(前回からの続き)
総額19兆ドルにも及ぶ巨大な米連邦政府債務の減免を債権者に強いること、あるいはその返済のためにドル紙幣を刷りまくることのいずれも、ドル・米国債の暴落と長期金利の暴騰を招く策―――前回までにご紹介した米債務に関するドナルド・トランプ氏(アメリカの次期大統領になるかもしれない共和党筆頭候補の不動産王)が唱えるやり方は、結局は同じ結末―――アメリカの破局をもたらしかねない超危険なものといえそうです。
とはいっても・・・前回書いたようにアメリカには、現実的には紙幣を印刷して借金を返すという手しか残されていません。まあ財政赤字を少しでも減らすために大増税をするという策も考えられますが、これはいまのアメリカを実質的に支配する一握りの富裕層―――資産・所得の多いトップ1%層への課税を極端に強化することであり、あまりに非現実的。このあたり、民主党の次期大統領候補であり同党指名争いでトップのヒラリー・クリントン氏を急追しているバーニー・サンダース氏がその導入を強く訴えてはいますが、実現することはまずないでしょう・・・(?)
ということで、トランプ氏が大統領になるかならないかにかかわらずアメリカは、このドルの無限発行策で借金を埋め続けるしかなさそう。でもそんなことをしたら、これまた前述のとおり、米国債価格急落&長期金利急騰でアメリカは逝ってしまう・・・。では、どうしたらよいか・・・って、こちらの記事を含めて何度も書いていることになりますが、結局は「FRB(米連邦準備制度理事会:アメリカの中央銀行)による米国債の買い支え」すなわち量的緩和策(Quantitative Easing:QE)以外にあり得ません。なぜならFRBこそは「最後の貸し手」として米国債を無制限に引き受け、そしてドルを唯一、無制限に発行することができる組織だからです。
QE―――アメリカはこれによって少なくとも長期金利の上昇は食い止めることができます。しかし、ドルがどんどん市中に供給されることから、そのモノやサービスに対する価値は下がり続ける、つまりそれらのドル建ての価格は上がり続けるというインフレ(通貨価値の下落)は不可避となります。足元でドル安トレンドとなっているなかで原油価格がじりじしと上がってきているのは、そのあたりの反映でしょう。
当然ながらこのドルのインフレはアメリカの債権国が持つドル建て資産の価値下落を意味します。上述のとおりこれは必然の流れ(?)、となればこれらの投資家はこの先、ドルも米国債もできるだけ早く手放さないと大やけどを負うリスクがありそう・・・