竹取翁と万葉集のお勉強

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万葉集 集歌96から集歌100

2020年01月23日 | 新訓 万葉集
久米禅師、娉石川郎女時謌五首
標訓 久米(くめの)禅師(ぜんじ)の、石川(いしかはの)郎女(いらつめ)を娉(よば)ひし時の歌五首
集歌九六 
原文 水薦苅 信濃乃真弓 吾引者 宇真人作備而 不欲常将言可聞 (禅師)
訓読 御薦(みこも)刈り信濃(しなの)の真弓(まゆみ)吾が引かば貴人(うまひと)さびに否(いな)と言はむかも
私訳 あの木梨の軽太子が御薦(軽大郎女)を刈られたように、信濃の真弓を引くように私が貴女の手を取り、体を引き寄せても、お嬢様に相応しい態度で「だめよ」といわれますか。
注意 表題の「娉石川郎女時」の「娉」は訪問を意味する「聘」の丁寧語で、三位以上の高官の子女を示す「郎女」に対応するものです。漢字「娉」に「呼ぶ逢う」や「娶る」の意味合いはありません。

集歌九七 
原文 三薦苅 信濃乃真弓 不引為而 強作留行事乎 知跡言莫君二 (郎女)
訓読 御薦(みこも)刈り信濃(しなの)の真弓(まゆみ)引かずせに強(し)ひさる行事(わさ)を知ると言はなくに
私訳 あの木梨の軽太子は御薦(軽大郎女)を刈られたが、貴方は強弓の信濃の真弓を引きはしないように、無理やりに私を引き寄せて何かを為されてもいませんのに、貴方が無理やりに私になされたいことを、私は貴方がしたいことを知っているとは云へないでしょう。

集歌九八 
原文 梓弓 引者随意 依目友 後心乎 知勝奴鴨 (郎女)
訓読 梓(あずさ)弓(ゆみ)引かばまにまに依(よ)らめども後(のち)し心を知りかてぬかも
私訳 梓巫女が梓弓を引くによって神依せしたとしても、貴方が私を抱いた後の貴方の心根を私は確かめるができないでしょうよ。

集歌九九 
原文 梓弓 都良絃取波氣 引人者 後心乎 知人曽引 (禅師)
訓読 梓(あずさ)弓(ゆみ)弦(つら)緒(を)取りはけ引く人は後(のち)し心を知る人ぞ引く
私訳 梓弓に弦を付け弾き鳴らして神を引き寄せる梓巫女は、貴女を抱いた後の私の真心を知る巫女だから神の梓弓を引いて神託(私の真心)を告げるのです。

集歌一〇〇 
原文 東人之 荷向篋乃 荷之緒尓毛 妹情尓 乗尓家留香問 (禅師)
訓読 東人(あずまひと)し荷前(のさき)し篋(はこ)の荷し緒にも妹し心に乗りにけるかも
私訳 東人が都へと運んできた荷物の入った箱を縛る荷紐の緒にも名前を示す名札を付けるように、貴女への想いに私は名乗りを上げるでしょう。
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