昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(142)第17回読書ミーティング(2)仮面病棟

2016-03-21 04:12:24 | 三鷹通信
 講師がピックアップした今回のベストセラー、もう一つは
 知念実希人「仮面病棟」
 
 新進気鋭の作家による医療ミステリーである
 実業の日本社により、18刷り、15万部の実績を積み上げる。

 ピエロの仮面をかぶった男が療養型病院に籠城し巻き起こす、密室的サスペンスミステリーである。
 
「・・・あんたが医者か?」
 仮面の大きく縁取られた唇の中心部がかすかに動き、低くこもった声が響く。そこと目の部分だけ穴があけられているようだ。
「あ、ああ・・・」混乱したまま秀悟はうなずいた。
「なら、こいつの治療をしろ」
 ピエロは自分の足下を指さす。マスクに注いでいた視線を落としていった秀悟は息を呑んだ。ピエロのすぐそばに若い女が倒れていた。海老のように丸めた体を震わせた女。その顔が苦痛で歪んでいるのが遠目にも見て取れる。
 
 医師としての本能が体を動かした。 

 
 先輩医師の代わりに当直バイトを務める外科医、速水秀悟は事件に巻き込まれる。
 女を治療し、脱出を試みるうちに、病院に隠された秘密を知る。

 手指殺菌用の洗面台を横目に通過して扉の前まで来た秀悟は、フットスイッチに足を差し入れた。鉄製の自動扉がゆっくりと開いていく。それと同時に、手術室内の灯りが灯った。
「えっ?」秀悟はその場に立ち尽くす。
 ほとんど使われていない、古びた手術室を予想していた。しかし、扉をくぐった先には予想とはまったく異なった空間が広がっていた。
 
 ・・・古びた療養型病院に、なんでこんなに設備の整った手術室が・・・。


 ピエロ、医師、看護師、病院長、患者、閉ざされた病院内で繰り広げられる究極の心理戦。
 そして想定外、怒涛のどんでん返し!
 
 彼女は一瞬足を止めた後、すぐに再び歩き出した。ゆっくりとした足取りで。まるで秀悟が追ってくることを待っているかのように。
 彼女を追おうとした。しかし、踏み出そうと持ち上げた足を秀悟はゆっくりとその場におろす。
 小さな背中が人の波に消えていくのを、秀悟は立ち尽くしつつ静かに見送った。
 冷たい夜風が体から、そして心から温度を奪っていく。
 風に乗った薔薇の香りが、鼻先をかすめていった


 今回講師がピックアップしたベストセラー作品「君の膵臓をたべたい」、「仮面病棟」を読んでみて、男にとって女こそ永遠のテーマであることを改めて確認した。