先日の中国・習近平国家主席の英国訪問は、英中関係の良好さを世界に見せつける外交イベントとなりました。両国、とりわけ中国にとっては、伝統的なアメリカの同盟国である英国と連携強化を図れたことは、アメリカ(そして日本)をけん制する意味でも効果的なものだったといえそうです。
で、これに関連して注目されたのが経済面での関係促進、とくに英国内における新規の原子力発電事業への中国のエントリーでしょう。本件では、これを認める(しかない?)英国の事情等について考えるところを綴ってみたいと思います。
内外の報道によれば今後、中国は英国内3か所(も!)の新規原発計画に参加します。いずれも同国の原子力企業CGNとフランスのエネルギー企業EDFの合弁事業となります。このうち英国南西部のヒンクリーポイントと東部サイズウェルの2か所はEDFが、南東部のブラッドウェルはCGNが、それぞれ過半を出資することになっています。
費用総額180億ポンドと見積もられるヒンクリーポイント(EDF66.5%、CGN33.5%の出資割合)では、2025年の同原発完成後35年間(!)、英国政府はその電力を1MW/hあたり92.5ポンドで買い取るそうです(買い取り価格はインフレ率に連動させることになっている)。この金額は現時点の同国の電力卸売価格のおよそ2倍だそうで、これだけを見ると英国(の電気ユーザー)にとっては相当に高い買い物のように思えますが・・・(逆に、実勢価格がこの保証金額を上回ってもユーザーはその超過分を支払わなくてもよいとのこと)。
―――といったあたりが、このほど決定された中国による英国における原発事業参入の概要です。ここで個人的に驚かされたのは以下の2点。
まずは、英国が自国における外国企業による電気事業の展開を容認していること。ご存知のとおり電気事業はきわめて公益性の高い事業。これを一部どころか100%外資にやらせるとは・・・英国にとっていろいろな意味でリスクが大き過ぎると想像されるわけですが、それでいいのでしょうか。自分が英国人なら間違いなく、外国人にライフラインを牛耳られることの気味悪さとか危うさを感じるところですが・・・
そしてつぎは、そんな外資が手掛けるのが、よりによって原発プロジェクトであるということです。石炭・石油火力発電などではなく原発、しかも中国製の原発・・・って、よけいなお世話かもしれないけれど、この先、数十年間の長きにわたって安全運転・安定供給は保たれるのか、そして万が一のときの危機管理とか賠償等はどうなるのか、さらに上記ブラッドウェルなんてロンドンからたった80kmしか離れていない(東京にたとえると、小田原の手前あたりに原発を作るようなもの)って、コワ過ぎる・・・などなどの懸念が頭をよぎり、ホント英国、正気かよ・・・と心配になりますが・・・
以上から透けて見えるのは、電気事業のような国家基盤を支える重要産業までも外資に頼らざるを得ないほどの英国の凋落ぶりです。