竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌91から集歌95

2020年01月22日 | 新訓 万葉集
近江大津宮御宇天皇代 天命開別天皇 謚曰天智天皇
標訓 近江大津宮に御宇天皇の代(みよ)
天命開別天皇 謚(おくりな)して曰はく天智天皇

天皇賜鏡王女御謌一首
標訓 天皇の鏡(かがみの)王女(おほきみ)に賜はる御(かた)りしし謌一首
集歌九一 
原文 妹之家毛 継而見麻思乎 山跡有 大嶋嶺尓 家母有猿尾
訓読 妹し家(へ)も継(つ)ぎに見ましを大和なる大島(おほしま)嶺(みね)に家(へ)もあらましを
私訳 愛しい貴女の家をいつも見ていたい(=いつも妻問いをしたい)から、大和の国にある大島の嶺に、その貴女の家のすぐそばに私の家があれば良いのですが。
左注 一云 妹之當継而毛見武尓
注訓 一(ある)は云はく、妹しあたり継ぎにも見むに
左注 一云 家居麻之乎
注訓 一(ある)は云はく、家(いへ)居(を)らましを
注意 「大嶋嶺」は奈良県生駒郡平群町の信貴山西方の高安山

鏡王女奉和御謌一首
標訓 鏡王女の奉和(こた)へたる御謌一首
集歌九二 
原文 秋山之 樹下隠 逝水乃 吾許曽益目 御念従者
訓読 秋山し樹(こ)し下(した)隠(かく)り逝(ゆ)く水の吾(われ)こそ益(ま)さめ御(おほ)念(も)ひよりは
私訳 秋山の木の下の枯葉に隠れ流れ行く水のように、密やかに思う心は、私の方が勝っています。貴方が私を慕いなされているより。

内大臣藤原卿娉鏡王女時、鏡王女贈内大臣謌一首
標訓 内大臣(うちのおほまえつきみ)藤原(ふじわらの)卿(まえつきみ)の鏡王女を娉(よば)ひし時に、鏡王女の内大臣に贈れる歌一首
集歌九三 
原文 玉匣 覆乎安美 開而行者 君名者雖有 吾名之惜裳
訓読 玉(たま)匣(くしげ)覆ふを安(やす)み開けに行(い)ば君し名はあれど吾(わ)が名し惜しも
私訳 美しい玉のような櫛を寝るときに納める函を覆うように私の心を硬くしていましたが、覆いを取るように貴方に気を許してこの身を開き、その朝が明けきってしまってから貴方が帰って行くと、貴方の評判は良いかもしれませんが、私は貴方とのものとの評判が立つのが嫌です。

内大臣藤原卿報贈鏡王女謌一首
標訓 内大臣藤原卿の鏡王女に報(こた)へ贈れる歌一首
集歌九四 
原文 玉匣 将見圓山乃 狭名葛 佐不寐者遂尓 有勝麻之目
訓読 玉(たま)匣(くしげ)見(み)む円山(まどやま)の狭名(さな)葛(かづら)さ寝(ね)ずはつひに有りかつましめ
私訳 美しい玉のような櫛を寝るときに納める函を開けて見るように貴女の体を開いて抱く、その丸い形の山の狭名葛の名のような丸いお尻の間の翳り。そんな貴女と共寝をしないでいることはあり得ないでしょう。
左注 或本歌曰、玉匣 三室戸山乃
注訓 或る本の歌に曰はく、玉(たま)匣(くしげ)三室戸(みむろと)山の
注意 「圓山」は丸い山体から三輪山を、また「三室戸山」は神奈備山の三室として三輪山を指します。

内大臣藤原卿娶釆女安見望時作謌一首
標訓 内大臣藤原卿の娶(ま)きし釆女(うねめ)安見(やすみ)を望(なが)めし時に作る歌一首
集歌九五 
原文 吾者毛也 安見兒得有 皆人乃 得難尓為云 安見兒衣多利
訓読 吾はもや安見児(やすみこ)得たり皆人(みなひと)の得(え)難(か)てに為(す)とふ安見児得たり
私訳 今、私は、本当は安見の名で呼ばれる貴女を抱いて自分のものにすることが出来ました。誰もが恋人にすることが出来ないと云われた貴女は私の愛を受け入れて、本名を教えてくれるような、閨を共にする恋人にすることができました。
注意 標題の原文「娶釆女安見望時」は、標準解釈では「娶釆女安見児時」と校訂します。
コメント
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