発電の大幅赤字と不正もあるらしいことで決算発表ができずに上場廃止や、債務超過の恐れも出てきて、儲け頭の半導体事業を売却することで切り抜けようとしており、昨日臨時株主総会を開いて半導体事業の売却が承認された。

東芝は問題事業も抱えているが、技術力もあって良い事業も抱えており、最初に「不適切会計」が報じられた時には私も「東芝株が下がったら買おうか」と思ったくらいだった。しかし、そう考える人は多いらしく、株価はあまり下がらなかったので買わなかった。結果として買わなくて正解だった。従業員が優秀でも経営者が駄目だと会社はうまくいかない典型例だと思っている。

これまでの東芝経営陣の対応を見ていると、「東芝という会社を残す」ことが最重要と考えている感じがある。「どうやれば業績が底を打って上昇に向かえるか?」という発想ではなく明るみに出た問題をどうやって被害最小で切り抜けるか?」ということを最重要に考えている印象である。こういうやり方だと将来の展望は開けないので会社は時間とともに体力を失っていき、とんとんリストラを継続せざるを得なくなってくるだろう。

私は会社がこのような状態になった時に一番大切なのは、従業員の意欲を高めるような将来像をどうやって作るかだと思う。そのために会社をスリム化する必要があれば思い切ってやる必要があると思うが、それは会社を存続するための当座の資金を捻出するためではなく、場合によっては会社を倒産させても、きちんと立ち直るようにすることが経営者の役割だと思っている。会社が倒産すると外部から管財人が入ってきて経営者は交代させられる。現在の東芝経営陣はそれを一番恐れているように見える。

おそらく、現在の社長は一区切りしたら辞職せざるを得ないと覚悟していると思う。しかし、東芝には役員が40人いるそうだが、そのうち35人までは現在の役職にしがみつきたいと考えているだろうと想像している。特に、現在の職を離れると次の職を見つけられないような、自分に自信のない人は、現状維持を求める。だれが次の社長になるにしても、このような殆どが抵抗勢力の中で会社を改革していかなくてはならないので、剛腕が要求される。だから下降線をたどっている会社の改革は難しい。

人間誰でも自分が一番かわいいので、自分に不利になるような決定には反対するのが当然である。これをなくすことは不可能だろう。特に、自分の今の状態が地位としてピークだと思っている人は改革に対する強力な抵抗勢力になる。そもそも誰を幹部にするかという判断をする時点で、その人にとってそこがピークではなく、さらに上を目指すような人を選択するような仕組みにしておかないと、これからの厳しい企業間競争を勝ち抜いていくのは難しいのではないかと思っている。まだ伸びると思って引き揚げたけれどピーク感が見えてきた人は思い切って降格させることが重要だと思う。


トヨタが自動運転でNTTと提携

2017-03-23 08:51:27 | 経済

今朝、歩きながらNHK-AMラジオを聞いているとトップニュースに「今日は籠池理事長の証人喚問が行われます」というのを流していた。NHKは朝の時間は30分に1回くらい5分程度のニュースを流す。この中で毎回これを繰り返す。これは今日のニュースでも何でもなく、前から決まっていたことである。新しい情報は何もないのにトップニュースとして繰り返すNHKにはジャーナリズムとしてのセンスの無さを感じる。

さて、今日の話題のトヨタとNTTの提携であるが、こちらは今朝の日経新聞の1面トップ記事である。これは経営の問題か、メディアの暴走か?

日経によると、トヨタはNTTと自動運転の技術で提携するという。中身を見ると5G無線通信システムを使った自動運転制御を共同開発するというような内容なのでNTTドコモが中心だと思われるがNTT本体も関わるそうである。私はこれは筋悪の提携だと思っている。

まず、トヨタがNTTを相手として選んだという点が問題である。トヨタはグローバル企業であるのに対して、NTTはドメスティックな企業であり視野が狭い。技術開発に関しても日本勢は自動運転の開発ではかなり出遅れている。トヨタからすれば、幅広い自動運転技術の中で、自動運転技術、それも通信部分だけ日本の法制度などに影響の強いNTTと組む、程度のつもりかもしれないが、世界戦略的にはむしろ足を引っ張られるのではないかと思う。

次に5Gシステムを使うとしている点であるが、これも筋が悪いと思う。5Gシステムというのは2020年あたりに最初の導入を目指している将来の移動通信システムであるが、これが広がるのは2025年、他の車も搭載しているとか、どこででも使えるとかいう状況になるのは2030年くらいになるのは確実だろう。今の流れからすれば5Gシステムそのものが失速する可能性もあると私は考えている。一方、自動運転の導入は2020年頃、内閣府は2025年には完全自動運転の導入を目標としている。5G無線搭載を自動運転の条件としてはとても間に合わないので、自動運転実現は無線通信は現在の4G (LTE) システムとカメラ、レーダなどを組み合わせて実現するべきである。5Gの普及を待っていては日本の自動運転導入は世界から5年も10年も遅れてしまうだろう。5Gシステムが広まれば、自動運転の事故率を減らすための有効なツールとして使えることは間違いないだろう。しかし、それは自動運転の導入を促進するものではなく、自動運転のパフォーマンスを上げるための道具として使うべきである。

今回のニュースは報道発表では無いようなので、NTTサイドからのリークに日経の記者が飛びついたものだろうと想像している。日本の時価総額1位のトヨタと、2位のNTTドコモ、3位のNTTの提携なので記者が飛びつくことは仕方がないだろうと思うが自動運転技術の現状、5Gシステムの動向を考えればたいした話ではないということは分かるはずである。日経社内にはこういうことが分かる人もいるはずなので、内部でもう少し練ってほしかったという気がしている。

今回の提携はトヨタにとってもそれほど重要な位置は占めていないと想像している。しかし、日本の自動車メーカは自動運転開発で出遅れているうえに、ホンダがGoogleと連携し、日産がマイクロソフトと連携することを発表しているのに対して、トヨタはITのジャイアントとの連携は発表せずに、ベンチャーへの出資や小さい企業の買収などを行って、自社で自動運転技術を開発する姿勢を見せている。そして、今回のような日本企業との提携のニュースが入ってくると「トヨタは大丈夫か?」と思ってしまう。


中国のロボット、恐るべし

2017-02-06 09:59:11 | 経済

立春を過ぎて春になったと感じる。梅は満開だし、スイセンも咲いている。空気も春の感じである。まだ寒波が来ることもあるだろうが、それほど寒くなることは無く、これからは次々と色々な花が咲いて心浮きたつような季節に入っていくだろう。今年はスギ花粉が多いらしいが、早めにマスクをするようにしようと思っている。

日経ビジネスの最新号に日経ロボティクスからの記事として中国のサービスロボットの話が紹介されていた。レストランなどの配膳作業をするロボットで、これを作っている中国企業は1000台以上出荷、年間2万台の生産能力を持つ、という点である。日本で言うと回転寿司の機会の代わりにロボットに運ばせる、という感じだと思う。どこがすごいかというと、レストランで使えるコストでできているという点である。文章から察するに、接待で使うような高級レストランではなく、少し高めのレストラン程度のところで導入されているし、そういう市場を狙って機能はかなり絞り込んでいるようである。今は床に磁気テープを張ってその上を動かすようにしているらしいが、自動運転で注目されているLIDARの導入も検討されているという(もちろん車よりははるかに安価なものだろうが)。

中国のウェイトレスの時給などは日本よりかなり低い。それでも企業が導入しようと思うということは、かなり安い値段でできているのだろう。日本でも「変なホテル」などでロボットが様々な用途で使われているようだが、まだかなり高価だと見えて特殊用途の印象である。一方、一般的な飲食店となれば価格は安くなくてはならないが、市場規模は比較にならないほど大きい。そして市場が広がり始めると機能はあっという間に高度化するだろう。

安価で提供できるという強みが中国で爆発的な市場を生み出し、中国のロボット産業はあっという間に日本を追い越すような気がする。産業用ロボットの世界では品質が求められるのでそう簡単にはいかないと思うが、AI、IoTと組み合わせて顧客企業にがっちりと食い込んでおかないと、産業用ロボットでもいずれ逆転されるのではないかと思う。ロボット産業の広がりの可能性は高く、日本政府も注力分野に上げている。中国のロボット市場は注目していく必要がありそうである。