IMF(国際通貨基金)は先月30日の理事会で、懸案となっていた中国の通貨・人民元のSDR(Special Drawing Right:特別引き出し権)構成通貨としての採用を決定しました。これにより、新しいSDR通貨バスケット比率は以下のようになりました。
ドル41.73%、ユーロ30.93%、人民元10.92%、円8.33%、ポンド8.09%
(それまでは、ドル41.9%、ユーロ37.4%、ポンド11.3%、円9.4%)
人民元は10.92%となり、ドル、ユーロに次いで3番目の地位を与えられました。最大の配分割合を占めるドルは変更前後でほとんど変化はありませんが、ユーロそしてポンドがこれまでの構成比(2010年に決定されたもの)から大きく下がりました(ユーロ17.3%、ポンド28.4%減)。日本円も9.4%から8.33%へと11.4%下がり、人民元の後塵を拝するかたちになりました。
こちらの記事等で綴っているように、個人的には人民元はいまだにドルや円などの国際通貨が満たすべき要件(通貨発行国内外で自由な為替取引ができること、など)を十分に満たしているとはいえないと考えています。したがって今回のIMFの決定には違和感を禁じ得ませんが、まあ決まったものはしかたがない、といったところです。中国当局にはこれで手を抜くことなく、いっそうの金融自由化や過剰な公的介入の排除等を進めてほしいものです。
で、この舞台裏では何があったのか・・・。まずは中国への依存を強める欧州、とくに英国が人民元のSDR通貨採用を強く支持したのでしょう。そのあたりは人民元のために10%分のポジションを差し出したかのようなユーロとポンドの大幅な配分比低下に反映されているような気がします。
そして、おそらくアメリカも同調したものと思います。その理由を推察するにアメリカは、人民元の国際通貨入りを認めることで、人民元相場の安定を図ろうとしているのではないか。だからといってそれは、資本流出に悩まされている中国を救いたいというフレンドリーな意図からではなく、こうすることで中国にアメリカをファイナンスできる力を取り戻してほしいという願いから・・・だと考えています。
先日こちらの記事に書いたとおり、今後の資金繰りがきわめて不透明なアメリカとしては、世界一の米国債ホルダーである中国にやっぱり頼りたい―――以前にも増して米国債を買ってもらいたい(おカネを貸してほしい)―――わけです。ところが中国はいま、人民元の下げ圧力に対抗するべく(?)、逆にドル・米国債を売り越す始末。この(中国はもちろんアメリカにとっても)悪い流れを逆転させるための一助として人民元に「箔付け」を・・・ということでアメリカは人民元のSDR通貨採用を許可することにしたのではないでしょうか。
ようするに、米中両国はお互いを支え合っている―――以前から指摘していることですが、本件からもそんな実態が窺えるように思えます。