『老人と海』ヘミングウェイ 高見 浩 訳(新訳 新潮文庫2020年7月1日発行、2025年2月20日18刷)
■ しばらく前のこと。朝、掃除機をかけていて、ふとヘミングウェイの『老人の海』かメルヴィルの『白鯨』を読みたいなぁ と思った。なぜそう思ったのかは分からないが・・・。
時々行く書店は海外作品をあまり置いていない。新潮文庫では3,40冊くらいだろうか。いやもう少しあるかな。その中に『老人と海』があった! やはり、この小説を読むなら今、ということなのだろう。
『老人と海』は高校生の時に読んだ、と思う。だが、記憶がはっきりしない。『白鯨』は長編だし、登場人物も少なくないから、読むのに時間がかかるだろうが、『老人と海』は中編で、登場人物も老人と少年の二人だけだから(大リーグの選手が二人の会話には登場するが)、読み終えるのにそれほど時間はかからない。昨日(15日)の午後、一気に読んだ。
『老人と少年』というタイトルでも良いかもしれないな、と読んでいて思った(「え、まさか。それは無いよ」という声が聞こえてきそうだが・・・)。
帯に「名作新訳コレクション」とあるが、こなれた訳が実に好い。老人と少年の会話が自然で活き活きとしていて、そのシーンが映像的に浮かぶ。
少年は老人のことが好きだし、尊敬もしている。老人も少年が好きだ。二人の関係がなかなか好い。老人はカジキとの死闘の最中に、「あの子がいてくれりゃ」と何回も思う。
例によって、付箋を貼りながら読んだ。黒丸を付けた付箋は次の箇所に貼った。**「だが、人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない」老人は言った。「叩きつぶされることはあっても、負けやせん」**(109頁)
それから次の箇所。**自分から諦めちまうなど愚かなこった、と老人は思った。それは罪というもんだ。(後略)**(111頁)
老人は巨大なカジキとの三日間にも及ぶ死闘の末に勝利する。で、港に帰る途中で、今度はカジキ目当てに繰り返し近づいてくるサメ達とも闘う。老人の冷静な判断と勇気ある闘いに引き込まれた。感動した。カジキに語りかける、そのことばも好い。
ぼくはこんなじいさんにはとてもなれない。
ちなみに引用箇所の青空文庫の訳は次の通り。
**「だが人間は、負けるように造られてはいない」彼は言った。「打ち砕かれることはあっても、負けることはないんだ」**
**希望を持たないのは愚かなことだ。彼は思った。罪でさえある。**