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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「草の花」

2021-03-20 | g 読書日記

 

 『草の花』福永武彦(新潮文庫1956年、1981年45刷) 


第一の手紙
第二の手紙


結核に侵された肺の摘出手術を自ら強く希望し、手術中に死亡した汐見茂思が残した2冊のノート。そこには二つの愛の記録が綴られていた。

初読は1981年、40年近く前のことだった。なんとなく記憶に残っていたのは、「第二の手紙」に綴られている、汐見の藤木千枝子との恋と「春」の千枝子の手紙。小説には読むのにふさわしい年齢があると思う。あの頃の私は、孤独を志向する汐見の恋愛物語に共鳴できた(*1)。

汐見に召集令状が届いた。汐見は夜行列車で郷里に帰る予定の日の晩に開催される演奏会の切符を千枝子に送っていた。だが、千枝子は演奏会の会場に来なかった・・・。**彼女に切符などを送った子供っぽい僕の芝居げを憐れんだ。もし会いたいのならば、堂々と彼女の家を訪ねればよかったのだ。(後略)**(232頁)

なぜ彼女は来なかったのか、その真相が「春」の章で明かされる。汐見に2冊のノートを託されていた私は汐見の訃を彼の友人たちに伝えた。既に結婚していた千枝子にも手紙を書いて知らせていた。ノートを読む意志があるならば、送ることも。だが返事はなかなか来なかった。ようやく届いた千枝子からの長い手紙。

**なお汐見さんのお書きになりましたものは、どうぞあなたさまのお手許にとどめておいて下さいませ。わたくしがそれを読みましたところで、恐らくは返らぬ後悔を感じるばかりでございましょうから。**(254頁)


*1 敢えて内容は書かないが、私には「第一の手紙」の章は不要。

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松本市笹賀の火の見櫓

2021-03-20 | g 火の見櫓観察記

(再)松本市笹賀 3脚66型 撮影日2021.03.20

 毎年桜花爛漫の時に撮っている火の見櫓。初めて見たのは2012年6月、火の見櫓巡りを始めて2年後のことだった。




美しい屋根の条件はフォルムがアサガオに似ていること。屋根の反りのカーブが実に好い。



この写真だと分かりにくいが、梯子を見張り台の床面から突出させて、手すりの上まで伸ばして、柱に固定している。



地上から踊り場までは外付け梯子を設置してある。梯子に手すりを付けてあるのは親切。見張り台の梯子の取り付け方にも昇り降りしやすいようにという配慮が見られる。



美脚の条件は次の2点

脚の下端までトラス構造でつくられていること
脚の上部相互をアーチ形部材で繋いでいること

この脚部は美脚の条件を満たしている。


 

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「新型コロナの科学」

2021-03-20 | g 読書日記

360

 週2回、火曜日と木曜日か金曜日の朝7時半過ぎから朝カフェ読書、松本市渚のスタバで小一時間「ホットコーヒーのショートをマグカップで」飲みながら本を読んで過ごしている。

朝カフェ読書は今や非日常なひと時ではなく、日常的なひと時となった。昨日(19日)は『新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ』黒木登志夫(中公新書2020年)を読んだ。

**新型コロナ解析の集大成。(中略)厖大な情報がわかりやすくまとめられている**と帯にあるが、まさにその通りで、本書で著者の黒木氏は新型コロナに関するテーマを網羅的に取り上げ、海外の情報も相当取り込んで、それぞれについて分かりやすく解説している。

「はじめに」で**「新型コロナをコントロールできない国は、経済のダメージも大きい」**と指摘しているが、これは単なる印象に基づく記述ではない。2020年前半期のGDPの前年度比と人口100万人あたり死亡者数の相関を示すグラフから客観的なデータとしてこのことが読み取れる(294頁)。他にもいくつものグラフが示され、論述を裏付けている。

黒木氏は本書で厚生労働省がとって来たPCR検査の対応について手厳しく批判している。いつも引用ばかりで気が引けるが・・・、

**新型コロナウイルスによる感染を証明するためには、PCR検査によってウイルスゲノムを検出するほかなく、したがって、PCR検査なくしてコロナ対策はあり得ない。**(174、175頁)

**PCR検査が100%でないことを強調し、検査を広げた場合、偽陽性者が増え、医療が崩壊するという内容であった。PCR検査を広げると医療崩壊になるという論理は、本末転倒である。感染者を見つけることが、新型コロナ対策の基本である。**(180頁)

**感染しても無症状の若者が街を歩き、無症状者からの感染が半数を占めているのが明らかになった今、無症状者への検査こそが、感染予防にとって重要な意味を持っている。**(222頁)

印象に残った一文。**新型コロナウイルスは、われわれと共生の道を選んだのだ。**(293頁)

おすすめしたい1冊。


 

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