昨年7月、ロシアのプーチン大統領は、アメリカの対外債務がすでにそのGDPを上回るほどに増加し、同国のみならず世界経済にとっても深刻な問題(a serious problem)になっていると指摘していました。これは金融市場では至極当然のことではありますが、何かと憚れる面があることから(?)日本などではあまり大きなニュースになっていなかったし、この発言に対するアメリカ側の反応もほとんど伝えられてはいなかったように思えますが・・・
で、ひょっとしたらアメリカの次期大統領になるかもしれない共和党のドナルド・トランプ氏が先日、この微妙なテーマに触れています。報道によると同氏は今月5日、経済専門局CNBCのインタビューで、19兆ドル以上ものアメリカの国家債務に関し、経済の低迷が長引いた場合は、自身のビジネススキルを用いて債権者に対してその債務減免の受け入れを迫るとの考えを示しました。米国人の誰もがヤバイと感じていても口に出せないこと―――自国の負債がもはや持続不可能なこと―――にあえて言及するあたり、トランプ氏らしいところです。もっともトランプ陣営の財務担当幹部は「連邦政府は債務を返済しなければならない」と述べ、この発言の火消しに努めていますが・・・
プーチン、トランプ両氏のアメリカの巨大債務に対するこうした認識は100%、的を得ていると考えています。これこそ世界そしてアメリカがもっとも恐れるべき経済危機の根源であり、日本とりわけ「アベノミクス」開始以降にドルを買いまくった(アメリカにおカネを貸しまくった)安倍政権・黒田日銀に近い投資家(政府系金融機関や年金基金など)にとっても最高度で警戒すべきリスク要因といえるでしょう。
ところで現在、アメリカの借金額はどのくらいで誰からおカネを借りているのでしょう。FRB(米連邦準備制度理事会:米中央銀行)および米財務省のデータによると、2015年12月時点で米連邦政府の債務総額は18.15兆ドル。年々増え続ける同債務ですが、とりわけ2008年(リーマンショックが起こった年)以降はその増加ペースが速まっています。同年12月は10.01兆ドルだったので、わずか7年間で81%あまりも借金が膨らんだことになります。
その米債務18.15兆ドルのうち6.17兆ドルが対外債務になっています。で、最大の借金相手国は中国で借入額は1.25兆ドル、2番目が日本で同1.12兆ドル。両者の合計額は2.37兆ドルと、米対外債務の38%あまりが日中両国に対するものになっています。ちなみに両国の合計額を上回る2.46兆ドルものおカネを米政府に貸しているのは(米財務省証券:米国債を持っているのは)、FRBだったりします。まあこれは当然といえば当然で、上記リーマンショック後の資産デフレを阻止する目的でFRBは、2008~2014年10月まで実施された量的緩和策(QE)で米国債を大量に買ってドルを市中にばらまきましたからね・・・