早いもので、もう3月。東日本大震災から1年が経過しようとしている。
福島原発の民間事故調の報告書が発表された。詳細に読んだわけではないが、昨年のブログでも、時々、コメントしたように暗澹たるものである。
間もなく、原発すべてが停止し、今夏の電力不足が懸念されている。
東電が値上げの発表をして以来、テレビでPPS(特定規模電気事業者)をいろいろと取り上げている。
PPSの導入で、年間の電気料金が大幅に減少するというレポートであるが、本当にそうであろうか。
もともと、現在の問題は、電力がトータルで不足することの問題であることを忘れてはならない。
PPSの方が安いとなれば、需要は増えるだろうが、需要が供給を上回れば、経済原理で、いずれその料金は上がるだろう。
まして、原油価格の上昇が懸念される状況の中で、PPSの電力コストが上昇しないと思うのは幻想である。採算が合わなければ、当然供給できない。
日本の鉄鋼業は競争力が低下し、合併による規模の拡大で、原料の購買力を強化して生き残ろうと努力している。
小規模のPPSが、電力会社より安く原油を購入できると思っているのだろうか。
又、余剰電量を集めて、PPSの安定供給に懸念はないのだろうか。
米国他の多くの国では、停電は珍しくないが、日本では、停電は余程のことがない限り発生していない。
これだけ電気製品があふれる中で生活している我々にとって、電気なしでは生活できないことは、先の地震の際、嫌というほど思い知らされたはずだ。
電力の安定供給をコストと考えるか、安い電力を買うかは、年金基金の運用でリスクのある高い利回りを取るか、安定運用するかに似ている。AIJの年金問題でも判るように、運用成績が良いと思って投資し、貴重な財産を失うこともあるのだ。
私は、東京電力を擁護するつもりは毛頭ない。
しかし、原油価格が上がり、安定供給を堅持しようとすればコストがかかるという現実を軽視してはならない。
現在の問題は、総供給量の5%のPPSではなく、もっと本質的な議論が必要であるということを認識するべきである。