(前回からの続き)
「フォワードガイダンス」という言葉があります。「○○年の○頃までQEを続けますよ(それ以降はQEを少~しずつ縮小しますからね)~」といったように、米FRBが金融政策の将来の実施年限をあらかじめ公表し、金融マーケットに共通認識を持ってもらおうとすること、といった感じでしょうか。「市場との対話」などという言い方もこれに近いかと思います。
では何でFRBがそんなことをするのか、といえば、金利を―――長期金利を安定的に推移させたいからにほかなりません。なぜならアメリカの「バブル」経済を生かすも殺すも長期金利次第だから。そしてもっと本質的な理由は・・・中央銀行に長期金利のコントロールなんてできないから・・・たとえFRBであっても、です。だからこその「フォワードガイダンス」―――市場の皆さん、あわてふためいて債券を投げ売りしたりしないでね(そんなことになったら長期金利が制御不能になっちゃいますからね)!―――というわけなのでしょう・・・。
ということで、足元で3%を微妙に超えつつある米長期金利の今後の動きに大注目!です。アメリカは、連邦政府も、(デトロイト市破たんに象徴される)自治体政府も、一般市民も、そしてQEマネーを借りて相場を張るヘッジファンドまでも、みんな借金まみれ・・・。しかもそんな皆さんの多くが金利が低い水準で推移したこの2~3年の間にさらに借金を増やしています。その借金コストである金利がいよいよ本格的に上がる―――アメリカ「借金バブル」に試練到来です・・・。
とりわけ長期金利の上昇―――住宅ローン金利の上昇が米経済に与える負のインパクトは甚大でしょう。これによって米家計の借金返済負担が増し、米GDPの7割を占める個人消費が大いに抑制されるともに、ローンの延滞や焦げ付きが増えることでバブルを支える肝心の米金融システムが動揺するリスクが高まりそうだから・・・。
さあアメリカは金利上昇にこらえられるのか、そしてFRBは、QE縮小後の米金利(長期金利)を上手にコントロールできるのか・・・個人的にはとても不透明なものを感じます。「FRBは今後7回のFOMCで資産購入額を100億ドル減らして年内にQEを終了させるだろう」といった楽観的な見通しもあるようですが、そううまくいくのだろうか。チャイナマネーはFRBのかわりに本当に米国債を買い支えるのだろうか。これだけ国中が借金を抱えているのだから、その前に「禁断症状」(金利上昇)に耐えられなくなる人々が多数出てくるのではなかろうか。やはり彼らを救助せざるをえないのではないだろうか、結局は「麻薬=QEマネー」の再処方で・・・などと予想してしまうわけです。
「uncertainty(不確実性)」―――欧米の金融関係者が近ごろよく口にする言葉です。今年のアメリカ経済は順調に回復すると見込まれるものの、若干の不確実性が残る、といったようなフレーズで使われます。ここでいう「不確実性」とは上述のこと、つまり長期金利がコントロール不能となるリスクのことを指していると理解しています。で、QE縮小に着手したアメリカ経済にとって今年はまさにそのとおり、「不確実性」が確実に高まっていく年となるだろう―――そう思っています。
(「QE縮小:米経済は金利上昇に耐えられるか?」おわり)
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