旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

台湾紀行(5)--食文化と規制について

2008-05-15 16:53:03 | 

 

 前回、「台湾には酒文化が未成熟で、その最大原因は『酒の専売』にあるのではないか」と書いた。つまり民営化し、誰でも作れるようにしなければ多様化、個性化の追求は行われないのではないかと思ったわけである。
 ではすべて民営化すればそれだけでよいか、といえばそうはいかない。特に営利や収入増目的だけにさらされると、文化として育てるべき観点どころか食品の本質問題まで失われ、大変なことになる。最近の食品問題(吉兆、赤福、比内鳥、ミートホーフなどなど)はもとより、日本酒の歴史にも大きな汚点が残されている。
 戦時中に米不足を補うために作り出された「アル添三増酒(醸造アルコールや水飴、味の素などを添加し、三倍にも増量された酒)」は、大量生産の可能な工業製品のようなもので、灘、伏見の大手酒造会社で量産され売りまくられた。国は酒が売れるほど税金が取れるので利害は一致し、米あまりの時代が来てもアル添三増酒を清酒と認め続けた。
 その結果、この美味しくない、しかも個性のない酒(アル添三増酒は何社が作ってもほぼ同じような味)が日本酒離れを起こし、清酒シェアーは低落の一途をたどりついにピーク時の約40%まで落ち込んだ。
 戦中戦後の一時期はまだしも、「日本清酒は、米と米麹と水だけで造るもの」という本来の日本酒を守り続けることこそ、国の務めであっただろう。ドイツは「麦芽とホップ以外のものが入ったものはビールと認めない」という『ドイツビール純粋令』を5百年間守り続けている。昨年秋、ミュンヘンの「オクトーバーフェスト」をはじめフランクフルト周辺でドイツビールを飲みまくったが、その豊かな味と個性に、美味しさとともにドイツビールの誇りを感じた。

 規制すべきは断固規制し、その中でより高きを求めて競い合う自由と創意が発揮される・・・、文化が育つ上で欠かせない両面であろう。
 いつの日か台湾に、今の豊富な料理メニューに負けないような多種多様な酒が生まれる日が来ることを期待してやまない。
                            


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同感 (胡近所)
2008-05-16 05:56:59
ぜひお力を貸してあげてください。
あのチェーン店を持つ飲食店の台湾地区責任者であるA氏に美味しい日本酒を台湾で売ったら、いいでしょうか?
返信する

コメントを投稿