森口尚史氏の虚偽iPS細胞移植報道の背後にある困ったこと(NETよりコピー)
森口尚史氏の発言はほぼ虚偽である様子。しかし、虚偽なら自分が一番そのことは分かっていたはず。仮にも東大やハーバードという一流の大学で特任教授とか客員研究員を務めたのだから、結果がどうなるかは分かっていたはずだ。つまり、研究者としての身分が失われることを分かっていながら今回のウソをついたことになる。なぜ、ではこんなことをしたのか、それが第1の疑問
第2の疑問はより影響のあるものだ。それは森口尚史氏のような存在は一定の勢力によってわざわざ作られたものと考えられることだ。つまり、第1の疑問で述べたような不自然な事件を起こすために事前に数十年前から用意されていたのではないかという疑問だ。第1の疑問は既にマスコミによって大々的に報道されているからここでは述べない。第2の疑問が出てくる理由は次のようなものだ。
1
森口尚史氏の今回の騒動の第一報は読売新聞のもので、10月11日朝刊で、iPS細胞を使った世界初の臨床応用として心筋移植手術を実施したことが10日分かったと報じたものだ。しかし、読売新聞は2年前の2010年5月1日付朝刊(大阪版)で「iPS活用 初の創薬」というタイトルの記事を載せ、ヒトのiPS細胞などを使って、C型肝炎を治療する効果的で副作用も少ない薬の組み合わせを見つけ出すことに、森口氏と東京医科歯科大が成功したと伝えたという。そして、10月12日、前日の報道だけでなくこの2年前の報道も虚偽だと東京医科歯科大が発表したのだ。これは非常に奇妙だ。C型肝炎を治療する効果的で副作用も少ない薬の組み合わせを今話題のiPS細胞を使って見つけ出したということはかなりの功績だ。そのことが東京医科歯科大に伝わらないはずがない。それだけではなく、そういった薬の組み合わせが見つかれば製薬会社から実用化への共同研究が、森口氏や東京医科歯科大学へ持ちかけられたはずだ。また、2010年5月の報道以降も森口氏は東京大学医学部附属病院に非常勤ながら何らかの形でかかわっていたということで、その時に、同僚から話題にされたはずだ。そもそも、iPS細胞を使ってC型肝炎を治療する効果的で副作用も少ない薬の組み合わせを見つけたという論文に森口氏とともに名前が載った東京医科歯科大教授は、森口氏の学生時代の指導教授であり、保健衛生分野での研究者で専門は健康情報分析学だ。その教授がいくら教え子から頼まれたとしても、まったく専門外のことであるiPS細胞を使ったC型肝炎を治療する効果的で副作用も少ない薬の組み合わせ発見という論文について、なぜ、「データと考察に矛盾がないかチェック」したのだろうか。森口氏は看護師の資格を大学時代取得したのであり、その後、大学院でも主に衛生学の研究をしていた。そのことは指導教授として分かっていたはずのことだ。なぜ、C型肝炎を治療薬に関する森口氏の研究は虚偽だと否定をするのが2年間も遅れたのか。
2
森口氏の経歴はそれなりに華麗なものだ。ハーバードの研究者という肩書や東京大学附属病院の研究者、そして、東京大学先端科学技術研究センター特任教授でもあったし、博士号も、東京大学大学院から得ている。博士論文題目は「ファーマコゲノミクス利用の難治性C型慢性肝炎治療の最適化」で、主査は児玉龍彦東京大学先端科学技術研究センター教授だったいう。ファーマコゲノミクスとは薬の効果を遺伝子型に基づいて研究するものだという。博士号を取ったのは2007年であり、
1.で述べたC型肝炎治療薬の組み合わせをiPS細胞を使って発見したという報道の3年ほど前だ。どちらもC型肝炎についてものだ。しかし、C型肝炎治療薬の組み合わせをiPS細胞を使って発見したということは虚偽であるということだから、博士号を取った論文も内容がどこまで真正なものか疑問が付くだろう。そもそも、森口氏の大学院終了後の経歴は一貫性がない。ウィキペディアの「森口尚史」のページから経歴の部分を引用すると次のようになる。
1989年(平成元年)4月 - 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護学専攻入学
1993年(平成5年)3月 - 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護学専攻卒業、同年看護師の資格を取得
1995年(平成7年) - 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科総合保健看護学専攻博士前期課程修了、修士号(保健)取得。
修士論文の題目は「健康診断における異常所見の評価とその予後に関する考察~超音波エコーによる胆のうポリープの自然経過の検討」
1995年(平成7年)-1999年(平成11年) - 財団法人医療経済研究機構主任研究員・調査部長、ハーバード大学メディカルスクール・マサチューセッツ総合病院客員研究員
1997年(平成9年) - 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科非常勤講師(国際看護保険学、健康情報データベースと統計分析など担当)(2009年迄)
1999年(平成11年)8月 - 東京大学先端科学技術研究センター研究員(知的財産権大部門)(非常勤)
1999年(平成11年)11月-2000年(平成12年)1月 - マサチューセッツ総合病院胃腸科客員研究員
2000年(平成12年)10月 - 東京大学先端科学技術研究センター客員助教授(非常勤)
2002年(平成14年)4月 - 東京大学先端科学技術研究センター特任助教授(次世代的知的財産戦略研究ユニット、先端医療システム研究)(常勤)
2006年(平成18年) - 東京大学先端科学技術研究センター特任教授(システム生物医学)(非常勤)
2007年(平成19年)9月 - 東京大学大学院より、博士号(学術)取得。
博士論文題目は「ファーマコゲノミクス利用の難治性C型慢性肝炎治療の最適化」。主査は児玉龍彦東京大学先端科学技術研究センター教授。つまり、森口氏の専門はどう見ても「国際看護保険学、健康情報データベースと統計分析」のようなデータ分析なのだ。その意味で「知的財産権」の関係で研究するのは自然だ。しかし、「胃腸科客員研究員」というのは普通に見ると飛躍があるし、「システム生物医学」の非常勤の特任教授というのも結び付かないように思える。更に、薬の効果を遺伝子型に基づいて研究することなどはかなり縁遠い分野に見える。つまり、東京大学先端科学技術研究センター研究員になってから、専門分野が大きく変わったように見える。そして、「国際看護保険学、健康情報データベースと統計分析」のような分野ではなく、「知的財産権」とか「次世代的知的財産戦略研究ユニット、先端医療システム研究」、そして、「システム生物医学」というのはどれも実業界と直接的なつながりがあり、企業からの研究費助成が受けやすいテーマであるように見える。そもそも、ハーバード大学メディカルスクール・マサチューセッツ総合病院客員研究員という地位は企業などからの寄付によって確保される地位だという。また、森口氏が2000年に東京大学先端科学技術研究センター客員助教授(非常勤)になった当時、東京大学先端科学技術研究センターの教授についていたのが児玉龍彦氏だ。特任教授という制度を作ったのも児玉龍彦氏であり、森口氏は児玉氏によって丸抱えされていたような印象さえ受ける。
3
10月12日に虚偽だとされた2010年のC型肝炎治療薬に関しての「iPS活用 初の創薬」というニュースは、当時、画期的なものとして受け止められたはずだ。当然、いろいろな研究者によって再現をしようという試みもされたはずだ。読売新聞が記事にする際に、単に口頭で話を聞いて記事にしているはずはなく、実際、米肝臓病学会誌にiPS細胞を使ってC型肝炎を治療する薬の組み合わせを見つけたとする論文発表をしていた。つまり、日本国内だけではなく、世界中で追試がされたはずなのだ。なぜ、2年が経過した現在まで、そういった研究者から事実ではないはずだというクレームがついていないのか。更に、今月11日に読売新聞がiPS細胞を人への心筋移植手術を報じた時、なぜ、すぐに日本国内だけでなく国外からも疑問の声が上がったのか。
4
定評のある英科学誌Natureは10月12日付でiPS細胞の心筋移植手術などが根拠のないものだという記事を掲載している。しかも、「この記事では、山中伸弥京都大教授らの複数の論文を森口氏が盗用した疑いがある」とも書いている。熱心に調べればそういったことも短時間で分かるのかも知れないが、あまりにもタイミングが良すぎると思う。そもそも、Natureには、森口氏が米肝臓病学会誌にiPS細胞を使ってC型肝炎を治療する薬の組み合わせを見つけたとする論文発表をした後、その論文に信頼性がないという他の研究者からの意見などが行っていなかったのだろうか。
森口氏がたとえば平安時代の服装についての研究をしていて虚偽の発表をしていたというなら、それが何年間も見過ごされていてもあり得る話だと思う。しかし、彼の研究は企業が懸命に実用化を狙っているものだ。誰かが成果を上げたとすれば、数多くの研究者が追試をしようとし、森口氏自身にも共同研究者にも、そして、研究の場であった大学の教授たちにも直接間接にいろいろな問い合わせが来ていたはずだ。日本国内で読売新聞や日本経済新聞が報道し、アメリカの肝臓病学会誌に論文発表されたものが2年経って虚偽だとされることはあまりに不自然だ。つまり、森口氏の経歴は比較的早い時期から彼自身の意思とは無関係に作られていったものだと考えたほうが自然だろう。