オペラ普及団体ミャゴラトーリの企画制作になる「ライブハウスオペラ『ドン・パスクアーレ』」が、今月上旬、四日間(5月5,6,9,10日)にわたって吉祥寺の「スターパインズカフェ」で公演された。
ライブハウスでの本格的オペラ公演は、わが国では初めてではないかと思われるが、わずか100人の観客を前に、客席通路まで舞台とした公演は、新たな迫力を生み好評であった。
このオペラは、一般的には「老人をたぶらかして財産をかすめ取る、老人いじめ物語」とされてきたが、「騙されたとはいえ、年寄りも恋もできるし、新しい生き方を求めることもできるのだ!」という新たな解釈(いや、これこそ最晩年のドニゼッティの真の思いではなかったか?)に基づく演出は、スマホなどの現代的な小道具などを含め観衆に寄り添った。そしてそれは、「スマホを捨てて街に出よう!」という最後の大合唱に繋がった。
私の友人の一人は、「世のなか暗いニュースばかりで、私自身も夫を亡くし暗い生活を送っていたが、全てが消えて、パッと明るくなった感じ!」と評してくれた。また義妹がお連れしてくれたスイスの音楽家(オペラの指揮もやっている)は、「ミャゴラトーリの企画に感心した。何よりも出演歌手たちの質の高い力量に驚いた」と絶賛してくれた。
ライブハウスオペラ、というジャンルがあるのかどうか私は知らない。しかし、何か新しい動きが、吉祥寺で産声を上げたのではないか? 車中も歩行中もスマホを手放せない世界、金銭や物欲に追われるせせこましい世界を捨てて、薫風かおる5月の街に出ようではないか!
出演者とともに
絶賛してくれたスイスの音楽家(右)と義妹