京王プラザホテル多摩が主宰する「第3回日本酒探訪」は、佐久の酒13蔵が出品、広い宴会場「白鳳」の間に100名強の参加者で、着席、料理つきの落ち着いた会であった。
お酒もゆっくり飲めたし、各蔵のブースを回るのも、そう混雑することなく、蔵の方がたとゆっくり話ができて楽しかった。われわれの主宰する「純米酒フェスティバル」は、年を追うごとに参加者が増え、前回(750人参加)あたりは50蔵の出展とはいえ混雑でゆっくり出来ない雰囲気が生じてきた。13蔵出展の「日本酒探訪」が7500円で、わが「純米酒フェスティバル」が50点出展で、かつ4号瓶お土産付き6300円という割安感から、混雑もやむをえないか?
久しぶりに飲んだ『寒竹』のキレのよい飲み口をはじめ、佐久には中々いい酒が多い。美山錦を中心に、八ケ岳山系、千曲川の伏流水という軟水で育て上げた酒は、味もあり柔らかくて好きだ。
このような利き酒会的要素をもつ会には、従来から大吟醸を中心にした出品が多かったが、昨夜の出品酒は純米吟醸、純米酒を中心にした蔵がほとんどであった。普通酒や本醸造も出されていたが、どこの蔵も中心には純米吟醸を置いており、わたしとしても嬉しかった。最後に残るのは純米酒だ、と言う空気が造り手の側にも浸透してきたのではないか?
普通酒で面白かったのは、『井筒長』という酒を造る黒澤酒造の「柱焼酎仕込み」という酒だ。しかもそれを“生もと造り”で造っている。この蔵は約30%を“生もと”で作っているらしく、昨夜の出品酒も、純米吟醸、特別純米、純米酒、普通酒とすべて生もとつくりであった。しかもその普通酒は、自社の米と酒粕で造った焼酎を添加した、いわゆる「柱焼酎仕込み」で、世に言う醸造用アルコールを添加した酒とわけが違う、と胸を張っていた。面白い試みだと思った。
最後にくじ引きがあって、木内醸造㈱の『大吟醸十年古酒』が当たった。これは嬉しかった。ブースを回った際に飲んで、豊かなまろみとふくよかな香りの古酒の印象が強かったが、まさかその酒が自分に当たるとは思ってもいなかった。
何だかすっかり“割安感”を抱いた会となった。