備忘録として

タイトルのまま

浮沼の池

2009-11-04 22:30:33 | 万葉

 昨日11月3日、大山に初冠雪と報じられていた。同じ日、三瓶山頂もうっすらと雪化粧していた。左の山が男三瓶、右が見える山が子三瓶、そのさらに右の低く見える山が孫三瓶。男三瓶の影に女三瓶があるはず。手前の池が浮布池で、火山噴出物による堰き止め湖である。

  
左:2009年11月3日  右:犬養孝の万葉の旅 昭和30年代(1960年前後)

君がため 浮沼の池の 菱採むと わが染めし袖 濡れにけるかも
                    柿本人麻呂歌集(巻7-1249)

”愛するあなたのために池の菱の実をつもうとして、自分で染めた着物の袖をぬらしてしまいましたよ”(犬養孝訳)
犬養孝は、”この歌の浮沼が浮布池だとすれば”と、浮沼が浮布池であるとは断定せず、この歌を”石見の人麻呂と関係づけて考えられなくもない。”と述べ、人麻呂が歌った歌であるとも断定しない。柿本人麻呂歌集の歌のすべてが人麻呂作ではないと犬養孝は考えているようだ。「古代幻視」”人麿・人生とその歌”で、梅原猛は、”信じられないことだが、柿本人麿の歌の数について日本の国文学界はまだ定説を持っていないのである。”とし、自身は歌集の歌の分析から、人麻呂歌集の歌は人麻呂作だとする。以下は、梅原猛の大胆な人麻呂の年齢と作品分類であり、官位まで示している。

 時代      年齢      作品       官位
--------------------ー
   ~670   ~36歳  歌集・略体歌   五位下
680~689 36~45歳 歌集・非略体歌  五位
689~701 45~57歳 作歌・宮廷歌   従四位下か
701~708 57~64歳 作歌・地方歌   流人

漢文表記が略体歌、音訓交りが非略体歌、訓だけが万葉仮名。
”可憐な野趣にみちた田舎乙女の恋情”を詠んだ浮沼の池の歌が、石見に流人として来た人の歌とは到底思えないのだけど、私の印象は間違っているだろうか。

梅原は人麻呂歌集の歌の分析をさらに進め、古事記に先行する原古事記という書があり、その作者が人麻呂であるという説を唱えている。

<出雲風土記によると>

三瓶山は出雲の国引き神話で有名な佐比売山(さひめやま)である。八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)は、出雲の国は狭い国なので、佐比売山と火神岳(大山)に綱をかけ、新羅から国を引き、できた土地が現在の島根半島であるという。

<気象庁HPからの要約>

三瓶山の中央部には直径約4.5kmのカルデラがあり、その中にはいくつかの溶岩ドームがある。約4500年前、約3600年前、それ以降で時期不詳の少なくとも3回の火山活動があったと推定されている。これらの火山活動の噴出物は主にデイサイトで、降下火山灰、火砕流、溶岩の噴出、火砕丘の形成、火山泥流の発生などが知られている。特に火砕流および火山泥流は遠方にまで到達した実績がある。


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