前回のブログ(12月9日)で、三井ホームの社名に触れて、他の住宅メーカー(大和ハウス、積水ハウスなど)と違って三井「ホーム」と名乗るところがいい、つまりハウスというハードを売るのでなくホームというソフトを売るという姿勢がいい、と書いた。
実はこの考え方は、北欧スウェーデンにあっては、既に100年近く前からあったようだ。竹崎孜著『貧困にあえぐ国ニッポンと貧困を克服した国スウェーデン』に、その様子が詳細に書かれている。
それによれば、スウェーデンでは住宅を財産とか不動産とかとらえるのでなく、一生のライフスタイルに従って住み替えていく”生活の場”、まさに住居(すまい)ととらえているようだ。
18歳になると若者は独立するので単身者住宅が要る。しかしそれは当然のことながらそれほど大きなものでなくよい。結婚して二人暮しになればそれなりの大きさを必要とし、子供が生まれればいく部屋をも持つ住宅が要る。しかし子供が18歳になれば独立していくので、小さい家で足りてくる。高齢者になれば、こじんまりした居住性のよい家が必要になる。
スウェーデン人は、そのライフスタイルに従って適した家に住み替えていく。国はそれに合わせて住宅手当金を支給して支援していく。たとえば、「子供を育てる家庭へは家賃に充当する住宅手当金が給付され、育児に適した住環境を確保させ、ゆったりと子育てに専念できるよう考えられ」しかし、「給付を受ける資格は、子供が17歳以下となっており、(中略)子供の成長を見届けた後は大型住宅をいつまでも占拠せず、新しい育児家庭に引き継ぐ」(同書147頁)という具合だ。
高齢者にも住宅手当が用意されており、ふさわしい住宅に移り住んでいくので、スウェーデンには老人ホームは無いという。
こうなると、住宅はまさに個人の資産とか不動産ではなく社会の共有物に等しい。従って住宅市場は、あくまで民間市場経済に基本をおくが、それだけに委ねられることなく、自治体の協同組合住宅や公営企業住宅という3者が混在して、それぞれ規制しあっているようだ。
つまり資本の論理だけに委ねず、公的な規制を絡ませているのだ。住宅協同組合の発生が1920年代と言うから、その歴史は100年に近い。