竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
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万葉集 集歌116から集歌120

2020年01月29日 | 新訓 万葉集
但馬皇女在高市皇子宮時、竊接穂積皇子、事既形而御作一首
標訓 但馬皇女の高市皇子(たけちのみこの)宮(みかど)の在(あり)し時に、竊かに穂積皇子に接(あひ)ひて、事既に形(あら)はれしに御(かた)りて作(つく)らしし一首
集歌一一六 
原文 人事乎 繁美許知痛美 己世尓 未渡 朝川渡
訓読 人(ひと)事(こと)を繁み事痛(こちた)み己(おの)が世にいまだ渡らぬ朝(あさ)川(かは)渡る
私訳 この世の中は人がするべき雑用が沢山あり非常に煩わしく思う、私の生涯で未だした事がなかった、朝に、十王経に示す煩悩地獄の川を渡りましょう。

舎人皇子御謌一首
標訓 舎人皇子の御(かた)りし歌一首
集歌一一七 
原文 大夫哉 片戀将為跡 嘆友 鬼乃益卜雄 尚戀二家里
訓読 大夫(ますらを)や片恋せむと嘆けども鬼(しこ)の大夫(ますらを)なほ恋ひにけり
私訳 「人の上に立つ立派な男が心を半ば奪われる恋をするとは」と嘆いていると、その人の振る舞いを嘆いたこの頑強で立派な男である私が貴女に恋をしてしまった。

舎人娘子奉和謌一首
標訓 舎人(とねりの)娘子(をとめ)の和(こた)へ奉(たてまつ)れる歌一首
集歌一一八 
原文 歎管 大夫之 戀礼許曽 吾髪結乃 漬而奴礼計礼
訓読 歎(なげ)きつつ大夫(ますらを)し恋ふれこそ吾が髪結(かみゆひ)の漬(ひ)ぢにぬれけれ
私訳 恋を煩う人を何たる軟弱と嘆く一方、立派な男子である貴方が私を恋して下さるので、その貴方がする恋慕のため息で私の髪を束ねた結い紐も濡れて解けてしまった。

弓削皇子思紀皇女御謌四首
標訓 弓削皇子の紀皇女を思(しの)へ御(かた)りし謌四首
集歌一一九 
原文 芳野河 逝瀬之早見 須臾毛 不通事無 有巨勢流香問
訓読 芳野川逝(ゆ)く瀬し早み須臾(しましく)も淀むことなくありこせぬかも
私訳 吉野川を流れ行く瀬の流れが速いように、ほんのわずかのあいだも淀むことがない、そのように二人の仲は淀むことなく恋して居られないでしょうか。

集歌一二〇 
原文 吾妹兒尓 戀乍不有者 秋芽之 咲而散去流 花尓有猿尾
訓読 吾妹子に恋ひつつあらずは秋萩し咲きに散りぬる花にあらましを
私訳 私の愛しい貴女にこのように恋焦がれていられないのなら、秋萩の花が咲い誇ってから散って行く、その失せて行く花のようにあった方が良い。
コメント
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