(前回からの続き)
先述のように「外」と「内」の評価がまったく異なる中国の通貨・人民元は、ドルや円などの他国の通貨に対する正確な市場価値が分からないうえ、国内デフォルトへの大甘な対応など、当局の通貨管理が恣意的で不透明なことなどから、とても国際通貨としての資質や信頼性を備えているとは思えません。肝心の通貨がコレでは・・・中国が世界金融の覇権を握るのは難しそう。それどころか人民元には国際通貨基金の特別引き出し権(Special Drawing Right:SDR)の構成通貨になる資格すらないといえるでしょう。やはりアメリカが主張するように、中国は第一に、早急に人民元をドル等と同じく誰もが自由に売買できる通貨にするべきだと・・・。
ところで、アメリカが中国に対して執拗に人民元取引の自由化を求めるねらいは大きく分けて2つあると考えています。1つ目は、それによって人民元のマネー力をそぎ、引き続きドルの基軸通貨体制の安泰を図ろうというもの。おそらくアメリカも人民元がドル以上にインフレ通貨であることを見抜いており、自由化されれば「内」の悪い要素が「外」の良さを消すかたちで人民元は弱くなる―――そのマーケット価格と信認はドルに対して下がるから、中国の金融面での台頭を抑え込むことができると読んでいるのでしょう。
そして2つ目は、自由化を通じ、中国内の人々にドル買いを促して自国をファイナンスさせようということです。上記のとおり、中国人民はこれまでの「金融鎖国」のもと、資産運用面では事実上、人民元建てのものしか選択できませんでした。自由化が今後進めば、それらよりも安全(?)で実質の利回りが良いドル資産がチョイスできるようになり、多くの人々は喜んで元を捨て、ドルのもとへ走るでしょう。これはアメリカにとってはチャイナマネー取り込みによるドル・米国債の買い支えを意味するわけで・・・。
世界最大、そして万年(!?)経常赤字国のアメリカは外国のおカネを常時、大量に借りないと国が保てません。したがってこれらをいかに好条件(借入時は相手国通貨安・ドル高、返済時は同通貨高・ドル安)で確保するかが最優先の国家戦略になっているはず・・・。
で、これまでそのターゲットになってきたのは、いうまでもなく日本・・・の、たとえば郵便貯金。かつてアメリカは日本に郵政民営化をさせることで、日本国債に張り付いていた郵貯マネーをドル投資に誘導しようとしました。しかし経常黒字国・日本「円」とアメリカ「ドル」の実質利回り差「円>ドル」の壁は分厚く、円→ドルへのマネーシフトは起こらず、アメリカの目論見どおりにはなっていない感じです。
昨年こちらの記事に書いた米銀シティグループも同じこと。彼らも「円>ドル」のハードルを越えられず、ドル預金等のノルマ獲得に苦戦し、あせったあげく不適切行為を連発して当局と顧客の信頼を失い、すごすごとわが国(個人向け業務)から去っていきました・・・。
といったように、ここまでのところジャパンマネーのドル誘導には手こずったアメリカですが、相手が中国ならば勝算は十分でしょう。なぜなら、かの国の通貨・人民元とドルの間には「ドル>人民元」の関係が成り立つ、つまり上記のように、壁さえ崩せば―――国内外の取引を自由化しさえすれば―――チャイナマネーは自然とドルに流入すると予想されるからです(ちなみに・・・アベノミクス≒円安誘導がもっと進めば、今後はひょっとして円→ドルが起こってしまうかも・・・[あ、悪夢!?])
いつまでもお元気でいてくださいね。
ためになります。