■ 『眠れないほど面白い空海の生涯』由良弥生(王様文庫)は約460頁もあるが、空海の生涯が読みやすく書かれている。この本のミソは空海の人生を決したとも言える謎の一沙門を女性と想定したこと。善道尼(ぜんどうに)と名づけて、その女性との交流を主軸に置き、空海の生涯を物語に仕立てていること。なお、空海の生涯はウキペディアに詳しいので関心のある方は参照願います。
仏教に関する難しい言葉や知っている言葉であっても意味をよく知らない言葉には例示したように分かりやすい説明があり、本文の理解を助けている。**煩悩(肉体や心の欲望、他者への怒り、執着など人間の身心を悩ませ迷わせるもの)**(122頁)**最澄が入唐求法(にっとうぐほう 唐に行き仏の教えを学ぶこと)を朝廷に願い出た(後略)**(168頁)
遣唐使船が出航後に暴風雨に遭って日本に引き返し、一年近く(たぶん)の後に再度唐を目指すことになった時、欠員が出たために遣唐使船に乗ることができたという強運の持ち主。唐に流れ着き、空海が代筆した嘆願書の格調の高い名文、見事な筆跡に役人が驚き、入国が認められる。やはりこのエピソードに僕は一番感動する。
長安の高僧・恵果の弟子およそ1,000人の中で最も優秀だった空海。恵果の元で学んだのはわずか半年!その間で恵果は空海へ新しい密教(瑜伽密教)の伝授を終え、しばらくの後、入滅。本来20年と定められていた留学期間だが、空海はたった2年間で学ぶべきことは全て学んだと、帰国する。
帰国後、直ちに入京が認められず(20年と定められた留学期間を守らなかったことや政治的な事情による)、大宰府(ちなみに本書では大宰府にも北九州の地方官庁という注釈をつけている)で足止め3年。唐にいた期間より長い。
京に帰ってからの空海と先に帰国していた最澄との、どういうのか、そう、仏教界の主導権をめぐる駆け引きが物語の大半を占める。その際、嵯峨天皇の存在が大きい。以下省略。
それにしても空海の勤勉さは凄いとしか言いようがない。幼少の頃から最晩年まですばらしく充実した人生。また高野山にも東寺にも行きたいな。
東寺 五重塔 2008年1月
高野山 根本大塔 2014年11月