旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

リーダーの資質 … チリ落盤事故ルイス・ウルスアさんに学ぶ

2010-10-15 14:19:19 | 時局雑感

 

 前回のこの記事でチリ落盤事故救出活動に触れたとき、私は未だ8人の救出を知ったばかりであった。しかしその時点のニュースが「救出順序も決められており、32番目は“希望”のお父さん、最後の33番目はリーダーのルイス・ウルスアさん…」と報じたのを見て、この事故の全員救出を確信した。そしてその記事を「リーダーは必ず帰還するだろう。何故ってその前を希望が上っていくのだから」と結んだ。

 それから約12時間後、日本時間の14日午前9時55分、“希望”のお父さんアリエル・ティコナ青年に続いてリーダーが最後に引き上げられた。奇跡の救出劇は、33人全員の救出をもって終わったのである。
 多くの報道が、ルイス・ウルスアというリーダーなしでは、この奇跡が起きたかどうかわからない、と報じている。70日間という異常事態の中で、しかも内17日間は地上との音信不通という想像を絶する過酷な世界で、33人もの人をどのようにまとめていったのだろうか?
 周囲の調査の結果、地下700メートルに閉じ込められている実態を冷静に認識し、そこにある食料の量と、33人という人数と、救出に要する日数などを冷徹に判断して、「48時間ごとに食べる量」や「各人の役割分担」を定め指示していく…、どんな経験と資質を持っていればそのような判断が出来て、また、確信を持って全員を引っ張っていけるのだろうか?
 豊富な食料があり、それを公平に分けよう、ということは少々の指導力で出来るだろう。しかし、「48時間ごとに、スプーン2杯のツナ、ミルク1杯、ビスケット1枚」という量を、「必ず救援が来る」という確信の代償として納得させることは“普通の人間”ではできないのではないか。単に現場監督であったという使命感、任務の全うなどいう生易しいものではないだろう。
 ただ想像を絶するのみである。

 ルイス・ウルスアさんが地上に帰還して、大統領に語った次の言葉を記して、永く記憶にとどめておくことにする。

 「我々は、世界が待ち望んだことを成し遂げた。70日間の闘いは無駄ではなかった。強さと精神の力を失わなかった。家族のために闘い抜きたかった」
                                (14日付毎日新聞夕刊より)


   


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