■ 「少年老い易く学成り難し」 歳を取ってこのことばの通りだな、と思う。
さて、156回目の月間ブックレビュー。
10月に読んだのは『オリンピックと万博 巨大イベントのデザイン史』と『双体道祖神』の2冊。大学生の半数以上が月に1冊も本を読まないというご時世、2冊でも可としよう。
『オリンピックと万博 巨大イベントのデザイン史』暮沢剛巳/ちくま新書
**二〇二〇年の東京オリンピックを前にして繰り返される不手際は、もはや二一世紀の現在、かつてと同じモデルに依拠していてはオリンピックや万博のような国家事業を構想することなどできないことを物語ってはいないだろうか**(同書カバーの文書)
第4章の「デザイン・ポリシーによる統率 勝見 勝」という章題に本書で展開される論考のポイントが示されている。**オリンピックのデザインはすべて日本的なものを加味した国際性のあるものとすることと、余計な装飾は排除して必要にして十分なデザインを行う原則が定められた。**(105頁)
前回、1964年の東京オリンピックではこの原則によってシンボルマークが決定され、公式ポスターや入場券、会場内の標識、ピクトグラムなどがデザインされたという。代々木体育館(丹下健三)や駒沢体育館(芦原義信)などの競技施設にもこの原則に則ってデザインされたことが窺える。
本書で前回の東京オリンピックや大阪万博では多くの有能な人材が奮闘していたことを知った。比して、2020年の東京オリンピックはどうだろう。
「意志無きところに道無し 理念なきところにデザイン無し」と記しておく。
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『日本全土・性愛の石神 双体道祖神』伊藤堅吉/緑社出版部
30余年を費やして全国の双像を訪ね歩いたという著者の労作。
造立年、施主、碑形、碑量(碑高・碑幅)碑容、添え彫り(刻銘・くり型)、基壇、祭祀場、像の容貌、服装、髪形、持物など双体道祖神を観察する際の観点を挙げ、それぞれについて解説している章は参考になる。
これからは像の容貌に加えて造立年や碑形、碑量、くり型に注目して道祖神を観て行きたい。
11月はどんな本を読もうかな。