日本酒の銘柄っていくつあるのだろう? 私の意識では、数千銘柄から1万銘柄の間だろうと何となく思ってきた。最近、酒量も減り、酒の会も参加を極力抑えているので、新しい銘柄にすっかり疎くなっている。
日本酒を造る蔵の数は、自社の銘柄を造っている蔵の数で1200前後と聞いている。沖縄、鹿児島県の各1蔵を加え、全都道府県に散らばっているのが、かなりの数だ。正に地酒という言葉がふさわしい。この約1200蔵が、平均5銘柄から10銘柄造っているだろうという想像が、私の数千から1万銘柄という根拠だ。何かで2万銘柄あるという記事を読んだ記憶があるが、1蔵平均20銘柄近くとなるので、それはないのではないかと思っている。
ところが最近、たまに呑み屋を訪れると知らない銘柄ばかり並んでいる。日本酒ブーム(?)に乗って各蔵が新銘柄を出しているので、2万銘柄になっているのだろうか? ただその時、飲まれなくなった古い銘柄をどう数えているのだろうかと、つまらないことが気になったりしている。
毎日通る八幡山駅への通りに、『エビス八幡山』という店があり、「九州うまかもん店」という乾板が掲げられているので、九州人としては気になっていた。入ってみると焼酎はもちろん、日本酒も数多く並んでいる。ところが、焼酎はもちろん九州産であるが、九州の日本酒はほとんどない。わが大分県だけでも、西の関、八鹿、一の井手、龍梅、智慧美人など枚挙にいとまがないが、全国的にはまだまだ知られていないのだろう。結局私が「九州うまかもん店」で飲んだ酒は、秋田と栃木の酒であった。
メニューを見ると「角右衛門」という銘柄が目につくので聞くと、「秋田の酒だ」という。定番という純米吟醸を注文すると、一升瓶とともに出てきた。よく見ると、湯沢の木村酒造さんだ。この蔵の代表銘柄「福小町」は随分飲んで知っているが、この銘柄は初めてだ。
料理の方は「鯛刺しの梅酢風味」や「するめいかの明太子和え」、最後の食事の「明太子めし」(飯の上に明太子のぶっち切りがたっぷり乗っていた)に至るまで九州の味であったが、そのあと注文した純米酒も含め秋田の「角右衛門」がよく合った。
メニューを辿ると「姿」という銘柄が目についた。これも見たことないので注文。持ってきた一升瓶を見ると栃木県上都賀郡の飯沼銘醸さんだ。ここの代表銘柄は「杉並木」で、これも栃木県酒の会などでよく飲んだ。なかなかの銘酒で、この「姿」純米吟醸もおいしかった。きりっとした飲み口で、博多の辛子明太子にもよくあった。
なお辿ると「うしろ姿」という銘柄が浮かぶ。聞けば、「姿」の“責め”の部分をブレンドしたものだという。“責め”とは酒搾りの最終場面の酒で独特なものであり、ぜひとも飲みたいと思ったが満腹状態でこれ以上飲めず、「うしろ髪」を惹かれる思いで店を後にした。
いやあ、銘柄は2万を超えているのかもしれない。