(前回からの続き)
日銀は、「異次元緩和」の継続により、QE後のアメリカを支えるため、米FRBに成り代わり、低金利のマネーを市場に供給することで、米資産バブルの再膨張と金利上昇の抑制を図ろうとしている―――これこそ日銀の金融政策の隠れた目的だと思っています。まさに日銀版QE4といったところですね。
アメリカにとってこれは本当にありがたいことでしょう。というのは、それによってアメリカは低金利のもとで引き続き資産バブルパーティーをエンジョイできるうえ、FRBのバランスシートの野放図な拡大(=ドル価値の下落・悪いインフレの発生)を、とりあえず(?)避けることができるからです。
そんなふうに考えてみると、本稿前段でご紹介した黒田日銀総裁の「異次元緩和に対する国際的理解が十分に得られていると感じた」というコメントにも合点がいくというもの。端的にいうとこれは、アメリカの支持を得られた、ということなのでしょう。わが国にとって多くの場合、「国際的理解」などというときの「国際的」は「アメリカの」という語句で言い換えることができますから・・・。
さらにいえば、異次元緩和、つまり円安誘導に対する疑問や批判の声が、わが国でこれまでそれほど上がってこなかったことも理解できます。なぜって、アメリカが自国にマネーを引き寄せようとしているとき、その逆を意味する円安=ドル高に対して否定的な言動をとることはアメリカの国益に反してしまうためです。だからこそ主要メディアは、これだけ円安の悪影響が実体経済や人々の日常生活に広がっているにもかかわらず、それを指摘することをためらってきたわけで・・・。もっとも前述のとおり、日本国民の我慢もそろそろ限界のようですが・・・。
―――さて、本稿で書きたかったのはここから先です。ここまで、日銀には「異次元緩和」をQE4としてアメリカに活用してもらおうという意図がある、と述べてきました。じつは・・・それには深いわけがあるに違いない、と勝手に推察しています。そうでなければ、日本屈指のエコノミスト集団であるべき日銀幹部が異次元緩和でわたしたちをこれほど苦しめるはずがないと信じているからです。では、日本経済に対して通貨安の痛みを強いてまでアメリカに「バブル輸出」する日銀の真意とは・・・?
以前からアメリカにとってQEマネーは「麻薬」だと言ってきました。いったん投与されれば資産価格は上がるし金利は下がって気持ちよくなります。でもそれにともなう価値の上昇分は根拠なきバブルなので、やがてすぐに価格は下がって資産デフレに・・・これは絶対に避けなければならないから、危険は承知のうえで麻薬をさらに投入して・・・といった具合です。もはやアメリカはこの麻薬=QEマネー無しではやっていけないところに来ていると考えています。
で、麻薬中毒に苦しむ友人を救おうとするときはどうするか?ふつう、麻薬をやめさせるし、つらい禁断症状を克服できるよう、可能な限り彼をサポートしようとするでしょう。つまりいくら彼が「よこせ~」と訴えても、絶対に薬は渡さないわけです。そこで情け心を見せたら、彼は永遠に麻薬を断てなくなり、破滅の坂を転がり落ちていくしかないからです。それが親友として示すべき態度というものです。
これに対して日銀がしていることは、親友としてあるまじきこと・・・禁断症状に苦しむ友人=アメリカに、「もう薬(QE)はやめろ!」と忠告するのではなく「これで楽になるよ~」といって新たな麻薬を差し出すようなこと。それによって米経済がますます麻薬の深みにはまっていくのを知っていながら・・・。
つまり日銀は、アメリカが低利マネーの乱用で自ずと再起不能のヤク中患者になるよう仕向けているのではないか・・・。